鳴り物入りで就航したボーイング787型機 (c)朝日新聞社 @@写禁
鳴り物入りで就航したボーイング787型機 (c)朝日新聞社 @@写禁

 京セラや第二電電(KDD)の創業者として知られる稲盛和夫氏(81)が、会社更生法を適用された日本航空(JAL)の再建を引き受けて丸3年が過ぎた。大方の下馬評を覆して業績をV字回復させ、今期限りで取締役を退任する。会長に就任した当初、社員らの意識改革のために稲盛氏は「コンパ」を開催したと言い、当時のことを次のように振り返る。

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(当初は)経営判断に必要な数字を要求しても、決算データが出てくるのは数カ月後という遅さでした。これじゃあ、きちんと現状を把握できないと思い、早く出すように毎日のように言っていました。幹部たちは皆、エリートで自負心が強く、最初は私の言うことを素直に聞かず、半信半疑の態度でした。役員会で「あんたは評論家か」「俺は君らの親父か爺さんぐらいの年なんだから、素直に言うことを聞け」と怒鳴ったことも度々ありましたね(笑い)。そこで意識改革のために、京セラでやっていた「コンパ」というコミュニケーションツールを持ち込みました。

 50人ぐらい入れる会議室に長机とパイプいすを並べ、午後6時ぐらいに缶ビールとおつまみを用意します。役員会などで堅苦しい議論をした後、ここで缶ビールを開け、テーブルごとに和気あいあいとやる。最初は「倒産企業なのに不謹慎だ」という批判も社内から出ましたが、再建へのいろんな課題を侃々諤々(かんかんがくがく)とぶつけ合った効果は大きかった。今では嫌な顔をしている人はいませんね。費用も一人千円ずつ徴収してやっています。

 このコンパを通じてだんだんとうち解けていきました。幹部たちも経営に興味を持ち、おもしろくなったんだと思います。そうすると、もともと航空知識が豊富で有能な社員が多いので回復は早い。東日本大震災が起こったときも、社員が自分たちで判断して、東北の空港へ臨時便をどんどん飛ばしましたし、今年のボーイング787のトラブルのときも自主的に動いてくれました。

週刊朝日 2013年3月22日号