当然だが、高度な治療をすれば治療費も増える。トータルで数十万円かかったというケースも珍しくない。しかし、前出の小林獣医師によれば、より高度な治療を希望する家族が増えてきているという。ペットを家族の一員だと考える人が増えたという心理的な変化が大きい。ペット保険が普及したことも背景にある。

 国内でペット保険を扱う会社は、損害保険会社のアニコム、アクサダイレクトなど9社ある。このうち最大手アニコムの契約件数は10月末で37万4170件。3年前から約13万件増えた。

「治療にかかった費用の5割、7割、9割を保険から支払うプランがあります。前の犬をがんで亡くしたので、次は早めに入るという方もいますね」(アニコム広報部)

 同社の保険は、犬もも10歳11カ月まで加入できる。犬は犬種や年齢で保険料が変わる。例えば、8歳のゴールデン・レトリーバーを5割負担のプランに入れると、毎月の保険料は5320円で、通院・入院時は1日1万円を上限に治療費の5割、手術をすると同じく1回10万円まで(年2回まで)支払われる。

 神奈川県在住の女性は今年10月、チワワの愛音(あいね)(メス、5歳)の胃にできた腫瘍を麻布大附属動物病院で摘出した。良性だったが野球ボールほどの大きさで、手術には1時間半かかった。

 手術費用は約20万円だったが、支払いは半分の10万円で済んだ。

「赤ちゃんの時から5割を負担してくれる保険に入っていたので助かりました」

 だが、保険も万能ではない。

 都内に住むイラストレーターの女性(46)は、3匹飼っているシーズーのうちメスのサラ(13歳)が副腎がんになり、全額自費で治療を受けている。

「若いころはあまり病気にならないので、8歳になったら保険に入れようと思っていました。でも、加入時に良性の脂肪の塊が見つかって入れなかったんです」

 サラのがんがわかったのは11歳8カ月の時だった。手術するのが難しい場所だったため、切除せずホルモン薬で症状を抑えることにした。この薬代が、毎月4万8千円かかるという。女性は決意を込めて言う。

「この子を助けてあげたい。そのために、以前は熱中していたマリンスポーツをやめました」

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