俳優・津川雅彦氏が「娘を誘拐した犯人は恩人」と振り返る 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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俳優・津川雅彦氏が「娘を誘拐した犯人は恩人」と振り返る

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 両親ともに俳優で、母方の祖父は"日本映画の父"といわれた映画監督。芸能一家で育った津川雅彦さんは役者になる気はなかったものの、軽い気持ちで出た映画で一躍人気者に。その後女優の朝丘雪路さんと結婚し、翌年には長女・真由子さんが誕生。そして、生後5カ月の時に真由子さんが誘拐されるという大事件に見舞われた。

*  *  *
 この事件を契機に、僕は何事にも真剣に向き合うようになり、人生は大きく変化することになった。誘拐犯はある意味、恩人と言ってもいいかもしれない。

 娘の真由子が、もし役者の子でなかったら、こんな危険な日には遭わなかったはずだ。だから、これは役者だった僕に責任がある。娘には償いをしなくてはならない。「よし、では彼女にとって世界一の父親になってやろう」。そう決めた。

 世界一になるための最高のライバルは、おっぱいをあげる母親だ。赤ちゃんを産んだ絶対的な存在、スーパーウーマンの母親を抜いて、父親の僕のほうをより好きにさせるのは至難の業だ。

 そして、ひらめいたのが遊んでやること。一緒に遊び、娘と笑顔を共有することで、僕は母親を超える存在になれるかもしれない。一緒に遊べば娘の情緒も発達して、彼女の心を豊かにさせることもできる。いざ遊んでみると、娘の要求は想像を絶することばかり。これに合格点で応えるのはやはり至難の業。それこそスーパーマンにならざるを得ない。当時は「パパ」と呼ばれるたび、娘が差し出してくるハードルの高さにビクビクしたものだ。父親修業の末、やっと一人前になれたと思えたのは10年後のことだった。

※週刊朝日 2012年8月17・24日号


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