亀井洋志
...良朝博(57)国民民主党衆院議員「日本の安保政策は人倫に反している」
屋良朝博氏
2020年の顔 1/2 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)
2020年の顔 2/2 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)
2019年4月の衆院沖縄3区補選で当選した屋良朝博氏は、地元紙「沖縄タイムス」の記者を経て、フリージャーナリストに。沖縄の米軍基地問題について、米国をはじめ海外の取材経験も豊富で、議員となってからもたびたび訪米し、国会議員やシンクタンクを回って意見交換を行っている。
沖縄は国政選挙や知事選で基地反対派が当選するなど、再三にわたって「辺野古新基地建設反対」の意思を示してきた。19年も2月の「辺野古埋め立ての是非を問う県民投票」で反対が7割超となった。
屋良氏が語る。
「米国で、沖縄では知事も住民も反対しているのに日本政府は基地建設をやめようとしないと言うと、みんな驚きます。普天間飛行場に隣接する普天間第二小学校にはシェルターがあるんですよ、と言うと『オーマイガーッ』です。辺野古はすごく美しい海なのですと訴えると、『何でそんなむちゃなことをしているのか』という反応が返ってきます」
だが、政府は普天間基地の危険性除去のためには「辺野古が唯一の解決策」として、反対の声に耳を傾けようとしない。18年12月14日の土砂投入から1年が経過する。
「唯一のはずであるわけがありません。解決策はたくさんあるのに、中身を吟味しないで結論ありきです。メディアも含めて、沖縄の基地問題の解決策についてはほとんど議論ができていません。私は党内で議論を仕掛けていこうと思っています。まず、普天間飛行場とは何かということを知ってもらうことです」
長さ2800メートルの滑走路を持つ普天間飛行場は、(1)オスプレイやヘリコプターなどの運用(2)空中給油機の運用(3)緊急時の外部からの航空機受け入れ――の三つの機能がある。
「(2)は山口県の岩国基地へ移っています。(3)も福岡県の築城航空自衛隊基地と宮崎県の新田原航空基地に移転しています。残っているのは(1)ですが、パイロットの飛行訓練や地上部隊との連携訓練ですから、沖縄でなければならない理由はありません。実際に安倍政権はオスプレイ17機を佐賀空港に配備しようとして、地元に反対されて断念しました。沖縄だけに大きな負担を押しつけておけば丸く収まるというやり方は、日本の安全保障政策が人倫に反しているというほかない」
膠着(こうちゃく)した現状を打開するには「政権交代しかない」との考えだが、野党議員でいる間も手を尽くす。早ければ、1月中にも屋良氏と、立憲民主党の議員が訪米するという。米議会に直接メッセージを届けることができるように、パイプ作りをする予定だ。
「相手方は、やはり民主党が主軸になると思います。民主党の中に『プログレッシブ・コーカス』という最大の議連があります。バーニー・サンダース上院議員やオカシオ・コルテス下院議員らリベラル派が所属しています。きちんと相手と交渉できるだけの条件なり政策なりを持っていく必要があります」
2020会計年度の国防予算の大枠を定める国防権限法が昨年12月20日、トランプ米大統領の署名で成立した。屋良氏は、この法律の中に注目すべき条項があると指摘する。
「1255という条項で沖縄の米軍基地に触れられています。海兵隊の削減計画の検証と、日本政府の意向と沖縄の政治情勢についての報告を求めています。そして、私が注目しているのは海兵隊の移転先として現状のハワイ、グアム、オーストラリアだけでなく、新たに米本国、アラスカ、日本本土も含めて解決策を検討するというものです。辺野古の海域には軟弱地盤があって滑走路ができたとしてもどんどん沈んでいくなど、工事に無理があることも伝えていきたいと思います」
一方、焼失した首里城については、建物の再建よりも大事なのは、琉球文化のルネサンスだという。沖縄戦が終結した節目の1945年6月23日以降、沖縄は米軍統治下に置かれ、日本復帰から50年近くが経とうとするが、いまも基地問題に悩まされている。
「現状は、古来の琉球とは全く逆です。もともと琉球はアジアの国々と平和的な関係を保ち、貿易によって経済的な利益を受けてきました。平和で武器を持たない守礼の国だったのです。本来の沖縄の歴史を見つめ直してこそ、首里城に魂が入るのです」
(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日オンライン限定記事
週刊朝日
2020/01/07 07:00