◆「最終処理」で注目集める六ケ所村◆


 青森市の市街地から車で約2時間。丘陵地を通る細い国道から急に視界が開けたその先に、約380万平方メートルもの広大な工場が姿を現す。青森県六ケ所村にある核燃料サイクル施設「六ケ所再処理工場」だ。
 ここへ全国の原子力発電所から出た使用済み核燃料が運ばれ、未使用のウランとプルトニウムを精製し、再び核燃料にする。
 損壊した福島第一原発には、溶けた可能性が高い炉心の燃料やプールに貯蔵されている大量の使用済み燃料が存在する。これらの"処理"を期待されているのがこの施設なのだ。  はたして"処理"は可能なのか。事業主体である日本原燃の担当者に聞いた。
「現状では難しいと思います。燃料棒は溶かす前に裁断しますが、燃料棒が変形していると裁断する機械に入りません。運ぶためのキャスクという専用容器にも入らない。それに容量の問題があります。貯蔵用プールの容量は3千トンですが、すでに2827トンの燃料が入っていて、受け入れる余裕はほとんどありません」
 しかも、工場は今は試験運転中。本格稼働するのは来年10月からの予定だ。
「稼働すれば、最大で年間800トンの再処理が可能になります。順調に処理が進めば貯蔵プールが空いて、福島のお役に立てるかもしれません」(同)
 ただ再処理の過程では、さまざまな放射性廃棄物が出てくる。工場にある「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」で廃棄物をガラス状の物質にして、容器に入れて保管する。これを最終的には300メートル以上の地下に処分しなければならないが、住民の反対にあって、できていない。
 さらに、工場そのものにも問題があると、社民党青森県連の山田清彦・常任幹事は指摘する。
「まず、高レベルガラス固化は機材の不具合等で何度も失敗している。配管の破損や油漏れ、作業員の被曝も発覚しています。また、試験運転をしていたときは稼働していないときと比べて、大気や海中の放射能汚染が明らかに高い数値になっていました。そして何より、日本中の"核のゴミ"が六ケ所村に一極集中し、再処理をすることでさらにやっかいな廃棄物を出し続けることが問題なのです」
 今回の福島原発事故を契機に、問題を抱えた核燃料サイクルがこのまま推進されていいはずがない。

週刊朝日