◆巨額の処理費用、復興できるのか◆


 だからこそ、米国もフランスも技術協力を惜しまないのではないか。日本での経験が、彼らの今後の活動に生かせるからだ。原子力政策を担当した元外務官僚はこう見る。
「フランスはこの事故を、原発の新設が一段落し、これから増える廃炉が十分にペイするビジネスになるかどうかの絶好のテストケースと思っているはずです」
 チェルノブイリ原発事故の調査をしてきた元慶応大学助教授の藤田祐幸さんも、こう話す。
「米仏との協力体制の構築は、これだけの事故を起こしても原子力産業をなんとか温存したいという国境を超えた原発推進勢力の意思なのです」
 すでに菅直人政権は復興に向けて、自民党との「救国的な連立内閣」を模索し始めた。これを自民党も無視しているわけではないようだ。谷垣禎一総裁の側近がこう明かす。
「谷垣さんは、新たに設ける防災復興府の人事権をもらえるなら、復興相を自民党から出してもいいという腹づもりです」
 復興に絡む莫大な「利権」をねらって、政治サイドも動き始めているのだ。
 被災者を思うとやるせない状況だが、それでも福島第一原発を一刻も早く処理することは、安全な水、安全な生活、安全な国土を取り戻すためには急務だ。
 「まず冷温停止にすること。それができない限り、そのあとの絵姿は描けない」
 小出助教の言葉は重い。  (本誌・三嶋伸一、堀井正明、大貫聡子、作田裕史)
次のページ