◆できる範囲で悔いぬ治療を◆

 さらにお金がかかる治療法を選ぶ人もいる。

 都内に住む自営業の女性は、都内の病院で月に1度、小腸がんになった愛(メス、17歳)に活性化リンパ球療法を受けさせている。

 この治療法は、ペット自身の血液を取り出し、培養してリンパ球を増やして体内に戻す。免疫力が高まる効果が期待できるというが、費用は1回8万円かかる。免疫療法は保険の対象外なので、全額自費だ。

「7年前にがんで亡くなった父は同じ療法を受け、亡くなる寸前まで笑顔でいられた。猫のがんを手術で摘出した後そのことを思い出し、お金がかかっても受けさせてあげたいと思ったんです」

 この猫は治療を受け始めてから2年経つが、体重も増え、「子猫のように生き生きしている」という。

 一方で積極的な治療を望まず、静かに最期を看取りたいという人もいる。

 東京都大田区の主婦(75)は、乳腺がんが疑われるチンチラのモカ(メス、17歳)に特別な治療は受けさせておらず、自宅で看取るつもりだという。

「近所の獣医さんで塗り薬はもらってますが、体にメスは入れさせたくない。膿んだ胸に、息子が使っていたオムツのサラシの残りを巻いています」

 高額の治療をせず、自然に任せているからといって、この主婦もわが子を愛していないわけではない。ペットのがん対策に、決まった答えはないのだろう。

 前出の小林獣医師はこうアドバイスする。

「治療法が進歩して、家族の選択肢は広がりました。それに伴い、どこまで治療を受けさせるべきかと迷

う方が増えていますが、積極的な治療をしないことは、あきらめているということではありません。痛みの治療や栄養治療など家族ができる範囲のことを、最後まで続けることも大切です」

 いざという時に後悔しないように、わが子が元気なうちから、どこまでの治療ができるか考えておこう。 (本誌・藤村かおり)


週刊朝日