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日本のママは手作りし過ぎ!? 幼保無償化の前に知っておきたい、スウェーデン式"手抜き"子育て
日本のママは手作りし過ぎ!? 幼保無償化の前に知っておきたい、スウェーデン式"手抜き"子育て かつて一大旋風を巻き起こした「保育園落ちた日本死ね」(2016年)から3年、国としても「待機児童ゼロ」へ取り組まざるを得なくなってきています。  とはいえ保育園に入れたとしても、そこで保護者を待ち受けるのが様々な試練。たとえば、入園準備では大量の食事エプロンや手拭きタオルへの名前付けに始まり、マジックでオムツに1枚1枚名前を書くこと、さらに使ったオムツを持って帰る「オムツ持ち帰り問題」、毎日出る大量の洗濯物...など。そして共働きでの家事負担も、ママの肩に重くのしかかりがちです。  今回ご紹介する書籍『スウェーデンの保育園には待機児童はいない――移住して分かった子育てに優しい社会の暮らし』の著者、久山葉子さんも、そんな疲弊したママの1人でした。  理想の子育て環境を求めて2010年、「待機児童がいない国」スウェーデンに移住後は、サダム・フセインの愛人の自伝『生き抜いた私 サダム・フセインに蹂躙され続けた30年間の告白』(主婦の友社刊)の翻訳を皮切りに、『悪意』(東京創元社刊)など手掛けた翻訳は多数。いまやスウェーデン・ミステリ翻訳家として活躍中の久山さんですが、初のエッセイとなる本書では、日本での保育園生活を以下のように振り返っています。  「しかし何よりも、"子供の持ち物を手作りするいいお母さん"を強要されるのが息苦しかった」(本書より)  「よい親とは、特に、よいお母さんとはこうあるべき――子供が保育園という社会にデビューするなり、世間からのプレッシャーにさらされることに気づいた」(本書より)  スウェーデンの保育園は、オムツはパック丸ごと1袋持っていけばよく、タオルはすべて使い捨てのペーパータオル、お昼寝布団のシーツは園で洗濯。さらに昼食だけでなく朝食も提供されるのが普通であり、保護者の労力も精神的負担も非常に少ないことに驚きます。  また、各家庭の家事育児についても「スウェーデンに来て、こんなに手を抜いてもいいものなのかと驚かされた」(本書より)と述べ、非常に"手抜き"している点に言及。たとえば、野菜を切るだけの「野菜スティック」、焼くだけの冷凍食品の多用など、パパママが夕食づくりにかける時間は平均20分。  「日本のパパママは、もっと食事作りに手を抜いていいと思うし、それでも世界規模で見れば毎日すごいご馳走を作っているのだと自分をほめてあげてほしい」(本書より)  夫婦でそれぞれ働いているのだから、そもそも料理に手間をかけることは難しいこと。合理的に考えて家事ハードルを下げなければ、共働き生活は成立しないと指摘する本書からは、スウェーデンでは、日本のようにママ個人の努力を"美徳"とみなす意識はなく、子供は国全体で育てるものであるというマインドが伝わってきます。日本ではいよいよ今年10月から幼児教育や保育園の無償化が始まりますが、保育園問題を考えるときに読んでおきたい、必読の1冊と言えるでしょう。
ドラマ化も決定! 歌姫・浜崎あゆみへの取材を基にした自伝的小説
ドラマ化も決定! 歌姫・浜崎あゆみへの取材を基にした自伝的小説 8月1日に発売されるやいなや、メディアでも大々的に取り上げられ、話題を呼んだ『M 愛すべき人がいて』。ノンフィクション作家の小松成美さんが歌手・浜崎あゆみさんへの取材をもとに、歌姫としてスターダムに駆け上る過程や運命的な男性との恋愛秘話を描いた一冊となっており、初週で3.8万部を売り上げるヒットを記録しています。  「事実に基づくフィクション」としながらも、最後のページでは浜崎あゆみさんによる「自分の身を滅ぼすほど、ひとりの男性を愛しました」との文章を掲載している本書。この"ひとりの男性"が現・エイベックス会長の松浦勝人氏であることは本書でも実名で明かされており、"一時代を築いた音楽プロデューサーと歌姫の恋愛"といった暴露本的な意味合いで、興味をそそられ購入した人も多そうです。  さて、内容についてですが、本書は「私は」という"あゆ(浜崎あゆみさん)"目線で情感たっぷりに書かれており、小説のような体裁で進んでいきます。展開もたいへんドラマチック。17歳のときに六本木のクラブ「ヴェルファーレ」のVIPルームで初めて松浦氏と出会い、「大丈夫、俺を信じろ」という松浦氏の言葉にしたがって歌手デビュー。ある日突然、「あゆ、ニューヨークへ行ってこい」と松浦氏に告げられ、単身でボイストレーニングに赴くことに。デビュー後、ハイスピードで変わっていく環境の中、松浦氏への恋心を打ち明ける"あゆ"。松浦氏はその思いに応え、"あゆ"の母親に「あゆみさんと付き合っています。真剣です」と交際宣言し、そのままふたりフェラーリに乗ってドライブに繰り出す......もう読んでいて、すべてがドラマの1シーンのように脳内に浮かび上がります!  ここでひとつ重要なポイントとしてあるのは、こうした松浦氏への思いがすべて彼女の楽曲の歌詞になっていたという点。松浦氏とのエピソードの合間合間に"あゆ"の歌詞が挟まれ、「この曲を作詞したときは、松浦氏とこういう状況だったのか」「こんな思いを抱えていたときに生まれた歌だったのか」と読者は知らされることとなります。  なお、本書は2020年春に連続ドラマ化との報道も。誰が"あゆ"を演じるのか、どんな演出がされるのかなど、今後もまだまだ注目が集まることとなりそうです。
100年経たずに人口半減!? 20年後の日本人はどこに暮らしているのか
100年経たずに人口半減!? 20年後の日本人はどこに暮らしているのか 現在、日本で急速に進んでいる少子高齢化。厚生労働省の人口動態統計(年間推計)によると、2018年の減少幅は44万8000人となり、ついに40万人台に突入したそうです。今後も減少幅は年を追うごとに拡大し、わずか40年後には現在より3割ほど少ない「7割国家」となり、100年も経たないうちに人口は半減すると予測されるといいます。  このようなスピードとボリュームで人口が減っていき、少子高齢化が進んだ結果、私たちの経済活動や国民生活はどうなってしまうのでしょうか?  この問題に2つのアプローチで挑んでいるのが本書『未来の地図帳』です。第1部では主な大都市を中心に人々が移動する現状を見ていき、第2部では、2015年を起点として2045年までの日本列島がどのように塗り替えられていくかを分析しています。  第1部は「現在の人口減少地図」ですが、例として首都である東京についての箇所を見てみましょう。現時点で、データで見ると東京の一極集中は依然というより、むしろ拡大し続けているといいます。東京圏の学校に進学し、出身地に戻らない若者が少なくないだけでなく、地方から東京圏に仕事を求めて出てくる女性の増大が一極集中の流れを押し上げているそう。東京一極集中は是正されたほうがよいものの、著者の河合雅司氏は「もはや一極集中を前提として人口減少時代を考えなければなるまい」として、「人口減少日本の中において、東京圏を全く違う歩みを辿る「外国」と位置づけ、非東京圏の各エリアは人口が減っても成り立つ仕組みへ変換することで、共存する道を探っていくほうが現実的」だと述べています。    ほかにも、「『西の都』の人口拡大を下支えしているのは、外国人住民」(大阪市)、「名古屋市最大の懸念材料は、リニア新幹線と広すぎる道路」(名古屋圏)、「周辺から人を集めきれず、"磁力"の弱い広島市」(中国)など、現在を生きている人々が日本の国土をどのように動いているのかを知れる興味深い見出しが並んでいます。  第2部「未来の日本ランキング」では、20年後の私たちがどこに暮らしているかが詳しく解説されています。東京は日本の中でも「外国」と位置づけるべきと先述がありましたが、今後、「東京圏という外国」は高齢化で苦しむこととなる模様。2025年には練馬・足立・葛飾・杉並・北区で4人に1人が高齢者となるなど、「ビジネス優先」「若者中心」できた23区内の多くの地区で「街の存り様」が大きく変わってくるようです。  また、地方に目をやると、政令指定都市は極端に明暗が分かれる、県庁所在地・地方都市は不便さの増すエリアが拡大する、などが予想されるそう。また、2045年には出産期の女性が一人になる村が出てくるほか、全国17の町村でも1ケタになるとの予定だったり、小樽、横手、河内長野では赤ちゃんが6割減になったりなど、少子化もますます深刻さを増していることが考えられます。  なんだかネガティブな見通しばかりで明るい未来が思い描けなくなってしまいそうですが、第3部では日本(人)がなすべきことが示されているのが救いです。このままでは少子高齢化と人口減少は進んでいくばかりですが、今からでも取り組み方次第で「未来」は書き換えが可能だと河合氏は本書で述べています。  今の日本の現状がどのようになっていて、今後どうなっていくのか。私たちが生き残るために取るべき対策は何なのか。その手引書となる本書を読んで、皆さんもぜひ考えてみてください。
ある日、恋人がストーカーに…“被害者”である著者が綴る衝撃の実話
ある日、恋人がストーカーに…“被害者”である著者が綴る衝撃の実話 後を絶たないストーカー被害。2018年の相談件数は2万1556件、前年より1523件減少したとはいえ、2万件を超えたのは6年連続でした。数字だけではあまり実感がわかない人も多いかもしれませんが、自分の身に降りかかることもあり得るのです。  本作『ストーカーとの七〇〇日戦争』は、著者の内澤旬子さん自身がストーカー被害に遭い、恐怖しながら理不尽さと戦ったノンフィクション。そのリアルさに読者は、ストーカー被害という身近でありながら遠い世界を追体験することになるでしょう。  内澤さんといえば、イラストルポライターとして『世界屠畜紀行』など世界の辺境を旅して日本人の知らない世界を伝えるイメージが強い作家。本作でも、ストーカーという想像を絶する世界を私たちに教えてくれます。  ストーカーに遭う発端となったのは、些細なことでした。きっかけは、8ヶ月交際した元恋人Aからの「家に遊びに行きたい」という申し出を断ったこと。16年4月初旬、Aは突如として内澤さんのストーカーに豹変したのです。  内澤さんは14年に東京から小豆島に移住し、海が見える家でヤギのカヨと一緒に平穏な生活を送っていました。マッチングサイトで、セックスでも不倫でも結婚目的でもない、誠意ある交際相手を求めていました。知り合ったAはその理想とはかけ離れたものでした。 「お前はなんでも自分が正しいと思っている」が口癖で、内澤さんの言うことを聞き入れようとしないA。嫌気が差して別れようとしていた矢先、それを察したかたのように、生活に支障が出るほど、電話が鳴りやまない日々が。ついに別れ話を切り出すも、納得のいかないAは、「全部自分が悪かった。お前の言う通りに直すからやり直そう」と交際継続の姿勢を崩しませんでした。しばらく、一進一退の攻防が続くことになります。  しびれを切らした内澤さんは、ついに「ストーカーに近い行為」「生活相談課に相談」などという言葉を投入します。しかし、このことがAを逆上させることになります。  Aは「俺をストーカー呼ばわりしたことは許せない」として、知り合いのライターにこれまでの交際を曝露してやると宣言。鬱病になったのも、内澤さんから暗い愚痴ばかり聞かされたからであり、「損害賠償で訴えてやる」とも脅されます。被害はさらに悪化の一途をたどっていきます。  メッセージは5分おきに届くようになり、「島に行ってめちゃくちゃにしてやる」と怒りを募らせるばかり。「怖がっていないように」と冷静に対処を重ねていくも、それが後に仇となることに。そしてついに、Aが島にやってきてしまい......。  実際の被害者の視点から恐怖や不安、緊迫する雰囲気など臨場感あふれる描写に圧巻。ドキュメンタリーとしての読みごたえはさることながら、法整備の不十分さ、刑期の軽さなど様々な問題点を浮かび上がらせます。  著者の事例からもわかるように、相手がふとしたことからストーカー化して、いつ被害に遭うかわかりません。本書はストーカー被害にあったらどこに相談にすればいいのか、警察はどこまで動いてくれるのかなども知ることできる解説書としても秀逸。すべての人に手に取ってほしい一冊といえそうです。
ザビエルはインスタグラマー、明智光秀は知恵袋に相談!? クスリとしながら学べる歴史本
ザビエルはインスタグラマー、明智光秀は知恵袋に相談!? クスリとしながら学べる歴史本 とつぜん突拍子もない話をしますが、もしも戦国時代にスマホがあったなら、あの武将やあの歴史的事件はいったいどんなふうになっていたでしょうか?  織田信長はLINEのグループトークを使って「桶狭間の戦い」を逆転勝利へ!? 武田信玄は上杉謙信から送られた塩のAmazonレビューを書く!? 「本能寺の変」を前に明智光秀はYahoo!知恵袋で相談する!? ......なーんてことも、もしかしたらあったりして。  そんなユニークな視点から激動の戦国時代を一冊にまとめたのが本書『インスタ映えする戦国時代』です。著者は、日本史に登場する偉人やできごとを「現代の身近なもの」に置き換える歴史パロディ画像が人気を呼び、ツイッターでのフォロワー数が10万人を超えるというスエヒロさん。思わずクスリと笑ってしまう彼のパロディ画像は、皆さんもツイッターで一度は目にしたことがあるかもしれません。  ここで本書の中身をいくつかご紹介しましょう。たとえば、宣教師フランシスコ・ザビエルのインスタ。もうこのワードを耳にしただけでも「どんな写真アップしてるの?」「ハッシュタグは!?」と興味津々になってしまいますが、投稿している写真は歴史の教科書にもよく出てくる自画像。それとともに「先日から日本に布教にきてます! 薩摩のほうにいるのですがめっちゃ暑い! 早く京に行きたい~」との自身の書き込みが。そして「#布教中」「#イエズス会」「#キリスト教広めたい!」といったハッシュタグがつけられています。はるか昔の歴史上の人物でしかなかったザビエルに、なんだかめちゃくちゃ親近感がわいてきた......!  もうひとつ。明智光秀が参加者同士で作るQ&Aサイト「Yahoo!知恵袋」に投稿したのは「【相談】上司の武将が横暴で悩んでいます...これはパワハラでしょうか?」という質問。本能寺の変の原因として「主君である織田信長に虐げられていたから」という説もありますが、現代に置き換えてみるとたしかに今で言うところの"パワハラ"にあたるかもしれません。そう考えると、これまた身近な問題に感じられてきますね。そして本書は細部まで凝っているところも特長。このネタであれば、「ベストアンサーに選ばれた回答」として「owari_monkey」さんの回答を掲載しているのですが、「たとえば、雪の日に上司のぞうりを懐で温めてみたりするとか、まずは『小さな信頼』を得るところから始めてみてはいかがでしょうか」とアドバイスしています。この名前、回答内容......これはまさしくあの歴史上の人物。歴史好きな人であればニヤリとしちゃいそうです。  本書について「戦国時代の出来事を身のまわりに置き換えて想像してみると、当時の人々や出来事、空気をよりリアルに感じることができるような気がしますし、それによって遠い時代の出来事をより鮮明に再体験できるような気がします」とスエヒロさん。これまでにない、今の時代ならではのニュータイプの歴史本と言えるのではないでしょうか。おふざけが多分に含まれているとはいえ、並びが史実順になっていて大きな流れをつかむことができたり、解説やコラムも併記されていたりするので、歴史を楽しみながら勉強したい学生の皆さんにもおすすめです。
「一生、取り立てる」 不良債権の取り立てに奮闘するトッカイ(特別回収部)の攻防
「一生、取り立てる」 不良債権の取り立てに奮闘するトッカイ(特別回収部)の攻防 今の若い世代は知らない人も多いであろう「住宅金融専門会社」、略して「住専」。1970年代に銀行などが設立した、個人向け住宅ローンをあつかったノンバンクのことです。当時、銀行は企業向け融資を優先しており、個人向けには熱心ではなかったため、大蔵省主導のもと銀行などの金融機関が共同出資してこうした専門会社が設立されることになったという背景があります。 しかしその後、バブル経済の崩壊により住専は巨額の不良債権を抱えることに。住専8社のうち7社が経営破綻し、6850億円もの公的資金が投入されることとなったのですが、これは世論の強烈な反発を招き、その是非をめぐっては国会を巻き込んでの政治問題へと発展しました。  本書は、この不良債権取り立てに奮闘する国策会社(=整理回収機構)で働く男たちの熱い戦いを描いた一冊です。「トッカイ(特別回収部)」と呼ばれた彼らは経営破綻した住専や銀行からさまざまな理由で選ばれ、借り手の側から今度は取り立てる側へと回り、大口で悪質な反社会的債権者を担当したといいます。バブル経済に踊った怪商に借金王、ヤクザ......こうした一筋縄では行かない相手との攻防や彼らをジワジワと追い詰めていく様子が、手に汗握る一大ドキュメントとして描かれています。  そう、本書はけっしてフィクションではなく、著者の清武英利氏が3年半もの間、関係者のところへ通って丹念に取材し書き上げたノンフィクション。清武氏は整理回収機構の元役員から「彼らの不良債権回収は将棋に似ている」という話を聞き、トッカイの人々を描きたいと強く願ったのだといいます。トッカイにいた多くは、勤めていた住専や金融機関がつぶれ、そこから大蔵官僚と政治家がしつらえた取り立ての盤上に将棋の駒のように打ち込まれた者たち。離脱が許されるわけではない、しかし展望を考えることもできない大混乱の現場の中で、「彼らが不安を抱えながらどう生きたか、どこへ去っていったのか、追ってみたいと私は思った」と清武氏はあとがきで書いています。  整理回収機構の前身となる住宅金融債権管理機構が設立されたのは1996年で、初代社長に就任したのは「平成の鬼平」と呼ばれた中坊公平元日弁連会長でしたが、「一生、取り立てる」という彼の遺訓は今もまだ生き続けているといいます。当時2000人超がいた組織は現在300数十人へと減ってはいるものの、今も回収機構は存在し、悪質債務者から取り立てをおこなっているそう。平成から令和へと移り、住管機構から数えると間もなく20年という節目を迎えようとする今でも、本書に登場する不動産会社元社長・西山正彦氏への回収は現在進行形で進められているというから驚かされます。  著者の清武氏は元読売新聞社の社会部記者であり、読売巨人軍の球団代表や編成本部長を務めたこともある人物。『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』や『しんがり 山一證券 最後の12人』などの著書でも知られる名うての作家の作品には、皆さんのページをめくる手もきっと止まらなくなることでしょう。

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ヤフー×本屋大賞「2019年ノンフィクション本大賞」、ノミネート作6作品が発表
ヤフー×本屋大賞「2019年ノンフィクション本大賞」、ノミネート作6作品が発表 ヤフー株式会社が運営する日本最大級のインターネットニュース配信サービス「Yahoo!ニュース」と、全国の書店員がお客さんに勧めたい本を投票して大賞を決定する「本屋大賞」がタッグを組んで昨年から始まった賞「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」。2019年の「ノンフィクション本大賞」ノミネート候補6作品が、8月1日、発表されました。
「幸せでも不倫する人」の意外な動機とは? 人気心理療法士が分析
「幸せでも不倫する人」の意外な動機とは? 人気心理療法士が分析 直近では原田龍二に後藤真希......。多発するスキャンダルによって、不倫の注目度がますます高まる中で、世間の目もこれまでよりも厳しくなっています。こうした不倫問題は、日本だけでなく万国共通の問題のようです。  本書『不倫と結婚』(晶文社)によれば、米国を例にとると、不倫には普遍的な定義がないなどの理由からデータ上では女性の26~70%、男性は33~75%と相当な幅があるとしながらも、不倫が増加しているのは紛れもない事実だとしています。  世界中で多くのカップルを見てきた心理療法士で著者のエスター・ペレル氏は、本書の中で「1990年以降、男性の不倫率は変わっていないのに、女性のそれは40%も増加している」と女性の不倫増加が背景にあると言及。「もはや浮気をするのに自宅を出る必要がない」と、普及したネットやアプリによる影響が大きいとも述べています。  そのように本書では、ペレル氏が数多くの不倫夫婦へのカウンセリングしてきた経験を踏まえながら、不倫をさまざまな角度から論じています。例えば、不倫には三つの構成要素があると分析。「秘密」「性の魔力」「精神的な関わり」のうち一つ、もしくはいくつかが含まれているといいます。  まず「秘密」は「不倫を不倫たらしめる筆頭の原則」と評します。秘密であることが性欲を掻き立てるものであるとしたうえで、"罪悪感と喜びのミックス"なんだとか。2番目の「性の魔力」は、セックス行為そのものよりも、「欲情されたい」「自分を特別な存在だと感じたい」などの欲望が充足されるという"魔力"が関係していると分析します。  最後は「精神的な関わり」。言うなれば、それは"情熱的な愛の開花"。「愛がどんなものか知っているつもりでした。でも、こんな気持ちは生まれて初めてなんです」というよくあるセリフがまさにそれだというのです。一方で、あの女性とは「肉体関係だけだ」と精神面での関わりを最小限に見せようとする言い訳も該当するとのこと。  ペレル氏は「人はなぜ不倫するのか?」という不倫問題の根幹にも触れています。中でも興味深いのは「幸せな人でも不倫する」ということ。これまで、不倫の動機はセックスレスや孤独感などの問題から、不倫で"結婚の機能不全"を補うという面で語られがちでした。  しかし、何年も何十年も貞節を守り、思いやりのある円熟した"完璧な夫婦"に見えたとしても、不倫に走ってしまうというケースが少なくありませんでした。ペレル氏は、カウンセリングを進めていくうちに、その動機が「新たな自分探し」だとわかったのです。  「繰り返し耳にするテーマが一つあった。それは新しい(または失われた)アイデンティティの探求、つまり自己発見という形の不倫だ。こういった探求者には、不倫が何らかの問題の症状というよりは、成長や変化を伴った発展的な体験だと描写されることが多い。(中略)求めているのは、新しい恋人よりむしろ新バージョンの自分だ」(本書より)  本書では、「私の人生は恵まれた人生」と自分で言えるほど完璧な女性が登場。50歳のいま、「私がデートするような相手じゃない」と揶揄する男性との不倫が辞められない......。彼女に一体何があったのか、結婚生活の問題ではなく彼女の人生の問題に迫っています。  豊富な事例を交えながら不倫に陥る動機やその代償など、不倫のすべてを知れる本書。反面教師として活用すれば、より良い結婚生活を送るためのバイブルとなりそうです。
1本5000円なのにバカ売れ!?「レンコン」農家のサクセスストーリー
1本5000円なのにバカ売れ!?「レンコン」農家のサクセスストーリー 1本5000円という超高級品ながら、生産が追い付かないほどの大人気。銀座、神楽坂、赤坂から、ニューヨーク、パリ、ドイツにいたるまで、国内外の超高級料理店の数々でも食材として使われ、2018年にはなんと約1億円もの売り上げを計上。そんな驚くべき、茨城県産の"レンコン"があるのをご存知でしょうか?  この"1本5000円のレンコン"を構想し、見事ビジネスとして成功を収めたのが、民俗学の研究者であると同時に、レンコン生産農業に従事する野口憲一さん。野口さんによる本書『1本5000円のレンコンがバカ売れする理由』では、レンコン農家に生まれた野口さんが、大学・大学院で学んだ民俗学や社会学の考え方を駆使しながら、現在の"バカ売れ"状態を成し遂げるにいたるまでの、レンコンを巡る紆余曲折の道のりが記されています。  1本5000円という高価格でありながら、なぜこれほどまでに大人気となったのか――。本書では、レンコン農家の抱える問題を前に、物の売れる理由を考え、それを愚直に追求していった野口さんの地道な努力が綴られています。  いまではどこのスーパーでも一年中見かけるレンコンですが、かつてレンコンは高級野菜の代名詞でした。しかし1970年にはじまった減反政策によって米の作付けが制限されると、それまで米を生産していた多くの稲作農家が、わずか20年間に一挙にレンコン生産農業へと舵を切ったため、レンコン生産面積が飛躍的に拡大。次第にレンコンは高級野菜から大衆化の道を辿っていったのだといいます。  しかし大衆化は、レンコン農家に苦難をもたらしました。供給量が需要を圧倒的に超えることにより商品価値は低下し、価格が暴落。収入を維持するため、耐病性に優れ、収穫量の多い品種を開発したことも、ますます大衆化に拍車をかけ、もはや他の生産地に台風が来て収穫ができなくなることを願うしかないという、仕事に対する矜持をも失ってしまう悪循環に陥ってしまったのです。 「農家が仕事に対するやり甲斐と矜持を取り戻し、利益も確保できるようにするにはどうしたらいいのか。民俗学者として、レンコン生産農家として、僕はそのような問題意識に苛まれていました」(本書より)  こうした状況を前に野口さんは、レンコンに"原価と製造コスト以外の何らかの価値"を付与し、レンコンをブランド化するべく格闘を開始。民俗学の知識を生かしながら、"伝統の創造"にひとつの可能性を見出します。恵方巻きや七草粥といった"伝統"が、ときに商業的な理由によって新たに創られてきたように、意図的に伝統を創ろうと考えたのです。  そこで曾祖父の代である大正年間には既にレンコンを生産していたことに着目し、"大正15年創業"という老舗感を押し出すことに。そのひとつとして、5000円という値段に見合い、なおかつ"大正15年創業"のイメージを具現化した"和モダン"をテーマとする、高級感溢れる豪華なオリジナル箱を作製します。  しかし、そんな自信作も、はじめはまったく売れなかったといいます。それでも野口さんは諦めませんでした。ここから本書では、コストばかりが嵩んで家族にも反対される苦境のなかでも、独自の営業を続け、人脈を徐々に築き、1本5000円のレンコンが次第に世に出回っていく様子が描かれていきますが、そのマーケティングやブランディングはもちろん、特筆すべきは、野口さんがバカ売れの最たる要因を"両親や先祖から引き継いだ信念や感性、そして身体性"に見出していること。それにより本書は、単なるマーケティングやブランディング論に留まらない、レンコン農家としての矜持も強く心に響いてくる一冊となっています。
数多くの凶悪事件を取材してきた著者がつづる、連続殺人犯10人の肉声
数多くの凶悪事件を取材してきた著者がつづる、連続殺人犯10人の肉声 ふだん仕事をしたり日常生活を送ったりしている中で、皆さんも一度や二度は自分の常識や道徳がまったく通じない相手と出会ったことがあるかと思います。同じ人間なのに、まるで宇宙人と話しているかのような心の通じなさには驚き、恐れや怒りを感じ、ときには虚無感すら感じることも......。  今回ご紹介する『連続殺人犯』は、数多くの殺人事件を取材してきた著者・小野一光さんが、拘置所の面会室で、現場で、震撼させられた連続殺人犯10人の声を綴ったという一冊。本書を読むと、ここに登場する人物たちに対しても同じような感覚を味わうことになるかもしれません。  なぜなら、誰しも一瞬の激情にかられて人を殺してしまう可能性はあるけれど、何度も、何人も殺害するという行為は生命を軽視していないとできないことであり、普通の人にとっては理解の範疇を超えるものだからです。小野さんは本書で、連続殺人は「ある種の条件が揃った人だけ」ができることだといい、彼らのことを「悪に選り分けられた者たち」という言葉で表しています。  本書で取り上げているのは、北村孝紘、松永太、畠山鈴香、角田美代子、筧千佐子といった連続殺人犯たち。今も人々の記憶に残る世間を震撼させた人物ばかりですが、全員ではないにしろ著者が実際に彼らに会い、会話をしているというのが、本書が他のルポと比べて稀有な点です。  たとえば、文庫版になるにあたってあらたに加筆されたのが近畿連続青酸死事件の筧千佐子の章ですが、彼女は見た目はごく普通のおばちゃん。小野さんは彼女の中にどんな殺意が眠っているのかが気にかかり面会を重ねますが、彼女との対話の多くが"暖簾に腕押し"で終わります。都合のよい質問には機嫌よく答え、ときには真実や本心の混じった言葉も漏らす。けれど、自分の不利な材料であると気づけば、記憶の減退を口にしたり平気で嘘をついたりして逃れる。その繰り返しの末に、22回目の面会で小野さんは拒絶される結果に。これは読んでいるほうにとっても何とも言えないもどかしさや不快感を感じさせられます。  ほかにも、人間の感情がないかのような者や、明るく晴れやかな表情で自身の無実を訴える者、捕まった後に自身の命を絶ってしまった者なども出てきます。もし、彼らがよんどころない事情や被害者に対する罪の意識などを少しでも語っているのなら、読者としては少しのカタルシスや安堵感を得ることができたかもしれません。しかし、どう考えても理解や共感を示せないケースが多すぎて途方に暮れてしまいます。  では同じような無力感を感じつつも、著者はなぜ連続殺人犯への取材をやめないのか。それは「次はどんな理解不能なことに出会うのだろうかという、人間の多様性への興味」があるからだといいます。皆さんの中にも同様に、自分の常識を超えた人間におののきつつもその一断面を見たい、知りたいという人がいるなら、きっと本書を興味深く感じられるのではないでしょうか。  最後に、陰惨な事件やモンスターのような殺人犯が登場する本書ですが、読後はけっして暗たんとするばかりではありません。それは、著者が遺族など被害者側にも可能なかぎり取材をしており、彼らへの配慮あるまなざしが感じられる点。そして一部ではありますが、出てくる人物の中にも犯行後に悔恨の情を持ちながら粛々と日々を過ごしている者がいること。これは本書における一縷の希望といってもよいかもしれません。
「芥川賞」全作品を会社を辞めて読破! 初回受賞作は? "あるある"は?
「芥川賞」全作品を会社を辞めて読破! 初回受賞作は? "あるある"は? 7月17日、第161回芥川賞・直木賞の選考会が都内で開かれ、今村夏子さん(39)の『むらさきのスカートの女』が芥川賞を受賞しました。年に2回、半年ごとに発表される芥川賞は直木賞とともに多くのメディアで取り上げられ、書店にも受賞作品がずらりと並びます。それだけに作品名や作家を知っている人も多いはずですが、さすがに過去180作品すべてを読んだという人はほとんどいないでしょう。  本書『芥川賞ぜんぶ読む』(宝島社)では、著者の菊池良が全作品を読破したうえで、あらすじや時代背景などが簡潔にまとめており、芥川賞の何たるかを知ることができます。  そもそも芥川賞とは、1935年に芥川龍之介の名を記念して文藝春秋社の社長・菊池寛が中短編の純文学の新人賞として創設。受賞者には、元都知事の石原慎太郎をはじめ、ミステリー作家として名高い松本清張やノーベル文学賞受賞作家の大江健三郎などそうそうたる名が連ねます。ひょっとしたら、あなたが好きな作家も受賞者かもしれません。  話題性でいえば2003年、綿矢りさが19歳で受賞したことで、丸山健二が持っていた23歳での最年少受賞記録が塗り替えられ、大きな話題になりました。さらに、西村賢太や羽田圭介などそのタレント性からテレビに出演する作家も多いことは多くが知るところでしょう。  そんな歴史と伝統が息づく芥川賞の記念すべき初回受賞作は、石川達三の『蒼氓(そうぼう)』。舞台は1930年代の日本、国策としてブラジル移民が奨励されていた時代。ブラジル移住希望者が、神戸の「国立海外移民収容所」に滞在し、船が出るまでの8日間が描かれます。当時、貧しい農民にとっては、ブランジルに行けば豊かになれると信じていたのです。『蒼氓』は3部構成で、第2部「南海航路」、第3部「声無き民」から成ります。  著者は「21世紀の読者には、作者名もタイトルもちょっとピンとこないかもしれない。しかし、当時これが評価されたということを、芥川賞は記録している。芥川賞の価値はそこにある。」と芥川賞を振り返る意義を力説します。  本書では作品紹介とともに芥川賞にまつわるコラムも掲載。著者が受賞作の傾向を解説しています。例外も存在しますが、そこには共通点が存在するといいます。(1)「時代は現代もしくは近現代である」(2)「現実世界が舞台になっている」(3)「主人公は作者と同じ国籍、民族的アイデンティティを有している」の3つです。  本書によると、アニメや漫画などで描かれることが多い主人公が別の世界に行ったり召喚されるような、いわゆる「異世界モノ」はナシ。また、その時代の享楽的な若者の姿を描いた「若者の享楽」系が、20~30年の間隔で登場するとなどテーマ傾向も分析しています。  約1年かけて受賞者169人分、180作品を読むために、会社を辞めた著者の渾身の力作は、読書家ならずとも一読の価値があるといえそうです。
実はこんなに! 知られざる日本のバリアフリー温泉旅行
実はこんなに! 知られざる日本のバリアフリー温泉旅行 皆さんは「バリアフリー」と聞いて、何を思い浮かべますか? 平らな廊下や入口のスロープといった設備、あるいは病院や介護施設などを想像する人も多いかもしれません。また、中には「白くて無機質で冷たい感じ」といった印象を抱いている人もいることでしょう。  「温泉や旅館におけるバリアフリーは、そのイメージをくつがえすような洗練されたものです」と語るのは、本書『さあ、バリアフリー温泉旅行に出かけよう!』の著者・山崎まゆみさんです。  2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、国交省では新築のホテルは、2019年9月から客室総数の1%のバリアフリー客室の整備を義務化するなど、ホテル・旅館のバリアフリー化は現在着々と進んでいます。そんな中、まだまだどんな基準で宿を選べばよいかや、現地での行動に不安を覚える本人や家族は多いことでしょう。そうした人々に向けて、全国のバリアフリー温泉を取材してきた温泉エッセイストの著者がそのノウハウを紹介しているのが本書です。  まずは、山崎さんが「これからバリアフリー温泉旅行に行ってみたい、高齢の家族を連れて行きたい」と思う人たちに伝えたい大事な心構えを本書からご紹介しましょう。それは、 (1)原動力は「行ってみたい」という気持ち (2)行って楽しむためには、詳細な施設情報が必要 (3)旅館スタッフとの信頼関係で特別な旅となる という3点。以上を念頭においたうえで、宿選びのポイントや必需品チェック、温泉入浴&入浴介助のやり方、おすすめの温泉&サービス、観光地のバリアフリー事情といった具体的な情報が紹介されていきます。  たとえば「バリアフリー温泉旅館のおもてなしのプロ」の一例として紹介されているのは、山梨県の河口湖温泉郷「富士レークホテル」。河口湖を一望できる貸し切り風呂にはリフト付きのお風呂があり、シャワーキャリーで浴場に入り、リフトに乗り換えれば簡単な動作でリフトに乗ったまま入浴できるのだとか。また、食事も「一口大」「刻み食」「ペースト食」などのバリエーションが用意されており、旅館で通常出される料理すべてに対応してくれるそう。  また、宿だけではなく、観光地にもバリアフリーの動きは広がっています。たとえば三重県の伊勢神宮では参拝専用の車いすを無料で貸し出ししたり、車いすに乗ったまま参拝したい人を手伝ってくれる「伊勢おもてなしヘルパー」というボランティア60名がいたり。バリアフリーの宿とこうした観光スポットを合わせるようにすれば、さらに充実した旅行を楽しめそうです。  高齢者や身体が不自由な人と旅行に行くというのは、大変な部分もたくさん出てくるのは想像に難くありません。けれど本書を読めば、漠然と温泉や旅をあきらめていた人々にも「これなら行けるかもしれない」という手がかりをきっともたらしてくれることでしょう。  それはひとえに、バリアフリー宿の取材を数多く重ね、そして、妹を亡くす前に温泉に連れて行ってあげられずに後悔したという経験を持つ著者だからこそできること。旅館や観光地の固有名詞が数多く出てきて非常に参考になるとともに、受け入れる側の旅館の主人や女将の言葉も大切にされており、書き手である著者の温かな視点が感じられます。この本自体が、「迷惑をかけてしまうかもしれないから」と遠慮を感じている人たちの温泉旅行に対するバリアをゆるめてくれる一冊となるのではないでしょうか。

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    ホスト界の帝王・ローランドの生き様が浮かび上がる!
    ホスト界の帝王・ローランドの生き様が浮かび上がる! 数多くのテレビ番組で密着取材を受け、ツイッターでの名言には常に注目が集まり、全国各地での展示会も大盛況。「現代ホスト界の帝王」としてその名を轟かせるローランド。彼の初となる著書が本書『俺か、俺以外か』です。  本書はローランドの生き様を浮かび上がらせる名言が満載。ストイックなプロ意識や唯一無二の生き方を、哲学、美、愛、仕事、人生といった多面的な切り口から紹介しています。  たとえばタイトルにもなっている「世の中には二種類の男しかいない。俺か、俺以外か」という名言。これは「哲学」の章に最初に登場します。「『○○系』やら『○○タイプ』なんてカテゴライズされて生きていくなんて、絶対に嫌だった」「歴史的ななにかを成し遂げるためには、ある程度エゴイスティックになる必要があるし、自分は特別であると信じる必要があると」「きつくても、つらくても、どんな犠牲を払ってでも、唯一無二の『俺』でいたい」としょっぱなからローランド節全開!  続いて、「年齢は、どれだけ生きたかは教えてくれても、どう生きたかは教えてくれないだろ?」という名言。これは「若いくせに......」と言ってきた先輩に対してローランドが返したひとことだとか。「年齢なんて、関係ないのだ。できる奴はできるし、できない奴はいつまで経ってもできない」「人間、どれだけ生きたかではない。どう生きたかだ」と本書には彼の考えが書かれています。これもまた、彼の哲学や人生観をうかがえる一節かもしれません。  そして、厳格なだけではなくユーモアやウィットに富んでいるのも彼の持ち味。たとえば、一大イベントの企画会議中に居眠りをしていることを注意されたら......皆さんならなんと答えますか? ローランド様の返しはこちら。「寝てません。まぶたの裏見てただけです」。謝るだけなら誰でもできるけれど、ここで最高に洗練されたボケをかますのがローランド流。これにはその場が爆笑の嵐になったそうで、「絶体絶命のピンチを救える力がユーモアにはある」と彼は記しています。皆さんもこんなシチュエーションに陥ったときはこのセリフ、使ってみてはいかがでしょうか(どんな空気になるかはわかりませんが......)!  ほかにも「ローランドが下を向くのは、出勤時に靴を履くときだけさ」「歴史なんて勉強するもんじゃないね、作るものだから」「ヴェルサイユ宮殿行ったら、観光じゃなくて内見だと思われないか心配だなぁ」「俺はローランドだからね。コンビニには手を染めないよ」などなどもう金言のオンパレード。今や幅広い層から支持を集めるローランドですが、そこには年齢や職業問わず共通して胸に響く言葉があるからだということが本書を読むとわかります。  というわけで、ファンブックとして読めるいっぽう、ビジネス・自己啓発書としても役に立つかもしれない本書。皆さんも読んで明日への活力にしてみては?
    失恋と過労で日本を飛び出したアラサー女性が世界一周ひとり旅の果てに見つけたものとは?
    失恋と過労で日本を飛び出したアラサー女性が世界一周ひとり旅の果てに見つけたものとは? 都会での暮らし、充実した仕事、相思相愛の彼氏......不満は何もないと思える生活をしていたら、ある日、過労から吐血。自身の価値観を見直すべく旅に出ることに決め、恋人と「世界一周の途中で合流しようね☆」と約束して愛と夢と希望で胸をふくらませていたところ、彼氏の浮気により失恋。  最初の10ページ程度のしょっぱなから、心身ともに瀕死の状態に陥ってしまったのが、当時アラサーだった坂田ミギーさん。失恋の傷が癒えぬまま、飛行機に乗り込み日本を出発するのですが、そこからの彼女の打開と気づきの旅路を描いた旅行記が本書『旅がなければ死んでいた』です。この旅を機に立ち上げたブログ「世界を旅するラブレター」がブログランキングで常に上位であるほど人気だったことから、今回、一冊のエッセイとして書籍化されることになったといいます。  本書の、というかミギーさんのすごいところは、いくら「今までにないような景色を見たい」といっても、ふつうであればけっして行かないような場所やしないようなことにも臆せずにトライしちゃう点。モンゴルでは現地民に乗馬を習って尻を裂き(尻の皮がずる剥けに)、トナカイ遊牧民に会いたいがゆえに山を越え、谷を越え。ギリシャのヌーディスト島では、自身も全裸でテント暮らし。チベットの聖地・カイラス山では難所を登って圧巻の光景に出会い、ケニアのナイロビではスラム街に暮らす地元のアーティスト集団と密造酒を飲みまくり。その後もナミビア、ブラジル、ペルー、南アフリカ、メキシコ、アメリカ......とミギーさんの旅は続きます。  とはいえ、本書は単なる秘境のガイド本というわけではなく(そうだとしてもたいへん貴重なものですが)、旅で出会った人や風景、できごとを通して起きた彼女の心境の変化や気づきというのも大きな読みどころです。  たとえば、モンゴルの遊牧民の住居「ウルツ」の中に意外なほどにモノがないのを見て、「わたしはなにか行動するたびにゴミを出している」「いっぱい作って、いっぱい売って、いっぱい買って、いっぱい捨てる。そのサイクルを繰り返してこそ、世界は成長するのだと声高に叫ばれる。成長の先は幸せか? 永久に成長し続けるなんて幻想じゃないか?」「だからこそ、この大渦に巻き込まれずに暮らしている人に会ってみたかった。これまで理解できなかった、理解しようとしてこなかった価値観に出合えば、自分の生きづらさを溶かすヒントがあるのではないかと思っていたからだ」と旅の目的を実感します。  また、アメリカのポートランドでは「ネイキッド・バイク・ライド」という自転車で街をパレードするイベントに全裸で参加。好き勝手な格好で自由に遊びまくる数千人の参加者たちを見て「借り物の眼差しで自分を測るのはもうやめよう。わたしを活かせるのは、わたししかいないのだから」と気づきます。  そんな中、日本を発ってからずっと、ミギーさんはある決め事を守っていました。旅行中、たびたび男性からオファーがあった彼女ですが、出発直前の失恋が尾を引いていたこともあり、純潔を守り、清く正しく生きていこうと心に誓っていたのです。「自分がすべての選択肢をもって選べる旅だからこそ、ちゃんと必要なものを選んで進みたかった。この先も、人生も」と本書には彼女の気持ちが書かれています。  しかし、世界一周の最後の街、アメリカのロサンゼルスである日本人男性と出会ったミギーさん。まさかここに来て、こんな展開が待っていたとは......! ある意味、失恋から始まった今回の旅路ですが、その果てに彼女は何を見つけることができたのでしょうか。そこで起きた奇跡とその結末についてはバラしてしまうと面白くないので、ぜひ本書を読んで自身で確かめてみてください!
    かつて夢と希望の地だった「団地」はいまや高齢者と外国人労働者ばかりに…!?
    かつて夢と希望の地だった「団地」はいまや高齢者と外国人労働者ばかりに…!? 「団地」という響きから皆さんは何を想像するでしょうか。日本に団地が誕生したのは、終戦から10年が経過した1955年に日本住宅公団が設立された翌年のこと。大阪府堺市の公団団地「金岡団地」が第一号だったそうです。入居者の多くは大阪市内へ通勤するサラリーマン家庭でしたが、銭湯通いが当たり前だった時代に風呂付き住宅であったり、食卓と寝室が分かれた洋風であったりなど、庶民にとっては「夢と希望の地」だったといいます。  それが今や、団地の居住者の大半を占めるのは高齢者と外国人労働者。「都会と至近距離にありながら、限界集落の雰囲気を感じさせる」と記すのは、本書『団地と移民』の著者である安田浩一さんです。  自身も子どものころに団地暮らしだった経験を持つ安田さんは1964年生まれ。『週刊宝石』『サンデー毎日』の記者を経て2001年、フリーに。外国人労働者がかかえるさまざまな問題を長きにわたって追いかける中で、多国籍化する団地の存在には当然のごとく注目してきたといいます。排外主義的なナショナリズムに世代間の軋轢、都市のスラム化、そして外国人居住者との共存共栄......。本書は安田さんがさまざまな団地や団地に暮らす(暮らした)人々を実際に取材し、その現状を浮き彫りにした渾身のルポタージュとなっています。  たとえば最後の第6章で取り上げられているのは、愛知県豊田市にある保見団地。ここは1975年に入居が始まった大型団地ですが、入管法改正によって日系ブラジル人の無期限就労が可能となった1990年から日系ブラジル人住民が一気に急増したという歴史があります。今では全住民8000人の約半数がブラジル人などの日系南米人で占められており、「小さなブラジル」といった様相を呈しているとか。その中で、この団地の住民である藤田パウロさんが20年間毎朝欠かさずおこなっているのが「ごみ置き場の掃除」です。完全なボランティアなのになぜおこなうのか? 「ごみステーションが汚れていると、日本人はすぐにブラジル人のせいにするでしょ? ブラジル人が汚していなくてもブラジル人のせいにされる。だからどんなときでもきれいにしておかないと」とパウロさんは語ります。これまでも子どもが「ガイジン」と学校でいじめを受けたり、些細なトラブルから保見団地抗争と呼ばれる大事件に発展したりと、90年以降の保見団地の歴史は日本人とブラジル人の対立の歴史でもあったといいます。これにくわえて、近年は日本人住民の高齢化が進み、現在は国籍や民族の壁というよりも世代間のギャップが存在し、日本人同士であっても相互理解が困難だという状況があるようです。  外国人排斥に、押し寄せる高齢化の波......そこにあるのは、団地の、ひいては現代の日本社会全体の縮図といってもよいかもしれません。ではこの先、将来を悲観するしかないのでしょうか? けっしてそんなことはなく、保見団地においても国籍の壁を超え、手を取り合って防犯パトロールや地域の祭りなどに協力し合う動きも出ています。考えようによっては、もしかしたら、「団地」こそが増え続ける移民の受け皿となり、若い外国人労働者たちと孤立する高齢者たちとのかけはし的存在として機能していく可能性も考えられます。現在、全国の団地で共生に向けたさまざまな取組みが行われている中で、団地の将来はどのようになっていくのか。本書を読んで想像してみるのも面白いかもしれません。
    鈴木涼美×峰なゆか、世の男たちに物申す!? J-WAVE番組『BKBK』公開収録トークイベント
    鈴木涼美×峰なゆか、世の男たちに物申す!? J-WAVE番組『BKBK』公開収録トークイベント 下北沢の「本屋B&B」で6月27日、トークイベント「クズ男がそんなことで許されると思うなよ~J-WAVE『BKBK』公開収録トークイベント」が開催されました。イベント名にある通り、J-WAVE、火曜深夜26時30分からの番組『BKBK』の公開収録も兼ねたトークイベントです。  同イベントは、6月5日に発売となった『女がそんなことで喜ぶと思うなよ~愚男愚女愛憎世間今昔絵巻』(集英社)の刊行記念として行われました。同書は、セクシー女優としても活躍した文筆家の鈴木涼美さんによる「現代男女世相論」。恋愛、結婚、不倫、ハラスメント、フェミニズムなどの切り口から、女性視点よるさまざまな「男女」が語られています。  イベント当日は、J-WAVE番組『BKBK』のナビゲーターを務める(下写真左から)原カントくんと大倉眞一郎さん、そして同書著者の鈴木涼美さん、同書イラストを手がけた峰なゆかさんが登壇。本書についてはもちろん、「男女」に関するさまざまなエピソードが惜しげも無く飛び交いました。
    「つーさん」ふたたび! 第1弾を超える笑いと感動のネコ漫画
    「つーさん」ふたたび! 第1弾を超える笑いと感動のネコ漫画 抜群の描写力で15万部を超えるベストセラーとなった『俺、つしま』。その第2弾となる『俺、つしま 2』が出版されました。ニヤリとさせられる猫との日常や、「あるある」とうなずかされる作風はより一層パワーアップしており、読者の期待を裏切らない猫愛あふれる一冊になっています。  主人公の「つしま(つーさん)」は、外でゴミをあさっていたところを「おじいちゃん(実は女性だが、つしまにはおじいさんに見える)」に保護されたキジトラ。つしまを中心に、「チャー」や「オサム」「ツキノワ」といった仲間たちが随所に登場し、日々の物語を紡いでいく......のは前巻と変わらず。ですが、本作ではあらたにつしまの外猫時代を描いたテルオ編が描かれているのが大きなポイントとなっています。  ある日、「しず子(現在はクラウディア)」という名前の猫と偶然再会したつしま。ここから、まだおじいさんに飼われる前、流れ者(流れ猫?)だったころの話が思い出されます。ふとしたきっかけで、しず子、そしてテルオという2匹と友達になったつしまは、一緒に魚屋で盗みを働くなどして暮らしていましたが、あるとき妊娠したしず子が去っていき、テルオも人間に捕まり離れ離れになってしまいます。ほどなくしてつしまは心優しい「おじいさん」と出会うわけですが、ではテルオはどうなってしまったのでしょうか。  本書のもう一つのポイントとなるのが、ツイッターを見ていた編集者が本を出版したいとのことで自宅にやってくるというパート。書籍化されるまでが紹介されますが、実はこれがラストにつながる重要な伏線となっています。本を買ったある男の子のおうちで、母親が「おもしろかった? 『俺、つしま』」と尋ねます。「うん、でもまだ最初のほうしか読んでない」と答える男の子。理由は「ボビーにとられちゃった」からだそう。ボビーというのはこの家の飼い猫のようですが、『俺、つしま』を抱きしめるほど気に入った様子。このボビーが誰なのか、なぜこの本を大事に抱えているのか......きっと最後に大きな感動が皆さんを待っていることでしょう。  ニヤリと笑って、爆笑して、ホロリと泣いて。心がじんわりあたたかくなる『俺、つしま 2』は前作同様、何度も読み返したくなる名作といってよいかもしれません。特典として巻末についてくる2種類のポストカードも可愛くて、ツイッターで作品を目にしたことのあるファンにとっても買う価値アリな一冊になっているかと思いますよ!
    「自己肯定感」は誰でもいつからでも高めることができる?
    「自己肯定感」は誰でもいつからでも高めることができる? 昔に比べるとがぜん注目度が高まっている「自己肯定感」という言葉。日本の子どもは他国に比べると自己を肯定的にとらえている人の割合が低いという調査結果を踏まえて、内閣府も自己肯定感を高める方針を打ち出したほどです。  子どものみならず大人の皆さんの中にも「どうすれば自己肯定感を高められるのだろう?」と悩んでいる方も多いかもしれません。けれど、ここで「自分はもともとネガティブで打たれ弱い性格だから仕方がない」とあきらめてしまうのはちょっと待って。本書の著者・中島輝さんによると、「自己肯定感は誰でもいつからでも高めることができる技術」だといいます。その技術を実践的に、そしてわかりやすく解説してくれているのが本書『自己肯定感の教科書』なのです。  そもそも自己肯定感とは何でしょうか。本書には「自分が自分であることに満足し、価値ある存在として受け入れられること」と書かれています。これは誰しも状況によって高まったり低まったりするものであり、筆者自身も自己肯定感が超低空飛行を続けている状態が長らく続いていたのだとか。そんななか、心理学や心理療法を独学で勉強し、自ら実践することを繰り返しながら、35歳のときに引きこもり状態を克服したとのこと。本書には自己肯定感が下がり始めるサインにすばやく確実に気づく方法や、落ち込み始めた気分を復活させるための対策など、心理学や脳科学のエビデンスや著者の実体験に基づいたトレーニングが惜しげもなく公開されています。  本書の読み方についてですが、まずは「自己肯定感ってどんなものか知りたい」と感じているなら、1章から読み進めてください。皆さんのメンタルの状態をチェックしつつ、自己肯定感についての解説をしっかりと受けることができます。続く2章では、自己肯定感がなぜ高くなったり低くなったりと変化するのか、その理由と原因になっている"6つの感"について説明されています。  もし今まさにつらい、うまくいかないと悩んでいる状態なら、第3章からページをめくるのがおすすめです。そこには今すぐ取り組むことのできる自己肯定感を高める手法が書かれています。  では具体的に第3章の「自己肯定感が一瞬でパッと高まる方法」を見てみると......。「ウィークデーに自己肯定感を高めるワーク」として、「ヤッター!」のポーズ、鏡の中の自分にポジティブな言葉をかける、セルフハグといった18の方法が、「ウィークエンドに自己肯定感を高めるワーク」として「5分だけ掃除をする」「30秒のマインドフルネス瞑想法」など5つの方法が紹介されています。また、心も体も元気になるという「自己肯定感体操」も最後に出てきます。たしかにどれもすぐに取り入れられて即効性を感じられそうなものばかりです。  ほかにも最終章の第4章では、問題を切り分けてスッキリさせるための「課題の分離シート」や自身のビジョンを明確にさせるための「イメトレ文章完成法」といったワーク的なものも。  とにかくこのように実践的な手法やトレーニングが満載の本書。繰り返しおこなうことで自己肯定感を高める技術を手に入れ、仕事、人間関係、恋愛・結婚、子育て......と人生のどんな場面でも「大丈夫」と思える自分を作っていくことができるようになるかもしれません。

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