女性の場合、気をつけなければいけない病気が多い一方、検診はもちろん、かかりつけ医もいないという人が多いのが現実だ。水泳選手の萩原智子さんは子宮内膜症を患った過去をもつ。女性特有の疾患を経験・克服した彼女に、その経験を聞いた。

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 シドニー五輪に出場した萩原智子さんは、2004年に現役を引退。その後、結婚を経て5年ぶりに競技に復帰した。翌年には自由形で日本記録を更新するも、11年の世界選手権代表選考会直前に子宮内腹症の一つであるチョコレート嚢胞(のうほう)と診断される。夫と話し合った結果、別の婦人科でセカンドオピニオンを受けることにした。そこで医師から告げられたのが「治療をしたとしても、不妊症になる」という言葉だったという。

「すごくショックでした。水泳なんてしている場合じゃない、すぐに引退しようって思いました」

 しかし、萩原さんの夫は別の病院にかかってみようと提案。そして三つ目となる婦人科で、信頼できる医師に出会う。

「その先生は、『治療すれば、不妊症になる確率を低くすることができる』と言ってくれて。先生が手術の前に『病変はとりきるし、妊娠を望むなら最後まで責任をもって診ていきます』と。不安はなくなりました」

 今は、定期検診を受けながら母になる日を夢見て、これまで以上にからだを整えることに気を使っている。

「病気で悩んでいる女性には、『この先生なら身を任せられる』と思える医師に出会えるまで、あきらめないでほしいなと思います。大変ですが、本当に信頼できる医師と巡り合えれば、前向きに病気と向き合うことができると思います」

※週刊朝日 2012年9月14日号