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オリンピックおじさん ホステスにナンバーワン指南した過去
オリンピックおじさん ホステスにナンバーワン指南した過去
 羽織袴に金色のシルクハットをかぶり、日の丸の旗を振りまわす。「オリンピックおじさん」こと山田直稔さん(86)は、今夏のロンドン五輪に向けて充実の日々を送っているという。  そんな山田さんが、初めて観戦した東京五輪を振り返ってくれた。 *  *  *  東京五輪の頃は38歳の駆け出し社長。開幕前から東京は盛り上がってた。夜はキャバレー通いの日々。客として出席率で争って、当時は珍しかったカラーテレビをもらったなあ。ホステスに「ナンバーワン」になるコツも伝授したよ。毎日お客さんに電話して、 「今夜遊びに来てね。お願い。なるべく遅くにね」  って言いなさい、と。含みを持って聞こえるからね。そしたら本当にナンバーワンに! ワッハッハ。  東京五輪は開会式から閉会式まで観戦したけど、ただ観ただけ。日本は16個も金メダルを取ったんだねえ。金メダリストの中で今でも付き合いがあるのは、重量挙げの三宅義信さんと、女子バレーの主将だった中村(旧姓河西)昌枝さんですね。「東洋の魔女」には目を奪われたよ。彼女とは、よく東京ドームの巨人戦でお会いしますね。 ※週刊朝日 2012年5月4・11日号 週刊朝日
週刊朝日 2012/09/26 00:00
卓球の石川佳純選手 小学生から学んだ「自分らしく戦う姿」で五輪へ
卓球の石川佳純選手 小学生から学んだ「自分らしく戦う姿」で五輪へ
 ロンドンオリンピックでの活躍が期待される女子卓球の石川佳純選手(以下、石川)が、小林麻耶(以下、小林)との対談で、オリンピックへの意気込みを明かした。 *  *  * 小林:試合のどんなところが好きなんですか 石川:やっぱり相手との駆け引きとか。それから、相手が待っていないところに打って、「あ、決まった」というとき。 小林:駆け引きが楽しい小学生って、ちょっと珍しい(笑)。 石川:どんな小学生やん、って感じですよね。でも相手との距離がすごく近いから、顔がよく見えて、緊張しているのか、弱気なのかとか、わかるんです。そういうのを見ながら試合をするんです。 小林:そして11歳のときに、全日本選手権女子シングルスで3回戦進出! 相手は高校生や大学生なのに。 石川:相手はお姉ちゃんたちなので、全然、緊張しないんです。むしろ相手の人たちのほうが、「小学生、イヤだなあ」という感じで。でも、今はその気持ちがすごくわかります。私も、年下の子たちとは試合をしたくないから。 小林:やはりそういうものですか。 石川:試合に入ったら、年上も年下も関係ないので、そう思ってしまうこと自体いけないと思うんですけど......。昔はよかったです。相手は「勝たなきゃいけない」けど、こっちは「勝ったら儲けもの」みたいな感じですから。 小林:「怖いものなし」な態度だとイヤな感じ? 石川:年上からしたら、それがいちばんイヤです。 小林:小学生のそういう姿から学ぶことはありますか。 石川:ありますね。小学生の試合を見ると、自分の昔の姿を思い出して、もっと思い切って、勝ち負けにこだわりすぎずに自分らしく戦うことが、勝ちに繋がるんじゃないかなとも思います。それでもう一度、初心に戻れる。私もああいう気持ちでオリンピックで戦えば、相手に「イヤだ」と思わせて、プレッシャーをかけられるんじゃないかと。 ※週刊朝日 2011年5月4・11日合併号 週刊朝日
週刊朝日 2012/09/26 00:00
女子卓球・石川佳純選手 「3回オリンピック出場したら結婚したい」
女子卓球・石川佳純選手 「3回オリンピック出場したら結婚したい」
(※イメージ)  「愛ちゃん2世」とも呼ばれ、2005年から注目されてきた女子卓球の石川佳純選手(以下、石川)。7月に控えるロンドンオリンピックに意気込む彼女だが、小林麻耶(以下、小林)との対談の中で、将来について聞くと19歳の女の子らしい素顔を現した。 *  *  * 小林:将来はどう考えていますか。 石川:できれば、あと2回オリンピックに出たいです。23歳で2回目、27歳で3回目。 小林:3回のオリンピック後は? 石川:結婚したいです。 小林:おっ! 恋は? 石川:オリンピックが終わってからにしたいです(笑)。 小林:好きな人はいないんですか。 石川:「好き」というか、ファンとして好きというのはあります。 小林:芸能人では? 石川:(即答で)松潤が好き! 小林:カッコいいですよね。 石川:顔、ちっちゃくて。 小林:お会いしたことはありますか。 石川:ないです。 小林:じゃあオリンピック後ですね。 マネジャー:オリンピック次第。 石川:ですよね。頑張ろう! ※週刊朝日  2011年5月4・11日合併号
週刊朝日 2012/09/26 00:00
脳梗塞の新薬 食事制限不要のため納豆も我慢する必要なし
脳梗塞の新薬 食事制限不要のため納豆も我慢する必要なし
 脳梗塞は脳の血管に血のかたまりが詰まる病気だ。いくつかの種類があるが、もっとも重症度の高い心原性脳梗塞(のうそくせん)の新薬が、2011年と12年、相次いで登場した。  東京都在住の大橋カナさん(仮名・70歳)は、5年ほど前に心臓にできた血のかたまりが脳の血管に詰まる心原性脳塞栓症を発症、救急車で東京女子医科大学病院に搬送された。ヘパリンという、血液が固まるのを防ぐ「抗凝固薬」などを使った薬物治療をしたところ、幸い命に別条はなく、それ以降、同院の神経内科に月に1回通院しながら、再発予防のために抗血栓療法を続けていた。  抗血栓療法とは、血液を固まりにくくする抗凝固薬のワルファリンカリウム製剤(ワーファリン)を服用する治療だ。再発の危険性が高い心原性脳塞栓症では欠かせない治療だが、ワルファリンを飲んでいる間は、納豆は禁止で、緑黄色野菜も控えるなど、食事制限が必要だ。  大橋さんは病気をわずらう前まで、毎日欠かさず食べていたほど納豆好きだったが、治療のために食べるのを我慢していた。  そんな11年春、ある朗報を家族から聞く。食事制限がいらない抗凝固薬が日本でも発売されたというのだ。その薬が直接トロンビン阻害薬の「ダビガトラン(プラザキサ)」だった。  大橋さんは次の外来で、主治医の内山真一郎医師(同科主任教授)にその話をし、薬を変えたいと希望。内山医師は必要な検査(後述)をしたうえで、薬をワルファリンからダビガトランに変更した。  それから半年あまりが経過し、内山医師は、「外来で診る大橋さんは以前より元気になった気がする」と話す。 「生活の質を高める意味では、今回、薬を変えたことは正解だったと思います」(内山医師) ※週刊朝日 2012年3月30日号
週刊朝日 2012/09/26 00:00
【トップ指導者対談】平井伯昌×眞鍋政義
【トップ指導者対談】平井伯昌×眞鍋政義
平井 眞鍋監督と僕は、ものすごく指導のスタイルが似ています。これは監督の著書『チームのスイッチを入れる。』を読んで思ったことなんです。バレーボールは団体競技だし、身体能力で勝る海外選手に組織力で対抗しようとされているけど、眞鍋監督も結局は選手一人ひとり個別に対応されている。データを重視している点も同じだと思います。眞鍋 個々の能力をいかに引き出すか、によってチーム力は変わると思っています。団体競技とはいえ、まずは個々のレベルアップからです。監督として私が大事にしているのは、「情熱」と「勉強」です。情熱を持つのは当たり前のことですよね。世界と日本の差は今も大きい。就任してまずコーチ陣には「世界のバレーを勉強して、まずは情報量で世界一になろう」と伝えました。それが昨年の世界選手権で3位という形でひとつ実を結びました。スポーツの世界は結果がすべてですから、指導者として嬉しい瞬間でした。平井 指導者がやりがいを感じるのは、選手が好成績を残してくれたときなのは確かです。ただ、僕らはバレーや他のスポーツに比べて試合数が少ない。つまり「報われる瞬間」が少ないんです。だから、結果ばかりにやりがいを感じていたら、指導者は続けられないとも思うんです。--眞鍋監督は、新日鉄ブレイザーズで選手兼任監督を務めたり、その後にイタリアに渡ったりして、41歳まで現役を続けました。そして引退後すぐに女子の久光製薬の監督に就任したわけですが、「女子なら世界に対抗できる」が女子の指導を始めた理由でした。眞鍋 今、男子の世界ランキングで日本は18位で、女子は4位です。残念ながら、男子は世界トップレベルのパワーやスピードが凄すぎてどうにもならない面があるんです。しかし女子であれば相手のスパイクをレシーブできる分、差を埋められる。僕はずっと男子のバレーを勉強してきましたが、だいたい女子の戦術は、男子から10年ぐらい遅れているんです。女子に男子の最新の戦術を持ち込めば、世界と勝負できると確信していました。--女子と男子で、指導法で戸惑うことはありませんでしたか。眞鍋 男子と女子ではぜんぜん違いますね。久光製薬の監督になって初めての練習の日、選手を前に15分ぐらいプレゼンテーションを行ったんです。すると全員がきょとんとした目をしていて、私の声が届かないんです。すぐには監督のことを信頼してくれないし、心をつかむまで時間がかかりました。これはとんでもないところに来たなと思っていました。男子と女子でルールは同じでも、メンタル面の気質がまるで違うんです。競泳の場合はどうですか?平井 もちろん、違いますね。たとえば、北島康介への指導は、ライバルの話や、レースになったときの具体的な展開予想も話し合っていました。ところが女子の場合は、「私が何をすればいいのかだけを教えてほしい」みたいな感じなんですよ。自分のことだけに精いっぱいで、ライバルの泳ぎの話をすると頭が混乱しちゃう。勝つために何をすべきか、それだけを求めてくるわけです。その分、指示したことに対しては純粋に取り組み、「そこまでやるか」というぐらいに頑張ります。眞鍋 女子選手の場合、指示したことはそのまま取り組んでくれますけど、「臨機応変」ということを知らない(笑)。彼女たちが監督である私を信頼してくれているうちは楽なんですが、誰かが監督を嫌になると、全員が監督を嫌いになって別な方向を向く。女子を指導するほうが気を使いますよね。ただ、女子サッカーのなでしこジャパンを見ても思うことですが、チームが一つにまとまったときに発揮される力は、男子以上にあるような気がします。平井 女子選手は集団でまとまって行動をする。一人ひとりが高い意識を持った上で、団体行動をするなら問題はないんですけど、束になって「これくらいでいいんじゃない?」と妥協しちゃう。この点が女子選手の指導のやりにくいところですね。男子は群れることが少ないし、全員の前で怒られても平気なんです。眞鍋 女子選手は、みんなの前で怒っていい選手と、個別に怒らなければいけない選手がいる。女子の人気選手である狩野舞子は、非常に繊細な子なので、一人だけ呼んで指導したほうが頑張るタイプですね。◆「世界記録目指すぞ」と北島は本気になった◆--眞鍋監督は、マネジャーに最近髪形を変えた選手を教えてもらって、その選手に「お、髪の毛切ったな」と伝えるようなことも心がけているそうですね。眞鍋 僕が気付くことができればいいんですが、女性の髪形の変化なんて、そうそう気付かないじゃないですか(笑)。女子選手は、些細なことに気付いてもらうだけでも、「監督は気にかけてくれている」と信頼を寄せてくれる。それで競技へのモチベーションも高めてくれるなら、何でもやりますよ。平井 現役時代の中村礼子(アテネ・北京五輪の200メートル背泳ぎ銅メダリスト)も、髪形の変化に気付かないとすねていましたね。僕はアテネ五輪のときに、験担ぎでヒゲを伸ばしていたんですが、北島が二つ目の金メダルを取ったあとに剃ったんです。ところが、中村が私の変化に気付いたのは数日後ですよ。その間、ずっと一緒にいたのに......ものすごくむなしくなりました(笑)。眞鍋 平井コーチは、北島選手を中学2年から指導されていたんですよね。平井 高校生だった00年にシドニー五輪を経験(平泳ぎ100メートルで4位)し、翌年の福岡世界水泳で銅メダルを取って、いよいよ金メダルを目指そうとなったときの意識付けがターニングポイントでした。私はアテネ五輪までの3年間で「世界記録を目指すぞ」と伝え、本人に「世界一になれるんだ」ということを自覚させました。周囲からは笑われましたよ。あいつは素直だったので最初から本気にしてくれましたが、ふつうの選手は「私が世界一なんて」という意識の壁が生まれてなかなか本気にはなってくれない。眞鍋 北島選手は純粋なんですね。平井 最初はメダルを狙う自信がなくても、成功や成長の積み重ねで、自信が芽生えてくることがあります。若い選手には技術的な指導よりも、そういう動機付け、意識付けがまず大切だと思います。ベテランになってくると、どうしても臆病になりますから。眞鍋 私も09年の全日本女子チーム初招集時から、「12年のロンドン五輪で金メダルを取る」と言い続けてきました。過去の成績を調べると、五輪前年のW杯で3位以内に入った国が、翌年の五輪でもメダルを取っている。11月4日からW杯が始まりますが、私はこの大会を最重視していて、なんとか五輪切符が手に入る3位以内に入りたいと思っています。もしこの大会で出場権を逃せば、来年5月の最終予選に出場しなければならない。仮にそこで獲得できたとしても、五輪は7月です。わずか2~3カ月の間に2度もコンディションのピークを持ってくるのは、選手にとっては酷ですよ。それでは五輪にベストコンディションでは臨めない。メダルを取るためにも、このW杯で3位以内に入ることが絶対に必要なのです。--失礼ですが、もしW杯で出場権を逃した場合のことは考えたりはしませんか。眞鍋 まったく考えていません。山本愛、井上香織のスターティングメンバーふたりがケガで出場できないのは頭を悩ませるところです。でも私はこのことをプラスに考えています。新しい選手が活躍する場が生まれたと考えているからです。平井 指導者は、失敗したときのことなんて考えないもんですよ。◆「非常識を常識に」でハンディをはね返す◆--3大会連続金メダルの期待がかかる北島選手は現在、アメリカに拠点を移しています。今年7月に行われた上海世界水泳では100メートルで4位、200メートルで銀メダルの結果に終わりました。彼の現状を平井コーチはどのようにご覧になっていますか。平井 100メートルでアレクサンドル・ダーレオーエン(ノルウェー)にこてんぱんにやられたのはショックだったようです。9月に話したときも、「勝つ方法が見えてこない」と、珍しく弱気な発言をしていました。直接のコーチではなくなりましたが、インターネットで彼の泳ぎを見て、気付いたことはアドバイスするようにしています。--「もう一度、俺の元に帰ってこい」とは言わないのですか。平井 一度も言ったことはないですね。ただ僕が連絡を入れると喜んでくれるので、彼にとっての精神的支柱でありたいとは思っています。ロンドン五輪は、北島にとって最も厳しい戦いになると思います。--眞鍋監督はW杯に向けて手応えを感じているようですね。眞鍋 日本人選手は身長も低いし腕も短い。体格でかなわない分、日本人特有の長所を伸ばしていかないといけない。それは団結力であり、レシーブ力ですよね。コートでの練習はレシーブにかなりの時間を割いています。選手たちの腕は青たんだらけですよ。「非常識を常識に」を合言葉にして、海外選手にとって非常識なぐらいの、拾って拾って拾いまくる日本オリジナルの組織バレーを追求していきたいと思います。平井 競泳も背の高い選手が有利なのは確かです。バレーボールは背が高い選手が多いので、ここ(ナショナルトレーニングセンター)で競泳とバレーボールの練習が一緒になったりすると、ついスカウトしたくなる選手もいるんですよ。眞鍋 うちのキャプテンの荒木絵里香は186センチあるんですが、実は泳ぎもうまいんです。疲労回復のためによくここのプールで泳いでいますので、一度のぞいてみてください。平井 本当ですか? 今度見に行ってみますね。眞鍋 でも、クジラに見間違える可能性がありますけど......こんなこと言うと、荒木に怒られちゃうかなあ(笑)。  (聞き手・構成 柳川悠二)     *ひらい・のりまさ 競泳日本代表ヘッドコーチ 1963年、東京都生まれ。86年、東京スイミングセンターへ入社。北島康介をアテネ・北京両五輪金メダル、中村礼子をアテネ・北京両五輪銅メダルに導いた。現在、ロンドン五輪に向けて寺川綾、加藤ゆか、上田春佳らの指導をしている     *まなべ・まさよし 全日本女子バレーボール監督 1963年、兵庫県生まれ。85年から2002年まで全日本代表、セッターとしてコートに立つ。05年に現役を引退、08年、全日本女子バレーボールチーム監督に就任。10年、世界選手権で3位に入り、32年ぶりのメダルを獲得した<大会情報>【バレー】ワールドカップ女子大会 11月4~18日(広島、札幌、東京ほか)=参加12カ国の3位までが五輪出場権を獲得【競泳】ワールドカップ東京2011 11月12、13日(東京)=北島康介、イアン・ソープ(豪)らが出場予定週刊朝日
北島康介
週刊朝日 2012/09/26 00:00
子どものいじめ自殺「ゼロ」の欺瞞
子どものいじめ自殺「ゼロ」の欺瞞
 この数字を知ってほしい。 文部科学省の統計によると、2000年度から04年度の5年間で、子どもの「いじめを主たる理由とする自殺件数」は「0」件となっている。では、実際にその5年間でいじめ自殺は起こっていないのか? そんなわけはない。 00年、福岡県の男子高校生と中学生が同級生などからの恐喝や暴行を苦に自殺。埼玉県の中学生が2人、長崎県の男子中学生、長野の男子高校生、千葉県の女子中学生......など、この1年だけでも10件以上の「いじめ自殺」が、報道からは確認できる。 また、警察庁の発表によると、00年に自殺した19歳以下の人は、598人にものぼる。1日に1人以上の未成年者が自ら命を絶っていて、いじめ自殺の報道が後を絶たないこの現状で、文科省の統計の数値が、あまりに現実離れして見えるのはなぜか。「文科省のいじめ自殺の統計は、学校が作った報告書をもとにしているため、学校が隠してしまうと統計に上がらないのです」 と説明するのは、『わが子をいじめから守る10カ条』の著者で、いじめ問題に詳しい武田さち子さんだ。「自殺は報道されないケースも多々ありますし、警察が自殺と認定しても、学校と教育委員会が事故死として扱う場合もあります。私が見てきたケースの中には、生徒への調査で『いじめ』が明らかだという結果が出ると、証拠となるアンケートを燃やしたり、調査そのものをしていないことにした学校もありました」◆文科省動かした、ある小学生の死◆ 昨年6月、神奈川県川崎市で男子中学生が自宅のトイレで硫化水素ガスを発生させて自殺した。〈友達をいじめから助けられなかった〉 と書かれた遺書には4人の同級生の名が挙げられ、いじめの存在が告発されていた。 だが、この生徒の通う中学校長は当初、「調査中のため、いじめの有無については言えない」と言い続けた。男子生徒の父親が振り返る。「学校の対応はひどかった。私たちは『何があったのか知りたい。調べてください』というスタンスなのに、調べもせず、判で押したように『いじめはなかった』と宣言する。毎週毎週、学校に行って要望を出していましたが、進展はありませんでした」 最初は「いじめはあった」と認めたという担任教諭も、次の週に会うと、「そうじゃなかったような......私の勘違いかもしれません」 と言葉を濁したという。 学校との不毛なやり取りが続き、見かねた市の教育委員会が指導にも入った。生徒の死から2カ月半たち、遺書に名前を挙げられた同級生のうち3人が暴力行為容疑で書類送検された後、ようやく校長はいじめを認めたのだ。 実は文科省は、1999年度と05年度も子どものいじめによる自殺は「0」といったんは発表していた。しかし、07年に統計の方法を見直し、両年度とも「1」に変更された。06年度以降は、子どもの自殺数が統計上、増えたように見える(下の表)。 その契機となったのが、1人の小学生の自殺だった。 05年9月9日。北海道滝川市の市立小学校で、当時小学6年生だった松木友音ちゃんが教室で首を吊った。第一発見者は、奇しくも彼女が教卓に残した7通の遺書に名を記された「いじめグループ」の一人だった。 友音ちゃんは意識不明の重体になり、翌年1月6日に他界。彼女が生死の間をさまよっているときから、教育関係者たちは隠蔽工作に躍起になっていた。 事件の数日後、市教育委員会の教育部長が、友音ちゃんの入院先にやってきた。親族が、いじめの実態を知らせようと、「これが遺書です。読んでください」 と手渡そうとすると、「見たくない!」 と怒鳴られたという。 しかし、実際はこのとき、市教委は遺書の内容を知っていた。校長が内容をメモし、こっそり教育委員会へ知らせていたのだ。 事件当日、滝川市教委が道教委に送ったファクスには、遺書の内容とともに、〈5年生時から、学級でのトラブルがあったようだ。→本日、校長が担任から聞いた情報〉〈修学旅行時の班作りの時、もめた。→本日、教頭が担任から聞いた情報〉 と記されている。このファクスを受け取っていたにもかかわらず、教育委員会は会見で、「いじめはなかった」と発表し続けたのだ。 一方で校長は、親族に知らせずに保護者会を開き、「手紙には、友達の好き嫌いが書いてあり、『一緒に遊んでくれてありがとう』と書いてありました」 などと説明した。だが、そのような文言はなく、〈学校のみんなへ〉 と題された遺書では、〈私は、この学校や生徒のことがとてもいやになりました〉〈人からキモイと言われてとてもつらくなりました〉 と訴え、ある同級生へあてた文章には、〈あなたは、私が死んでせいせいしてるかうれしいかの、どちらかでしょうね〉〈あなたは、私がいなくなってほっとしたでしょう〉 などと書かれていた。 命をかけた"SOS"の告発を握りつぶそうとする学校。意識不明だった友音ちゃんの目からは、何度も涙がこぼれたという。 学校の対応に業を煮やした遺族が、独自に子どもへの聞き取りを始め、徐々にいじめの実態が浮かび上がった。「私の子どもが友音ちゃんに『キモイ』と言ったと話しました」 と、涙ながらに教えてくれた母親もいたという。 遺族の一人はこう話す。「私の知ったことを、ひとつずつ学校へ聞きに行きました。しかし学校は認めようとしない。言うことがコロコロ変わる。『学校の持っている情報は全部出します』と言っておきながら、報告書の存在も知らせず、中身も見せてくれなかった」 当初は対応していた担任教諭も、次第に面会を拒否するようになっていった。「このままでは、あの子になにがあったのか隠されてしまう」 と思った遺族は裁判に踏み切った。その結果、裁判所は、「担任に自殺予見の可能性があった」と認定し、行政の違法性を指摘。学校と教育委員会のひどい隠蔽行為が明るみに出て、滝川市と北海道は遺族に謝罪することになった。 全国的なニュースになったこの事件をきっかけに、文科省はいじめの定義を大幅に改め、それまで「発生件数」として統計されていたいじめを「認知件数」に変更。さらに、公立学校のみを対象としていた統計に私立・国立を追加するなど、統計を見直した。こうして、友音ちゃんを含む3人の自殺が「いじめが主たる理由」として新たにカウントされたのだ。 それでもまだ、文科省は現実とはかけ離れた数字を公表し続けている。 表を見ると、「0」が並んでいた文科省の統計に、数字がいくつか入ってきたが、この数値は警察庁が07年から発表している数値よりも少ない。警察庁はこの年から自殺者数に、原因を加えて統計を出しているが、これは遺書の存在など、はっきりした証拠があった場合だけで、実際は背景にいじめがあったとしても、別枠の「学友との不和」や、「健康問題」にカウントされるケースがほとんどだという。要するに、警察庁の統計でも、いじめ自殺の実態を反映しているとは言いがたいのだ。◆死んだ子どもは許してくれない◆ これについて文科省はこう説明する。「警察庁と文科省では調査のやり方が異なります。警察庁は捜査の結果、自殺と断定し、さらにその原因をあげている。一方、文科省の調査は、学校がどう把握しているのかが上がってきます。その時に遺族から、『自殺というのは伏せてほしい』と申し入れがある場合もあり、そのようなことで警察の捜査結果と見解の違いが出てくるのだと考えております」 この回答について、前出の武田さんはこう補足する。「学校の報告は必ずしも義務ではないのです。自治体によって報告の定義がバラバラ。なかには『校長が大したことないと判断したら報告しなくてもいい』とホームページにわざわざ載せる自治体もあります」 98年にひとり娘をいじめ自殺でなくし、今は「いじめ問題」に取り組むNPO団体「ジェントルハートプロジェクト」理事を務める小森美登里さんはこう話す。「文科省は報道が過熱するとようやく通知を出します。娘を失って、気づけばもう10年以上がたちましたが、何も改善されていません。隠蔽を許さず、全ての数字を正しい形で吸い上げるシステムを作り直さないかぎり、死んだ子どもたちは許してくれません」 こうした指摘に対し、文科省は、「文科省として隠蔽しているという事実はない。子どもの自殺を防ぐために、どんな事実であっても向きあってほしいという立場です。ひとつずつできるところから取り組みたい」 と説明するが、事後の対応に納得できない遺族は後を絶たない。 昨年、群馬県桐生市で小学6年生の女の子がいじめを苦に自殺した事件で、遺族は「いじめと自殺の因果関係を認めてほしい」と、市と県を提訴した。 滝川市の友音ちゃんの親族は、裁判を闘った経験をもとにこう話す。「裁判が終わっても、私たちの闘いは終わりません。私はすべてが明らかになるまで、あの子を知るすべての子どもに聞き取り調査をしようと思っています」 事件から時間がたつと解決は難しくなるのではないかと問うと、親族は友音ちゃんの写真を眺め、「私はあの子の気持ちに気づいてやれなかった。そしたら遺書を信じて進むことくらいしかしてやれない。正直、この気持ちをどう収めればいいのかわからないんです」 と、涙を流した。 (本誌・小宮山明希)     *京都出身の「おきばり(頑張り)」記者(28)が、「これ、どないやねん!」と思った事件やできごとをシリーズでお届けします。 ■いじめ自殺の統計<文部科学省>(文科省は年度、警察庁は年で集計)     小学 中学 高校    1999  0   0  1   2000  0   0  0     01  0   0  0     02  0   0  0     03  0   0  0     04  0   0  0     05  1   0  0 <警察庁>    06  0   5  1 小学 中学 高校  07  0   1  5  0   1   6  08  0   1  2  0   5   6  09  0   1  1  0   3   4週刊朝日
週刊朝日 2012/09/26 00:00
作家・渡辺淳一×昭和女子大学学長・坂東眞理子
作家・渡辺淳一×昭和女子大学学長・坂東眞理子
熟年世代の「幸福」の見つけ方  渡辺淳一さんの新作小説『孤舟』(集英社)は団塊世代のエリートサラリーマン・威一郎が定年後、思わぬ孤独に陥る物語だ。一方、女性も仕事を持つことに幸せがあると説く『女性の幸福 仕事編』(PHP新書)を書き下ろした坂東眞理子さんは団塊世代。男女の違いを軸に、熟年世代はどう第二の人生と向き合うべきか、語り合っていただいた。 *  *  * 坂東:渡辺先生の小説は女性との恋愛物語が多いイメージだったんですが、今度の『孤舟』はずいぶん違って、社会派だなぁと思いながら拝見しました。これは男性と女性、どちらが多く読んでいるんでしょうか? 渡辺:まずおもしろいと言ってくれるのは女性で、特に主婦層ですね。 坂東:私が言いたかったことを(主人公・威一郎の)妻の洋子さんが言ってくれている!という感じなんでしょうね。 渡辺:夫に読ませて、自分の代わりに文句を言わせようとしているのかも。男は恐る恐る手にとって密かに読むけど、しゃべらないみたい。(笑) 坂東:自分の姿かたちを鏡に映されて突きつけられるような気分になるんでしょうね。私はこの主人公と同世代ですからよくわかるんですけど、まさに私の周りが今こういう状態です。 渡辺:あららら。(笑) 坂東:専業主婦の友達からは、夫がずっと家にいてうんざりするという話はよく聞きますが、男性からは聞いたことがなかったので男性も大変で可哀想だなぁと思いました。(笑) 渡辺:そうですよ、男は年齢をとるとつらいんです……。でもカッコつけだから、そんなことしゃべらない。 坂東:妻にも子供にもカッコつけて、自分の弱い部分は見せたくないんですね。 渡辺:そう、そのとおりです。しかし僕は今回、団塊の世代の男たちに生身でぶつかって話を聞いてみましたが、これは大変な事態だと思いました。今、日本で60代以上の人口が総人口の3割ほどですよ。 坂東:そうですね。 渡辺:この人たちを働かせたら、その人数が納税者になるんです。それなのにヒマを持て余して嘆きながら生きている。これは大きな問題ですよ。でも政治家はこのことを何も考えていない。 坂東:まだ自分は60代だし何かやりたい、できるはずだ、でもその働く場がない、という人たちですね。確かにもったいないけど、でもね、彼らにも問題はありますよ。会社の肩書に頼りすぎだった人が多いから。 渡辺:そうですね。 坂東:高度成長期で勢いがあった会社は男性にすごく優しかった。会社は友達も先輩も後輩も全部、面倒見てくれるコミュニティーだったんです。だから会社を離れたら交友関係も何も残ってなくて、独り立ちできない。一方で、会社は女性には優しくありませんでしたから、会社に寄りかからない人間にならざるを得なかった。女性は初めから会社に期待しなかった分、少し強いのかなと思います。 渡辺:いや、少しじゃなくて圧倒的に強いですよ(笑)。女性は横並びの付き合いができますけど、男はそれもできない。男は地位が上がれば上がるほど孤独になるんです。地位が高い男に親友なんかいません。 坂東:そうですか? 渡辺:ええ。学生時代や入社当時はいるんですけどね。 坂東:同期でよく群れてますものね。でも、だんだんバラけてきますね。 渡辺:そうです。男は親友を振り捨てて孤立化しないと出世できないという宿命を背負っている。だからどんどん孤独になる。 坂東:でも、みんなでゴルフに行ったりしてません? 渡辺:あれは社用で行くんですよ。定年になったあとはお互い経済状況が違うし、そうは誘えない。 ●男は自分から誘わない、ヒマと思われたくない 坂東:男性は仕事ならずうずうしいくらいの人でも、プライベートになると、自分から誘わない人が多いですね。 渡辺:そう。こいつヒマなんだ、と思われたくない。誘われたから渋々行くというフリをしたいんです。 坂東:そんな男性を手のひらの上にのせて、あやさなきゃいけないのかしらっていう疑問を感じました。(笑) 渡辺:そもそも定年後の男のお小遣いは急に減るから、そうは遊べないですよ。一流企業を辞めた人の奥様方に聞いたらね、だいたい夫の月の小遣いは3万円だって言います。だからその年代の男はコーヒー飲むのもスターバックスじゃなくて、値段の安いドトールにいる。何十円かほんのわずかな差だけど、安いほうの店にあふれ返ってますよ。 坂東:え、本当ですか!? 渡辺:住む家があって食べる物はタダで、どうしてほかに3万もいるの、って。 坂東:日本の専業主婦はすごい権力者ですね。 渡辺:虐げられてると思ってる主婦たちもいるけど、見方によっては確かに権力者ですね。 坂東:でも威一郎さんみたいに妻子を養うほど稼いでくれる男性はどんどん少なくなっているから、こういう結婚ができるのは洋子さんが最後の世代ですよ。もう今は、専業主婦にはなれない時代ですから。 渡辺:坂東さんによると、威一郎は何だかすごくいい男みたいで。(笑) 坂東:偉いですよ。ある意味、古き良き時代の人ですよね。でも今、日本の企業は変革期で、これからは定年どころか30代40代で放り出されたり、給料が上がらなくなる人が増えていきます。私の本『女性の幸福』は少し若い世代に向けているんですが、ちゃんとそうした現実を見て、結婚・出産しても仕事を続けることが大事だとアドバイスしています。男女共に働いて家事を分担するような形にしないといけませんね。 渡辺:でも若い男はそこまでして結婚したくない。結婚した先輩たちが大変そうで、ああはなりたくないって言いますよ。 坂東:だからそれは奥さんが専業主婦になるから貧しくなるんで、共働きで仕事を続ければいいんですよ。 渡辺:でも大多数の女性は子供が生まれると仕事が難しくなる。結局夫の給料にすがるようになる。それでやってこれたんですから。 坂東:でもこれからの時代は二人で働かないとやっていけないと思います。年金も少ないですしね。 渡辺:そう、いろんな変革期ですね。結婚制度も家族制度も。 坂東:ええ、職場もコミュニティーもそうですね。だからこれからの働く女性は、威一郎さんみたいな、偉くなるために肩書を最優先に考えるような働き方はしてはいけないんです。 渡辺:男は肩書を気にしますからね。必ず名刺交換をして相手を値踏みする。だから定年になってからも、昔のポジションを書いた名刺を持っている人も多いですよ。 坂東:手書きで「前」とか「元」とか書き添えてあったり。(笑) 渡辺:そう。熟年世代の集まりやパーティーなんかに行くと、「前」と書いた名刺がいっぱい集まります。 坂東:あれを見ると私はちょっと恥ずかしいなと思いますね。いま何しているかを書いてほしいですよ。 渡辺:そんな人、女性にはいませんよねぇ。 坂東:いないです(笑)。男の人は組織に頼りすぎですね。会社の肩書だけじゃなしに自分で力を持っている方ならば、60歳を超えても働く場は必ずありますよ。経理の方ですとNPOとかですごく重宝されています。会社で偉かった人がダメなんですよね。 渡辺:男はプライドが高いし、価値観を切り替えるのは難しいからなぁ……これを書く前に僕は図書館やスーパー、デパートとか、いろんな場所を見てきましたけどね、そこにはこの年代の男たちがあふれていましたよ。 坂東:その人たちを何とかしないといけないですね。どうすればいいんでしょう。 渡辺:以前、僕の担当編集者だった出版社のOBは「先生、給料は10万でもいいんです。とにかく朝からどこかに出掛けていく場所が欲しいんです」と言っていたな。 坂東:……わかりました。昭和女子大に来ていただいて、学生たちに一対一で教えていただく。(笑) 渡辺:それ、希望者が、い~っぱいいますよ。 坂東:いっぱい来すぎちゃうかしら(笑)。今は学生たちがまともな日本語を書けないので、ライティングのサポートセンターを作って文章を指導しているんです。そこで添削指導するような仕事を、半ばボランティアで来ていただければ……。 渡辺:いや、ボランティアじゃなくて。みな本気で考えてるんだから。 坂東:じゃあ本気で考えます。(笑) ●生きがいのなさが病気の原因になります 渡辺:でもまじめにね、僕が定年後も働いたほうがいいと思うのは、今回取材したほとんどの人が退職後、病気になってたから。 坂東:退職して仕事がない人たちがですか? 渡辺:ええ。がんとか、脳梗塞、心臓発作とか、いっぱいやってるんですよ。それで僕は不思議に思った。定年になったら朝から晩まで寝てていいわけですよ。体は猛烈にヒマなのに、どうしてこんなに病気になるんだろうと。 坂東:きっと心が病むんでしょうね。 渡辺:そうなんです。特に男は生きがいのなさが病気の原因になる。気持ちのありようが病気を誘い出す。 坂東:ナチュラルキラー細胞が発動しないんでしょうか。 渡辺:今の医者って論理を優先するけど、病気の原因には非論理的な人間くさい理由もあるんです。手帳を真っ黒にして、「忙しくて死にそう」なんて人は元気ですよ。 坂東:女性の立場でいうと、専業主婦の人に多いんですけど、子供が一人前になったときに生きがいを失ってうつ病になったり、体の不調を訴える人が多いんです。 渡辺:ああ、ありますね。 坂東:でもその時期が男性の定年より10年くらい早いので、今はすでに苦しい時期を乗り越えて、ヨガでもやろうか、となってるんだけど(笑)。生きがいのなさが病気の原因になるのは女性も同じなんです。だからこそ子育てだけじゃなくて、女性も仕事を持ち続けたほうがいい。 渡辺:子供はお金かけて育てても、いつか巣立っていくから。 坂東:最後に残るのは本当は夫婦なんです。ちゃんと向き合って会話をしていかなければいけませんね。そういえば『孤舟』を読んでいて一つ大きな疑問があったんですが……。 渡辺:なんですか。 坂東:妻の洋子さんが出ていって、威一郎さんがデートクラブに登録して出会う小西さんは、20代後半のわりには落ち着いていていい子のようですが、まだまだ話し相手としては未熟でしょう? 40代とか50代の女性のほうが話が合うのに、男性は20代がいいんですか? 渡辺:そうですね。この年代になっても、やはり若い女のほうがいい。 坂東:でもそんな未熟な子相手に話したって、つまらないじゃないですか。 渡辺:でも男は熟した会話を求めているわけではないから(笑)。それより柔肌に触れたいとか、女の華やいだ雰囲気に酔いたいんですよ。 坂東:なるほど(笑)。フェロモンがフワフワッと漂ってるだけでいいんですね。 渡辺:まあそうです。しかし威一郎はとりあえず免れましたけど、やがて熟年離婚の危機もあるかもしれない。熟年離婚は8割が妻側からの申し出なんです。で、男は離婚したら大変だと思って動揺しながらノーと言う。でも僕は離婚してまた再婚すればいいんじゃないかと思う。 坂東:でも再婚できるだけの魅力ある男性じゃないと無理じゃないですか? 渡辺:そんなこと言いだしたらキリがないから。自分と同じように魅力のない女性を探せばいいんで。 坂東:アハハハ。(笑) ●息子や娘は口を合わせ「結婚はしないでね」 渡辺:理想を言ってたら何もできませんよ。 坂東:でも女性は熟年離婚したあと再婚したいと思う人、少ないですよ。 渡辺:そんなことないですよ。僕は高齢者施設をいっぱい回って話を聞きましたけどね、女性は結婚したがってますよ。 坂東:そうですか。言わない人は諦めているだけなのかな? 渡辺:アメリカの老人ホームもそうだけど、日本もだいたい7割から8割がおばあさんで、おじいさんは少ない。だから健康な男はモテモテです。三角関係のほとんどが、1人のおじいさんをめぐって2人のおばあさんという形だから。 坂東:肩書やお金じゃなくなった高齢者の男女が恋に落ちるには、どういう条件があり得ますかしら。 渡辺:高齢者施設っていうのは入所の条件があるから、経済状況が似た人が多いんですよ。 坂東:そうか、じゃあ恋愛は生じやすいんですね。 渡辺:ええ。ただ、おじいさんやおばあさんの、息子や娘が口を合わせて言うことは「絶対に結婚だけはしないでね」と。 坂東:相続の問題ですね。 渡辺:子供はみんなそれを言う。いかに子供が身勝手か。 坂東:でも恋愛ならいいんじゃないですか。 渡辺:まぁ、高齢の場合は恋愛っていうより、圧倒的に女のほうが積極的でね、「おじいちゃん風邪引くわよ」「ひざ掛けをどうぞ」と世話を焼くうちに同棲しちゃうんです。話を聞くとね、「もう年だからセックスはしない。だけど二人で手を握ったまま寝る、それから背中をさすり合う、これがすっごくいい」って。肌をさすると心が安らいで、血圧が下がるとか糖尿値が下がるとか、みんな体が良くなるって言いますね。 坂東:なるほど。そういう新しい熟年の男女の形を、これからどんどん渡辺先生が書かれるんじゃないですか。 渡辺:まぁね。おばあさんに聞くと、オロオロしてるのは圧倒的におじいさんだと言うけど。(笑) 坂東:でも、いくつになってもどんな社会になっても、常に男性と女性の関係っていうのはいろいろな側面があるからおもしろいですね。 渡辺:ええ。もう少し上の年代もいろんな問題を抱えていますしね。 坂東:先生、次はぜひその後の威一郎さんの老いらくの恋を書いてくださいよ。 渡辺:うーん、そのあたりまで、ぜひ書き込んでみたいけど。 坂東:お願いします。威一郎さん、数年後にはモテモテの不良老年になってイキイキしてそうですね。(笑) * わたなべ・じゅんいち 1933年、北海道生まれ。整形外科医のかたわら、執筆活動を始める。『光と影』で直木賞受賞のほか、吉川英治文学賞、菊池寛賞など受賞多数。『化粧』『ひとひらの雪』『うたかた』『失楽園』『愛の流刑地』『鈍感力』『欲情の作法』『幸せ上手』など著書多数 * ばんどう・まりこ 1946年、富山県生まれ。69年、総理府入省。内閣広報室参事官、埼玉県副知事、オーストラリア・ブリスベン総領事、男女共同参画局長などを歴任し03年に退官。昭和女子大学女性文化研究所所長などを経て、07年から学長。『女性の品格』『幸せの作法』など著書多数 週刊朝日
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週刊朝日 2012/09/26 00:00
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