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ドラマ『きのう何食べた?』シロさんとケンジの美味しそうなご飯レシピが満載
ドラマ『きのう何食べた?』シロさんとケンジの美味しそうなご飯レシピが満載 2019年4月からテレビ東京系で放送中の人気深夜ドラマ『きのう何食べた?』。几帳面で倹約家の弁護士・筧史朗(シロさん)と明るい性格で人当たりのよい美容師・矢吹賢二(ケンジ)という恋人同士の二人が2LDKのアパートで暮らす日常が、毎回丁寧に描かれています。    1か月の食費はふたりで2万5000円以内。特売の食材なども使いこなしながら日々の料理を作るのはシロさんの担当です。彼の料理があり、ふたりで食卓を囲むからこそ、会話もはずみ、愛情も深まります。  本書はドラマに登場した料理レシピの数々を、よしながふみさん原作の漫画のエピソードとともに紹介した一冊。ここには、高価な食材や手間をかけるようなレシピは登場しません。どこの家庭にもある調味料や食材で、時間をかけず手軽に作れる"家庭の味"ばかりです。  たとえば、ケンジの友人・ヨシ君達が家に来て食事をすることになった日の献立はというと、「鮭と卵とキュウリのおすし」「筑前煮」「ナスとパプリカの炒め煮」「ブロッコリーの梅わさマヨネーズ」「カブの海老しいたけあんかけ」。ヨシ君の料理の腕前がかなりのものと聞いたシロさんは悩んだものの、見栄を張らず"いつもの夕飯"を出すことにします。めんつゆや鶏ガラスープの素など市販の調味料もうまく使いつつも、彩り鮮やかでぬくもりを感じさせるメニューは、今日の夕飯にでもさっそく作ってみたくなるようなものばかりです。  また、テレビドラマでも飯テロとして視聴者の食欲をそそったのが「サッポロ一番みそラーメン」。年末に実家に帰ったシロさんと離れてケンジが一人で作るのですが、バターをがつっと使ったり味噌を足してスープを濃いめにしたりするのがケンジ流。そうか、自分好みにアレンジできるのも袋ラーメンの楽しみだったと気づかされる回でもあります。  他にもメインから副菜、デザートまでさまざまなレシピが掲載された本書ですが、購入者の中には「レシピが思ったより少なくて残念」との声も......。逆に言えば、レシピのほかに登場人物の紹介やシロさん役の西島秀俊さん、ケンジ役の内野聖陽さんへのインタビュー、原作者のよしながふみさんが語るドラマ『きのう何食べた?』といった特集も充実。レシピも収録したドラマ紹介本的な一冊ととらえておくと、間違いがないかもしれません。  ドラマや原作漫画のあたたかな空気をそのまま感じ取ることができる『公式ガイド&レシピ きのう何食べた? ~シロさんの簡単レシピ~』。ファンブックとして、レシピ本として、きっと皆さんの心をほっこりさせてくれるものと思いますよ!
映画化も決定! 韓国で女性たちの圧倒的共感を得た大ベストセラー小説
映画化も決定! 韓国で女性たちの圧倒的共感を得た大ベストセラー小説 2016年に韓国で刊行されると100万部を超えるベストセラーとなり、社会現象まで巻き起こした『82年生まれ、キム・ジヨン』。この小説を読んだ多くの女性が「これはわたしの物語だ」との声をあげたといいます。さらに台湾、ベトナム、アメリカ、カナダなど世界各国で翻訳され、日本でも13万部を突破する売れ行きとなっている本書。国を超え、世の女性たちがこの小説に圧倒的共感を感じる理由はどこにあるのでしょうか?  本書はちょっと不思議な設定の小説といえるかもしれません。主人公は、3年前に結婚し、昨年女の子を出産したという33歳の女性、キム・ジヨン。ある日突然、彼女は自分の母親や友人の人格が憑依したかのようになってしまいます。そして、物語は彼女が受診した精神科の担当医が書いたカウンセリングの記録という体裁になっており、私たち読者は読み進めながら、キム・ジヨン自身の半生に憑依することになるわけです。  その中では韓国の女性が、ひいては日本に住む私たち女性が、多かれ少なかれ感じたことがある現代社会の生きづらさや悩み、苦労がありありと描かれています。  たとえば、勉強や就職活動をがんばっても大企業に採用されるのは軒並み男子学生であったり、結婚後は妻側の実家に帰ることはないのに夫側の実家へ顔を出し手伝いすることは当たり前のように求められたり。きわめつけは、産後に子育てとの両立がかなわず、思うように仕事を見つけられないキム・ジヨンが娘を連れて公園でひと休みしていたときに、サラリーマン男性たちが発した言葉。「俺も旦那の稼ぎでコーヒー飲んでぶらぶらしたいよなあ......。ママ虫(育児をろくにせず遊びまわる、害虫のような母親という意味のネットスラング)もいいご身分だよな」。  どうでしょうか。世の女性たちが「これはわたしの物語だ」と強い共感を示すのもうなずけるのではないでしょうか。  いっぽうで、韓国の男性たちはこの小説に対して強い拒否反応を示す人も。Kポップガールズユニット、レッド・ベルベットのアイリーンが本書を読んだと発言したところ、一部男性ファンが「アイリーンがフェミニスト宣言をした」として一斉に反発。アイリーンの写真やグッズを破損する様子を動画投稿サイトに投稿するという事態も起きたほどだとか。ここまで激しくはなくとも、本書を読んでなんとも言えない居心地の悪さのようなものを感じる男性は日本の中にもいそうです。  著者のチョ・ナムジュ氏は、本書が「自分をとりまく社会の構造や慣習を振り返り、声を上げるきっかけになってくれれば」と日本の読者に対してメッセージを寄せています。挫折、疲労、恐怖感で終わるのではなく、これからを生きる世代のためにも、私たち一人ひとりが考え続けていくことが大事になってくるかと思います。  現在、キム・ジヨン役にチョン・ユミ、夫チョン・デヒョン役にコン・ユというキャストで映画化も進んでいるという『82年生まれ、キム・ジヨン』。まだまだ本書が投じた一石の波紋は鎮まることはなさそうです。
お風呂界のエンタメ、現代銭湯建築の傑作... 都内おすすめ銭湯が丸わかり
お風呂界のエンタメ、現代銭湯建築の傑作... 都内おすすめ銭湯が丸わかり 銭湯といえば、私たちに身近な存在として古くから親しまれてきた公衆浴場。各家庭にお風呂が普及した今もあちこちにあり、最近ではノスタルジックな味わいがある場所として、魅力を感じる若い世代も多いようです。  本書『銭湯図解』の著者・塩谷歩波さんもそのひとり。1990年生まれの彼女は2015年に早稲田大学大学院(建築学専攻)終了後、都内の設計事務所に勤務します。そのかたわらで、2016年末より銭湯の建物内部を俯瞰図で描く「銭湯図解」シリーズをSNS上で始めたところこれが話題に。現在は「銭湯の魅力を伝えたい」という思いとともに、イラストレーターとして、また東京・高円寺の銭湯・小杉湯で番頭として働く日々を過ごしているそう。  そんな彼女の初めての著書では、都内を中心とした24軒の銭湯の図解をカラーの描きおろしで掲載。「アイソメトリック」という、角度をつけて建物内部を俯瞰図で描く建築図法を用いて、銭湯の浴室や脱衣所内が描き起こされています。  ほのぼのとした味わいあるタッチの絵とともに、著者による手書きの文字が添えられエッセイ形式になっているのも本書の特徴。第1章では「銭湯を知る」として、「銭湯の原風景」だという東京・北千住の「大黒湯」(男湯)、有名商店街のそばにあり「ご飯がおいしくなる銭湯」だという東京・戸越銀座の「戸越銀座温泉」(月の湯)など初心者にふさわしい7軒がピックアップされています。  続いて第2章「銭湯を楽しむ」は上級者コース。「現代銭湯建築の傑作」と著者が評する東京・町田の「大蔵湯」(女湯)、プロジェクションマッピングを採用した「銭湯建築のニューウェーブ」ともいえる東京・練馬の「天然温泉 久松湯」(女湯)など7軒を収録しています。  そして第3章「銭湯を極める」はマニアックコース。著者が心が疲れて泣きたくなったときに必ず行くというのは東京・武蔵境の「境南浴場」。静かなピアノのBGMや優しいサウナの温度などが疲れた心をほぐしてくれるのだとか。ほかにもスカイツリーの色を再現した湯船やトムヤムクン湯などもあるという「お風呂界のエンタメ」こと東京・墨田の「薬師湯」(女湯)など5軒が掲載されています。  都内の銭湯中心の本書ですが、中には日本各地へ遠征して取材したものも。明治時代からの建物と若き経営者の意欲が混じり合った京都の「サウナの梅湯」(男湯+2階)、けっしてアクセスはよくないものの銭湯マニアがこぞって訪れるという三重県の伊賀にある「昭和レトロ銭湯 一乃湯」(女湯)などなど、その土地ならではの銭湯に旅情をかき立てられます。  多様で幅広い銭湯の魅力を水彩で表現した『銭湯図解』。どの絵からもそれぞれの銭湯の情景が浮かび上がってきて、ほっと温かな気持ちにさせられます。まるで湯上がりのようなほかほか気分になれる一冊、ぜひ皆さんも読んでみてください。
ジェーン・スーさんとわが道を行く8人が語りつくす、人生折り返してからのあれこれ
ジェーン・スーさんとわが道を行く8人が語りつくす、人生折り返してからのあれこれ 『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』や『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』などのエッセイの著者であり、TBSラジオ番組『ジェーン・スー生活は踊る』ではパーソナリティを務めるジェーン・スーさん。彼女が各分野で活躍する8人それぞれと語りつくした対談集が『私がオバさんになったよ』です。  対談相手は、光浦靖子さん、山内マリコさん、中野信子さん、田中俊之さん、海野つなみさん、宇多丸さん、酒井順子さん、能町みね子さん。この人選は、ジェーンさんが過去に対談したことのある人の中から「もういちど話したかった」という気持ちを持っている相手に声をかけたのだとか。(能町さんだけは例外で、じっくり話をしてみたかったけれど機会がなかった相手だそう)。  タイトルからもわかるとおり、本書はオバさん、すなわち"折り返し地点を過ぎた年代の人々"の人生におけるいろいろがテーマになっています。たとえば、最初に登場する光浦靖子さんとは体力的な部分での話も。光浦さんの「メンタル面では昔よりひりひりせずに楽しめるようになりました。今は体力的肉体的疲労」という言葉や、ジェーンさんの「20代は自我との闘いで疲れ果てる。体力は有り余っているのに、効率がすごく悪い。30代で少しバランスがとれてきて、40代でメンタル面がだいぶ整って、デフラグが全部終わって効率よく動けるようになるかと思いきや、今度は身体が動かない」といった言葉には、同年代なら業種は違えど共感しきりな人も多いのではないでしょうか。そんな中、マッチョな男社会や年下が多くなる職場などで40代以降の女性たちはどのようにするのが生きやすいのか......二人の対談は必読です。  他の相手との対談も実に貴重で、結婚していないこと、子どもがいないこと、男性女性それぞれが抱える現代社会の呪い、仕事のしかた、パートナーとの役割分担、親との関係性......などなど、誰しもが抱えるであろう悩みやモヤモヤが次々に出てきます。  「結婚したら仕事をやめて、子どもを産んで......」といった決まった価値観が崩壊しているともいえる今の時代、混沌としていて何が正解なのか、その答えを求めている人も多いかもしれません。そんな中で、本書から参考にすべきは「バリエーションを知る」「多様性を受け入れる」ということなのではないでしょうか。「40代女の生き方のバリエーションが増えていくことが必要」とは本書に出てきたジェーンさんの言葉ですが、さまざまな考え方、さまざまな生き方をする40代以降の皆さんを通して、人生はひとつじゃないということが本書からはしみじみと、そしてポジティブに伝わってくることと思います。  すでにオバさんになった人だけでなく、いつかオバさんになる人も、そしてオバさんとコインの表裏一体で生きるオジさんの皆さんにも。今を生きるすべての人に、ぜひオススメしたい一冊です。
仕事ができる人ほどやっている!? ハイパフォーマンスを維持するためのセルフメンテを知ろう
仕事ができる人ほどやっている!? ハイパフォーマンスを維持するためのセルフメンテを知ろう 働き盛りの年代といえど、「駅の階段を上るのが億劫」「自分の顔色がくすんで見える」「髪がパサパサしてまとまらない」「人の話を聞き返すことが多くなってきた」など自身の体調にちょっとした心配を抱えている人は多いのでは? やはり人間は年を重ねるうちに若い時と疲れの回復具合が変わってくるのかもしれません。  しかし、実はパフォーマンスがいい仕事をしているビジネスエリートほど、自分にあったセルフメンテナンスを身につけ、中長期的な体調管理を心がけているのだとか。 そんな老け込みを感じ始めた皆さんのために、東洋医学の考えを基に、老いの進行を緩やかにするセルフケアを取り入れながら、自分に合った体調管理法を教えてくれるのが本書『最強の体調管理』です。  著者は京都の「鍼灸Meridian.烏丸」院長で鍼灸師でもある中根一さん。彼のもとには世界をまたにかけた国内外のビジネスエリートたちが多数通院しているそうですが、そうした人たちほど自身に合ったセルフケアを生活の中にうまく取り入れており、だからこそリタイヤしてもおかしくない年齢に差し掛かってもなお第一線で活躍できていると本書で述べています。  さて、そもそも「老け込み」という現象がなぜ起きるかですが、人は疲労物質が溜まりやすくなると「腎虚(じんきょ)」という状態に偏ってしまうそう。第1章では体調管理を始める前に、まずは「腎虚」の深刻度をはかる方法を教えてくれています。また、東洋医学によると体質によっても「身体の長所・短所」や「かかりやすい病気」など気をつけるべき症状は異なるそうで、自分が「肝」「脾」「肺」「腎」の4タイプのどれにあてはまるかチェックする方法も紹介されています。  そして「体調管理」ということで、「食事」「休息法」、運動を中心とした「生活習慣」という観点から日常生活全般のさまざまなアドバイスをしてくれるのが本書の特長。たとえば第2章では、「糖質制限よりも満腹にならないことが大切」「菜食重視は老け込みを加速させる」「朝の緑茶はコーヒーの10倍パフォーマンスを上げる」「体調を整える水分摂取のタイミングと目安」などの食事術について書かれています。  また、身体の衰えを感じたら「運動」よりも「正しい休息」が必要だという著者。 第3章では「エリートは入浴時に空気の流れを意識する」「深呼吸が腎虚体質を解消し脳が冴える」「スロージョギングこそ最強の疲労回復」といった効果的な休息の取り方についても教えてくれます。世界で活躍しているエリートほど、疲れてから休息を取るのではなく、疲れを自覚する前に休息を取るように心がけているというから見逃せません。  続く第4章は、膝の痛みを防ぐための太腿ストレッチやデスクワーカーにおすすめの瞼のケア、辛い腰痛を撃退するための「前屈4の字固め」など、日頃の生活に取り入れられる手軽なストレッチやエクササイズを中心に紹介。これらはパフォーマンスを落とさないために習慣にしたいところです。  さしあたり困ったことがなければ、わざわざお金と時間を使って身体をケアしようとしないのが一般人の常識かもしれません。けれど、いわゆるビジネスエリートと呼ばれる人たちは具体的な症状が出てではなく、「病気になる前に、体質や生活習慣から適切な施術とアドバイスをもらう」よう実践している人が多いことが本書からはわかります。ここまで完璧を求めることはなかなか難しいですが、今までよりも少しでも健康への意識を高めるために、そして健康な生活習慣を手に入れるために。本書を読んで自身の体調管理を始めてみるのはいかがでしょうか?
危険地帯ジャーナリストが取材で出会った「悪いやつら」 その思想とは
危険地帯ジャーナリストが取材で出会った「悪いやつら」 その思想とは 殺人犯、殺し屋、ギャング、麻薬の売人、薬物依存者、悪徳警官......世の中にはさまざまな国籍や職業の「悪いやつら」が存在しますが、彼らの頭の中はいったいどのようになっているのでしょうか。  その根幹にあると思われる行動や考え方を体系化したものが、『世界の危険思想』です。著者はTBS系の人気番組『クレイジージャーニー』で危険地帯ジャーナリストとして出演中の丸山ゴンザレス氏。ふだんの生活の中で私たちが生死にかかわるほどの強烈な悪意に遭遇することはそうそうありませんが、本書では著者が数々の取材を通して出会ったエピソードや事例を通して、世界の危険思想の一端にふれることができます。  まず最初に出てくるのが「人殺し」。殺人は人類最大のタブーのひとつともいえますが、どういった動機や理由でもって殺人を犯すのか、加害者側の考え方が紹介されています。 著者がジャマイカの首都・キングストンのスラム街でインタビューしたのは、現役の職業・殺し屋。その日の暮らしに困るほどの貧乏人であるため、「彼にとって殺すことに罪悪感はあるだろうが、それ以上に生きることに必死なんだと思う」と著者は推察します。そして、インタビューの途中でちょうどかかってきた殺人依頼の電話の会話を聞き、気軽に殺人を頼むコネと金を持つ依頼主のほうにも恐怖感を抱く著者。結果的に、依頼者と実行者という二つの存在が噛み合ったときに殺人が発生することがわかったといいます。  こうした殺人の仕組みとともに、もうひとつ重要なものが「動機」。人を殺す動機の大きなものは「金」だといいます。多額の保険金や財産など金への執着が優先してしまうと、殺人のほうは完全に人任せにしたりできてしまう。また、取り調べや調書をとるのが面倒なために警察が犯罪集団を殺すというようなケースも。世界を見渡せば、命の価値や正義よりも自分のメリットを優先するという思想がいくらでもあることがわかります。  このように、殺人だけでなくほかにも売春や麻薬、裏社会などさまざまな視点から世界の危険思想をひも解いていく本書。著者は人類の持つ感情の中で最悪に恐ろしい危険思想を「相手を『甘い』と思って『ナメる』こと」だと結論づけています。相手への敬意のなさが原因でもたらされるものがほとんどではあるものの、あくまで一人の脳内で起きていることのため対処する方法は非常に難しいといいます。  そのうえで、「みんながもっと曖昧に生きるのがいいのではないか」と投げかける筆者。昨今の日本には、どんな微罪でも決して許さない風潮や、一度でもしくじったら復帰できないような空気感がありますが、もう少しでよいので曖昧なままの状況を許す心が必要ではないかと続けます。すべてのことに白黒つけたがるというのは、必要悪を許容しないとか曖昧さを排除する方向につながり、世界でいちばん危ない考え方につながりかねないという考え方にはうなずける人も多いのではないでしょうか。世界の事例を見ながらどこか他人ごとのように考えてしまいがちですが、実は平和で安全な日本で暮らす私たちの頭の中にも危険思想の芽はあるのかもしれません。

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日本発のグラフィックノベル「戦隊」書籍化プロジェクト まるで「読む映画」!?
日本発のグラフィックノベル「戦隊」書籍化プロジェクト まるで「読む映画」!? 日本発のヒーロー・コミック・レーベルを立ち上げるべく誕生した謎の組織「シカリオ」と、「鉄コン筋クリート」や「海獣の子供」のアニメーション制作会社「STUDIO4℃」が共同で制作したヒーロー・レーベル第一弾「戦隊」の書籍化を目指すクラウドファンディングのプロジェクトが実施中です。
100以上の海外フェスに参加した筆者が40か国、120以上のフェスをナビゲート
100以上の海外フェスに参加した筆者が40か国、120以上のフェスをナビゲート 音楽フェスというと、フジロック・フェスティバルやサマーソニックなど国内で開催されるものを想像する方が多いのでは? けれど世界に目を向けてみると、日本とは驚くほど規格外な規模や雰囲気のフェスも数多く存在します。  本書は海外フェスを旅の一つの目的に設定した、ちょっと目新しいガイド本。これまで100以上の海外フェスに実際に参加したという筆者・津田昌太朗さんならではの目線で40か国、120以上のフェスが紹介されています。  本書を開いて魅了されるのは、いたるところに挿入されている写真の数々。オリジナル写真やフェス公式のフォトグラファーによる写真が使われているそうですが、その場の迫力や熱狂がそのまま伝わってくるかのよう! 筆者にとってフェスティバルの正体とは「ほんの数日の間だけ、非現実の世界を具現化させた最高峰のエンターテインメント」だそうですが、そうした非日常な空間へと一気にいざなわれます。  そして写真とともに、各フェスの紹介では概要、見どころ、最近の出演アーティスト、開催地やスケジュール、アクセスなどの情報を掲載。それにとどまらず、著者が実際に足を運んでセレクトした、フェス周辺都市の著名な観光情報から音楽スポットなどまで載っています。  100以上のステージを楽しめる世界最強のフェス「グラストンベリーフェスティバル」(イギリス)、宇宙とコンタクトする最先端フェス「ソナー」 (スペイン)、毎年ドレスコードが変わる仮装フェス「ベスティバル」(イギリス)など好奇心を刺激されるフェスが本書には並びますが、その中からベルギーのボームで開催される音楽フェス「トゥモローランド」を例にとってみると......。  まずは「ここは遊園地か、サーカスの劇場か?」といったメインステージの写真にド肝を抜かれます。このフェスは毎年ストーリーに沿ったステージ装飾や舞台演出を行うことで独自の世界観を確立。EDMの流行とともに非日常のファンタジーを体験できるフェスとして、今では毎年40万人が来場する世界最大規模のフェスとなっているといいます。  筆者は「確実に死ぬまでに体験しておくべきフェスのひとつ」とまで書いており、音楽好きであれば心かき立てられること間違いナシ。とはいえ、ベルギーという国自体にはあまり詳しくないという皆さんも多いはず。  そこでフェス情報の次に掲載されているのがベルギーの観光情報。首都ブリュッセルで訪れるべきスポットや過ごし方から、「実は会場となるボームから一番近い観光地はアントワープ」といった役立つ知識まで紹介されています。  また、海外フェスで活躍する日本人アーティスト、コムアイ(水曜日のカンパネラ)、DJ KSUKEのインタビューも掲載。アーティスト目線での海外フェスの魅力や日本のフェスとの違い、さらに参加したときの楽しみ方、そしておすすめ海外フェスもピックアップされており興味深い!  このほかにも巻末には、海外フェスのチケットの取り方から持ち物、会場の過ごし方、宿泊など、著者がよく聞かれるという質問と、それに対する回答も。いたれりつくせりな内容で、海外フェスビギナーも安心できることと思います。  「フェス×旅」の素晴らしさを全体から感じ取れる本書。海外フェスに出かけたい人はもちろん、あわただしい日常から離れてつかの間の非日常感を楽しみたい人にもオススメの一冊となっています。
孫正義氏も絶賛した最強プレゼンスキル 1分で人を動かす技術とは
孫正義氏も絶賛した最強プレゼンスキル 1分で人を動かす技術とは "人前で自分の意見を言おうとすると頭が真っ白になってしまう" "一生懸命話しているつもりだけど、話せば話すほど相手の反応がイマイチ" "社内会議やプレゼンテーションの場で、「TED」に登場するプレゼンターのようにドラマティックに話すなんてムリ"  そんな困り感を抱えている方も多いのではないでしょうか?  そもそも小さい頃から人前で自分の意見を披露する機会が少ない日本では、未だに気恥ずかしさが先立ち、消極的になってしまう人がほとんど。  実は、今回紹介する書籍『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』の著者、伊藤羊一さんも、そんなプレゼンが苦手な1人でした。  しかし、努力を重ねた末に伝えるスキルを改善し、やがて孫正義さんの後継者養成学校「ソフトバンクアカデミア」に所属、孫さんからプレゼンを絶賛されることに。  本書では、「1分でまとまらない話は、結局何時間かけて話しても伝わらない」と述べ、ダラダラと話が長いのは、伝えるべきことがまとまっていないからであり、根拠と結論を構築して1分で収まるように話すことが重要だと訴えています。  また「人は、相手の話の80%は聞いていない」(本書より)と述べ、相手に的確に伝えるためには、一言のキーワードに凝縮することが大切だと言います。  現在はYahoo!の企業内大学「Yahoo!アカデミア」学長を務める伊藤さんが、今まで培ってきたプレゼンスキルを余すところなくまとめた本書は、ビジネスパーソンならずとも、コミュニケーション能力をアップさせたい人にとっては必読の1冊と言えるでしょう。
善意にイライラ、人工肛門で医師にモノ申した日も...がん患者になった政治部記者が闘った日々
善意にイライラ、人工肛門で医師にモノ申した日も...がん患者になった政治部記者が闘った日々 がんのなかでも生存率が低いとされる難治性の膵臓(すいぞう)がん。本書『書かずに死ねるか』は、43歳で膵臓がんを告知された朝日新聞政治部記者・野上祐さんが連載していたコラムを書籍化したもの。  本書の中では、新聞記者ががん患者になって初めて感じた葛藤や、また医師や看護師の言葉に傷ついた事も多々あったと明かしています。  たとえば、人工肛門をめぐる問題。人工肛門の場合、腹部に便を溜める袋を貼り付けるのですが、 病院では"早く慣れてください"と言われるだけで、どんなに気を付けても便が漏れてしまったと言います。  あるときは、扱いに精通したベテラン看護師が装着してくれたにも関わらず、あっけなく漏れてしまったのだとか。 「『やっぱりできないんじゃないか』。けっきょく正解は見つからなかったのに、気分がすっきりした」(本書より)  プロの看護師が着けてすら漏れるのだから、ましてや医療に関しては素人の患者側がいくら頑張っても漏れるのは当たり前。それでも患者側の苦労を想像できない医師や看護師からは相変わらず、まるで患者側の努力が足りないような言葉を繰り返し言われたことに憤慨。たまらずに、以下のように言い返したと言います。 「すかさず専門家の名前を挙げて、『あの人にやってもらったんですけど、漏れました』。黙り込んだ相手にだめ押しした。『専門家がやっても漏れるんですから、慣れは関係ないですよね』」(本書より)  野上さんはやがて、がんの症状そのものよりも、がん治療に伴う他の要素にストレスを感じていたことに気づきます。たとえば、周囲からの善意のアドバイス―――もう十分に頑張っているのに「頑張ってください」と言われることなど―――にも複雑な思いを抱えたこともあったと言います。 「自分が闘っている相手は病気ではない」 「治療や仕事で関わる、決して悪意のない人たち。具体的には、その間でパターン化されてきた考え方や習慣こそ、自分を苦労させる敵ではないか」(本書より)  2018年12月末に亡くなるまで、自身を"取材"するかのように病床で書き続けられた本書は、最期まで冷徹な目線を失わずにがんと対峙した記者が心血を注いだ1冊と言えるでしょう。
甘味中華? 洋食中華!? 町中華探検隊が名店50軒を徹底取材!
甘味中華? 洋食中華!? 町中華探検隊が名店50軒を徹底取材! 今回ご紹介するのは『町中華探検隊がゆく!』なる一冊。「町中華」とは、主に昭和のころに創業し、高度経済成長期~バブル期にかけて続々と増えた町の大衆的な中華食堂のことを指すのだそうです。そう聞くと「ああいうタイプのお店か!」とパッと脳裏に思い浮かぶ人も多いのでは?  本書はこれまで数多くの町中華を訪ねてきた、北尾トロさんを隊長とする「町中華探検隊」の隊員5名が東京の名店50軒を徹底取材し、知られざる「町中華」の物語に迫った内容になっています。  町中華というと、本場の中国料理店とは異なり、中華以外のメニューが並ぶこともしばしば。むしろそれこそが魅力のひとつといえましょう。本書にはそうしたユニークな店が次々に出てきます。  たとえば1章の「町中華の面白さを知る」には「甘味中華・洋食中華」なんていうカテゴリが。新御徒町の「今むら」にはラーメンやチャーハン以外にカツ丼や海老フライなどのメニューもあり、しかもお店の看板には「とんかつ」と銘打ってあるのだそう! 春日にある「ゑちごや」はタンメンや中華丼のほか、カレーライスやカツ丼、目玉焼き定食、そしてあんみつやしることいった甘味メニューもあるというから驚きです。  2章の「町中華密集地帯を歩く」では荻窪、浅草橋、堀切菖蒲園という3か所を特集。お店の紹介とともに、なぜその土地が町中華のメッカとなったのかやエリアごとの町中華の特徴などにもふれており、ぶらぶら街歩きをしながらお店をはしごしたい気持ちにさせられます。  続く3章「町中華のメニューを研究する」では、中華丼に冷やし中華、餃子、タンメン、チャーハンなどが実においしそうな写真とともに登場。「中華丼は町中華の実力のバロメーター」や「素材そのものが何よりの調味料」など、各店の定番メニューの魅力がとことん語られています。本書にはお店のご主人への取材が数多く収められていますが、店主の人柄やこだわりなどを垣間見ることができるのも大きな魅力です。  最後の4章は「町中華をディープに楽しむ」として、立地や建築、店主の趣味など独特のディープな視点から選んだ町中華が紹介されています。たとえば三河島にある「すずき」は、店内に4つあるテーブル席はどれも1人席という非常にユニークなレイアウト。これはどの位置からもちゃんとテレビが見えるという計算され尽くした角度になっている、おひとりさま優先のお店なのだとか。ほかにも手書きメニューがお店をさらに味わい深いものにしている椎名町の「十八番」や豊洲の大型団地の一階にある「中華いちむら」など、ベテランの町中華好きにも納得のお店が並んでいます。 こうして見てみると、いちおう定義らしきものはあるものの、その中身はとても自由で奥が深い「町中華」。探検隊のメンバー自体も、店の歴史にこだわる人やコスパ追及派、店主の人柄重視など、探索ポイントはさまざまだといいます。  であれば、私たちも肩ひじ張らずに、自分の好きなスタイルで町中華を楽しむのがいちばん。チェーン店とは異なる独自の進化を遂げてきた「町中華」の魅力に、もっともっと気軽に皆さんも親しんでみてはいかがでしょうか。読んだ後は近所の町中華にふらりと訪れたくなる、そんな食の楽しさを刺激してくれる一冊になっています。

特集special feature

    ツイッターフォロワー数9万人! 上馬キリスト協会が出したゆるーい本って?
    ツイッターフォロワー数9万人! 上馬キリスト協会が出したゆるーい本って? 皆さんは「上馬キリスト教会」のツイッターのアカウントをご存じでしょうか? 東京都世田谷区駒沢に実在するメソジスト系単立教会でもありますが、2015年2月にスタートしたツイッターアカウントが話題となり、フォロワー数9万人(2019年5月段階)を超えるほどの大人気アカウントとしてその存在を知られています。  このアカウントを運営しているのが上馬キリスト教会の信徒である「マジメ担当」と「おふざけ担当」のふたり。彼らがふだんのツイートでおこなっているのと同様に、聖書とキリスト教の世界を本当にゆる~く、ざっくりと紹介したのが本書『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』です。  神道系と仏教系が大半を占める国・日本。そのため、キリスト教や聖書についてよく知らない人が多いのは自然なことであり、そもそもそこまで興味を抱いていないという人がほとんどかと思います。  けれどもし、たとえばキリストの弟子である使徒について「ペテロはドジでおっちょこちょいな使徒のリーダー」「癒し系使徒のピリポは『ドラゴンクエスト』の初代勇者?」なんて言葉を目にしたら、思わず興味をそそられてしまいませんか? このゆるさ、真面目でとっつきにくい聖書のイメージが一転しちゃう......!  ほかにもキリスト教や聖書にまつわる豆知識が満載の本書。たとえば「キリスト」という名前ですが、これは名字ではなくて「油注がれた者=救世主」のこと。つまり、「イエス=キリスト」は「イエス・ザ・救世主」という意味なのだとか。「ええそうです、なんとなくちょっとプロレスっぽい呼び方で、この2000年以上、呼ばれ続けていらっしゃるのです、この方」なんてふうに、楽しくざっくりと教えてくれます。  こうして見てみるとわかるとおり、本書のコンセプトは「信じなさい」でも「聖書に従いなさい」でもなく、「まずは聖書を楽しんでみて!」ということ。本書「はじめに」では、「この本を読んで「キリスト教って素晴らしいな!信じよう!」とか思う方がいらっしゃったら、私たち、全力で止めます」とまで言っちゃってます。  信徒ではないノンクリスチャンにとっては、キリスト教や聖書は人生において必要ないものかもしれません。けれど、宗教に寛容と言われる日本に生まれた私たちだからこそ、こうして違う宗教についてもゆる~く笑いながら触れることができるとも言えます。せっかくならその恩恵を受けてみるのもよいのでは?  というわけで、自分の知識や世界を広めるうえでもタメになりそうな本書。キリスト教の超・超・超・超入門書として、気負わず構えず開いてみてはいかがでしょうか。
    誤嚥性肺炎の予防にも!? 知られざる「音読」の健康効果に迫る
    誤嚥性肺炎の予防にも!? 知られざる「音読」の健康効果に迫る 2017年刊行の前著『心とカラダを整える おとなのための1分音読』が大ヒットした、大東文化大学文学部准教授・山口謠司さん。続編となる『もっと心とカラダを整えるおとなのための1分音読』では、夏目漱石の『こころ』や、中島敦の『山月記』など教科書でおなじみの名作を、"1分を目安に読める"ボリュームで55篇紹介しています。  「音読」には、黙読にはない利点が盛りだくさんとする本書ですが、その意外な効用が、「誤嚥(ごえん)性肺炎」の予防。高齢者に多く、今や国民病ともいわれる誤嚥性肺炎ですが、音読習慣によってのどを使うことにより、のどの筋肉が衰えるのを防ぎ、発症リスクを下げることが期待できると言うのです。  「のどの筋肉は年齢とともに衰えていきます。本来食道に入るべき食べ物が誤って気管に入ることで起こる誤嚥性肺炎は、年を重ねるとともに気をつけたい病気のひとつです。予防のためにも、音読でのどの筋肉を自然に鍛えましょう」(本書より)  本書では、歯切れのよい小説や漢詩はもちろん、『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』といった歌舞伎のセリフや、『人形の家』のような戯曲なども収録しています。ただ読むだけではなく、歌舞伎や演劇の舞台を鑑賞したり、たとえば『金色夜叉』の銅像がある熱海など、文学作品のゆかりの地を実際に訪れたりすれば、音読の楽しみも倍増すると提唱しています。登場人物に成り切ったつもりで、歯切れがよいセリフを楽しんだら、ぜひ作品の舞台にも足を運んでみてはいかがでしょうか?
    銀行にも"共感力"が必須? 金融庁担当記者が明かす「育てる金融」とは?
    銀行にも"共感力"が必須? 金融庁担当記者が明かす「育てる金融」とは? 2019年4月から、金融庁が金融機関の検査を行う際に使用する手引・通称「金融検査マニュアル」が廃止されました。そもそもこの検査マニュアルは、バブル崩壊による不良債権問題に対応するために、緊急避難的なルールとして1999年から導入したものでした。  実は、この廃止をいち早く予測していたのが、共同通信社経済部記者で、金融庁担当として森前長官に密着してきた橋本卓典さん。2016年刊行のシリーズ1冊目『捨てられる銀行』で「金融検査マニュアルは廃止」と予言していました。  マニュアル廃止を受けて、各金融機関ではビジネスモデルの大幅な転換を余儀なくされることになりますが、その打開策として、シリーズ最新作の本書『捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む』では、顧客に共感できることが事業価値に成り得ること、そしてこれからは顧客を「育てる金融」(本書より)にシフトチェンジすべきと提唱しています。  たとえば、電子地域通貨「さるぼぼコイン」で全国から注目を集めた、岐阜県高山市の飛騨信用組合。  信用組合としては初めて、クラウドファンディングをスタートしたことで有名な飛騨信組ですが、担当者は「事業者と同じ目線のクラウドファンディングでワクワクすることをやる。一緒にコーディネートしながら走ろうと思いました」(本書より)と述べ、目先のリスクよりも、長い目で捉えて顧客に共感し、そのニーズに寄り添っていたことが、結果的に銀行側にも大きなリターンをもたらしたと言います。  ほかにも本書で取り上げている成功モデルが、山形県鶴岡市の鶴岡信用金庫。同市には、慶應義塾大学先端生命科学研究所をはじめバイオベンチャーが集積する「サイエンスパーク」が存在しますが、実はこの発展には鶴岡信金も貢献しています。当時の地域創生部長が若手ベンチャー起業家に共鳴し、事業計画の段階から協力、地域全体を巻き込んだ関係性を構築したのです。鶴岡信金では現在も「鶴岡信用金庫若手経営者塾−マネジメントキャンパス−」を開設し、地銀の枠を超えて、地元の未来を育てようと試みています。  金融業界が大幅に変わろうとしている今、キーマンに丹念な取材を重ね、明快な筆致でまとめた本書は、金融マンに限らずビジネスパーソンなら必読の1冊と言えるでしょう。
    日本屈指の実力を誇る観光県は!? 旅の達人が教える最強観光案内
    日本屈指の実力を誇る観光県は!? 旅の達人が教える最強観光案内 皆さんの中には、国内旅行に出かける際、事前にガイドブックを用意するという人も多いでしょう。けれど、その中に載っている滝や武家屋敷や「〇〇ゆかりの地」といった定番の観光スポットをおとずれて、それなりに満足はしたものの、「うーん、なんか違うんだよなぁ......」なんて思った経験はないでしょうか?  そもそも、皆さんが観光に求めるものは何でしょうか? 人それぞれかとは思いますが、もし自分が求めるものはベタな定番スポットなどではなく、なるべく意外なもの、知らなかったもの、不思議なもの、とりわけすごいものといった"手ごたえの感じられる場所"を見ることだと考えるなら、本書『ニッポン47都道府県正直観光案内』はぜひとも読むべき一冊といえるでしょう。  著者の宮田珠己さんは「旅をしまくりたい」と会社を退職して約20年、その言葉通りに旅行をしまくり、紀行エッセイストとして活躍しているというユニークな人。そんな彼が正直にいいと思う場所だけを厳選し、47都道府県別に紹介しているのですから、これを読めばみすみすつまらない観光地で過ごすハメになることなんてありえないということになります!  たとえば富山県。北陸新幹線が開通し東京方面からのアクセスは便利になったものの、富山ではなくその先の金沢を旅行先にするという人は多いはず。......でも、ちょっと待って! 「観光についていえば、実は日本屈指の実力を誇るのが富山県」だと筆者は本書で主張します。  立山砂防工事専用軌道トロッコや富岩水上ラインの遊覧船、立山黒部アルペンルートのトロリーバスやロープウェイなど、とにかく富山は乗り物天国。その魅力をひとことで言い表すならば「スペクタル」なところだそう。土木観光ともいえる壮大な景観を堪能できるのが富山ということでしょうか。......そう聞くと、がぜん行きたくなってきた!  ほかにも大分県は謎だらけの大魔境、青森県は日本屈指のSF県、真にダサい東京都......とワードを聞くだけで気になるものばかり(すべて筆者個人の感想ですが)。本書には絶景、奇景、珍妙な観光スポットが目白押しです。  そして、ガイドブックとしてではないもうひとつの楽しみ方が、「自分の出身県を読んでみる」というもの。世間一般の通説とは異なる見方が書かれているので、とても興味深く読めるはず。たとえば私の出身の三重県は伊勢神宮や伊賀忍者、熊野古道などが定番の観光スポットとして知られていますが、筆者は志摩スペイン村や長島スパーランドを挙げ、「実はアトラクション県だった」としているのには納得、そして感心です。  これからの春から夏にかけては旅行のベストシーズン。次の観光の行き先を決める一冊として、または日本各地の面白さを再発見する一冊として、皆さんも本書を手にとってみてはいかがでしょうか。
    関西スパイスカレー人気店32軒店主が考えた全40種のとっておきレシピって?
    関西スパイスカレー人気店32軒店主が考えた全40種のとっておきレシピって? 欧風、インド風、タイ風などさまざまな種類のあるカレー。独自の発達を遂げてきた日本においてカレーはもはや国民食といっても過言ではありませんが、最近ひとつのブームになっているともいえるのが「スパイスカレー」と呼ばれる類です。  スパイスの強烈の複雑な香りや味わいを楽しめるカレーのことですが、とくに熱い盛り上がりを見せているのが大阪。自らスパイスの研究を始めて店舗を構える店主が多かったり、他ジャンルとさまざまなコラボレーションをしたりなど、自由かつ独自性のある活動をおこなうお店が数多くあるのだとか。  そんな関西の人気スパイスカレー店32軒の店主が考えたスパイスカレーと副菜、スパイス料理、合わせて全40種のレシピを掲載しているのが『関西のスパイスカレーのつくりかた』です。本書に登場する旧ヤム邸、アアベルカレー、Yatara spice、森林食堂などの名店、関西の方ならご存じの方も多いのではないでしょうか。  さて、スパイスカレーとひとことで言っても、掲載されているレシピは実にバラエティに富んでいます。  たとえばアアベルカレーの店主が教えてくれるのは、日本でもわりと馴染みのある「ココナッツチキンカレー」。鶏もも肉や玉ねぎ、トマト缶、ココナッツミルクなどはお決まりの材料といえますが、ここに何種類ものスパイスが加わるのがスパイスカレーのスパイスカレーたるゆえん! クミン、コリアンダー、ターメリック、レッドペッパー、ガラムマサラ、カルダモン、クローブ、ブラックペッパーなど10種類近くものスパイスを使うレシピとなっています。  ほかにもドライキーマカレーやマトンカレー、エビのグリーンカレーといった定番から、「白身魚とホウレン草の四川風スパイスカレー」や「あんかけ油味噌キーマ」「鰹かおる豆カレー」などの変わり種まで、各店主考案によるさまざまなスパイスカレーのレシピを収録。もちろん、そこに使われるスパイスも多種多彩で、どんな複雑な味わいになるのか挑戦してみたくなるものばかりです。  なんとも奥深いスパイスカレーの世界。本書の最初には「スパイス辞典」なるスパイスの紹介もありますので、まずはそれぞれの特徴や効能を知ることから親しんでみるのもよいかもしれません。そこから実際にお店に食べに行ってみたり、スパイスショップを訪れてみたり、自分で作ったり、お店のイベントやコラボにも足を運んでみたり。興味を持てば持つほど、その世界は広がっていきそうです。とりあえずまずは、本書を一読するところから始めてみてはいかがでしょうか。
    子宮系スピリチュアル、布ナプキン信仰... 女性を脅す"呪い"(?)の正体を検証
    子宮系スピリチュアル、布ナプキン信仰... 女性を脅す"呪い"(?)の正体を検証 「生理が重いのは使い捨てのナプキンで子宮を冷やしているから」「添加物を過剰摂取すると、将来生まれる子供のアトピーやアレルギーの原因になる」......こんな話、皆さんも一度は耳にしたことありませんか?   一見、女性の悩みにやさしく寄り添った体(てい)ではありますが、「女性はこういうケアをしないと大変なことになる!」という刷り込みは、女性をむしばむ「脅し」であり「呪い」にもなりえます。しかも「アドバイザー」「セラピスト」といった肩書で専門家風の人が言っていたりするとなおさら......。  本書『呪われ女子に、なっていませんか?』は、子宮系スピリチュアルや布ナプキン信仰、冷え取り依存、デトックスにオーガニックといった産業の実態を、ときに面白おかしく、ときに真面目に検証した一冊。女性産婦人科医の宋美玄先生などへの取材対談も各章末にコラムとして挿入されており、医学的見地からもきちんと指摘や説明がされています。  著者は長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこに潜む「トンデモ」の存在を実感してきたという山田ノジルさん。たとえば第1章では、「女の幸せは、子宮を大切にすることから」という思想を持つ"子宮系女子"の実態を明かしています。  「子宮を大切にする」とはどうにも曖昧な言葉ですが、これは定期的に婦人科検診を受けるなどではなく、「子宮に聞き取り調査をして本音に従って生きると、心身の不調が改善、引き寄せの法則的にご利益もガッポガポ、人付き合いも恋愛も仕事もすべてがうまくいき、幸せになれるというミラクルが起きる」ということなのだとか。    さらに"子宮教"とでもいうべきこの思想のもとに、子宮委員長を名乗る女性による高額な講習会がおこなわれたり、「子宮の温度が上がる」との効果を暗にうたうジェムリンガ(膣に入れて使うヒーリンググッズ)が販売されたりも。「『子宮にいいこと(散財や奔放な性生活も含む)をしないと女性としての機能が危険にさらされる』『性的に潤うのが女の幸せ』なる呪いで女を縛る、脅し商法にしかなりません」と筆者は自身の考えを述べています。  そもそも「私たちの子宮ってそんなに冷えてるのか!?」という疑問がわくわけですが、本書掲載のインタビューでは宋美玄先生は「子宮だけ冷えること自体があり得ません」「だいたい、ちょっとでも解剖学や生理学を勉強したら『血行が悪いから云々』なんて、アホらしくて言えないはずです」とキッパリ否定しています。  この子宮ケアにはじまり、布ナプキン、オーガニック、冷えとり靴下など、本書で紹介されているコンテンツは、そこにくっつけて提唱される"効果効能"にとらわれなければ、本来どれも女性たちの選択肢を増やしてくれるもののはず。「ほどほどの距離感とゆとりで嗜好品的にたしなめば、そこに『呪い』は生まれません」との筆者の言葉どおり、私たちは正しい情報を冷静に見極めていく必要があるかと思います。その目を養うためにも、まずは本書を一読してみてはいかがでしょうか。

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