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BOOKSTAND

山口県で起きた連続殺人放火事件。限界集落の闇にルポライターが単身で挑む!
山口県で起きた連続殺人放火事件。限界集落の闇にルポライターが単身で挑む! 2013年の夏に起きた「山口連続殺人放火事件」を皆さんは覚えているでしょうか? 山口県周南市のわずか12人が暮らす限界集落で、住民の一人のある男性が一夜にして5人を殺害し、被害者宅2軒に放火したという事件です。  それから3年が経ち、世間の人々の記憶から事件のことが消えかかっていたころ、ある雑誌から「この地区で戦中に夜這いの風習があったかどうか確かめてきてほしい」という依頼を受けたフリーライターの高橋ユキさん。この記事自体は最終的にはお蔵入りとなってしまうのですが、自分の足で村を歩き住民たちに取材をする中で、彼女はある不穏な噂を耳にすることとなります。  先述の連続殺人放火事件が起きた際、逮捕された保見光成の自宅のガラス窓に貼ってあった「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という川柳は大きな注目を集めました。マスメディアではこれを「放火をほのめかす貼り紙」として決意表明や犯行予告的な意味合いで取り上げていましたが、事実とは異なることを高橋さんは最初の取材時に知るのです。それは、この事件以前にも村では放火が幾度かあり、保見はそのことを川柳にしたのではないかということ。そして、以前の放火犯は保見ではないと村人たちは口をそろえて言うのです。  なんとも不気味で不可解な話に、高橋さんはこの村の正体を知るべく、独自でさらなる取材を続けることを決めます。  陸の孤島ともいうべき閉ざされた村、住民たちによるうわさ話、血なまぐさい事件の数々......まるでミステリー小説の筋書きを見ているようですが、これはフィクションではなくリアルなできごとだというのが一層、読み手の背中をゾクリとさせます。怖いのに、続きが気になってページをめくる手が止められない......!  事件の詳細を知らない人の中には、「妄想性障害を患っていた保見が、住民たちからうわさ話や嫌がらせをされていると勝手に思い込み、それがエスカレートして犯行に及んだ」と思っている人も多いかもしれません。しかし、それは保見の思い込みではなく、住民たちの間では名指しで口にしあうようなうわさ話が存在していたことは事実であり、あるシステムによってうわさ話は何倍にも増幅されて広まっていたことが本書には記されています。  保見は2019年7月に死刑判決が確定。しかも拘置所にいる間もどんどんと妄想性障害の症状を悪化させていたというだけに、もはや彼自身の口から事件の真相や村の正体について聞けることは永遠にないでしょう。だからこそ、皆さんには本書を読んで、サブタイトルにもなっている「うわさが5人を殺したのか?」という意味を考えていただきたいところです。きっと、これまでの報道などとはまた別の側面から、この事件の一端が見えてくることと思います。
クズ男、マゾ、ぼっち、不倫......ダメダメな歌ばかりを集めた「逆ベスト版・万葉集」
クズ男、マゾ、ぼっち、不倫......ダメダメな歌ばかりを集めた「逆ベスト版・万葉集」 いわゆる"残念な人"というのは皆さんの周りにも少なからずいるのではないでしょうか。恋愛で周りが完全に見えなくなっている人、思い込みがはなはだしい身勝手な人、イケメンなだけのクズ男、ちょっと面倒なメンヘラ女子......などなど。それ、令和の現代だけじゃないみたい!  万葉集というと優雅で美しい歌を集めた和歌集だという印象を持っている人もいるかと思いますが、そんなイメージを木っ端みじんにぶった斬ってくれるのが『ざんねんな万葉集』。万葉集には全4516首が収められていますが、その中にはざんねんな歌、微妙な歌、イタい歌というのもかなりの数、詠まれているのだとか。そうした歌たちにスポットライトを当てるべく、古文講師の岡本梨奈さんが執筆したのが本書なんです。  たとえば最初に登場するのはとんでもないサイテー男。「愛しと 我が思ふ妹は はやも死なぬか 生けりとも 我に寄るべしと 人の言はなくに」という歌の意味は、「美しいと私が思う愛しいあの娘は早く死なないかなあ。生きているとしても『私になびくだろう』と誰も言ってくれないので」。要するに、「付き合ってくれないなら死ね」......なんという自己チュー! こうしたタイプの人間って奈良時代にもいたのですね......。  しょっぱなからこんな刺激的な歌が紹介されている本書。続いては、女性が1000年以上の時を超えて共感してしまうこんな和歌はいかがでしょう? 「西の市に ただひとり出でて 目並べず 買ひてし絹の 商じこりかも」――この歌は「西の市にただ一人で出かけて見比べないで。買った絹が誤算だなあ」という意味。市場に出かけて、他の商品と見比べずに一目惚れでお買い上げ。しかし、帰宅して冷静に考えてみたら「なんでこんなの買っちゃったんだろう」となってしまった......これ、今の私たちにもあるあるな体験談ではないでしょうか。実はこの歌は「よく考えずに結婚したけれど、見掛け倒しのざんねんな男だったことを後悔した」という内容の比喩歌だと考えられているそう。見た目だけのイケメンを選ぶとあとあと後悔......これまた「あるある」ですね。  さらに歌の数々をさらに盛り上げてくれるのが、(ほぼ)全員美男美女に描かれたイラスト。BLを中心に活動しているマンガ家・イラストレーターの雪路凹子さんが担当しており、超美麗! ......なんだけど、表紙の男性は顔を足で踏まれて鼻血を出している(帯を取ると小指を立てている!)などとても面白いものになっています。  華やかで高尚に見える万葉集の世界にも、ちょっと違うほうに目を向ければこんな残念な人たちがいる......。人間の昔から変わらぬダメさは、見ていると憎めず、逆になんだかほっとしてしまうところも。逆ベスト版・万葉集ともいえる本書、ぜひ皆さんも「ふふっ」と笑いながら肩の力を抜いて読んでみてください。
テック界の「こんまり」と話題の著者による「デジタル片付け」の実践法とは
テック界の「こんまり」と話題の著者による「デジタル片付け」の実践法とは 他にやらなくてはいけないこと、やるべきことはいろいろあるのに、ついつい陥ってしまうスマートフォンの罠。InstagramやTwitterなどのSNSにソーシャルゲームやアプリ、終わりなきネットサーフィン......こうした誘惑を断ち切れないという人も多いのではないでしょうか?  一定期間スマホやパソコンなどのデジタル機器の使用を控える「デジタルデトックス」という言葉がありますが、もはやそうした一時しのぎでは不十分なのかもしれません。そこで、本書の著者カル・ニューポート氏が新しく掲げたのが「デジタル・ミニマリズム」という言葉です。  これは思想であり、哲学でもあります。デジタル・ミニマリズムについて著者は本書で、「自分が重きを置いていることがらにプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのツールの最適化を図り、オンラインで費やす時間をそれだけに集中して、ほかのものは惜しまず手放すようなテクノロジー利用の哲学」と定義しています。  デジタル・ミニマリズムにおいて大事なのは、一般的なツールをすべて排除するのではなく、"これを成し遂げるためにテクノロジーを利用するのは最善といえるだろうか"と自身に問いかけ、数々のサービスを慎重に取捨選択していくということ。そしてデジタル・ミニマリストになるためには、今までの習慣をちまちま変えていく方法よりも、短期間で一気に移行するほうが成果が長続きしやすいそうで、この短期決戦のプロセスを本書では「デジタル片付け」と呼んでいます。  では、デジタル片付けは具体的にどのようにおこなうのでしょうか? まずは30日というリセット期間を定め、かならずしも必要ではないテクノロジーの利用を休止する。そしてこの期間に楽しくてやりがいのある活動や行動を新しく探したり再発見したりする。休止期間が終わったら休止していたテクノロジーを再導入し、その一つひとつについて利用すべきか検討する、というプロセスをおこなうのだそう。  本書には、デジタル片付けをおこなう上での演習も示されています。たとえば「スマートフォンを置いて外に出よう」「"いいね"をしない」「週に何か一つ、修理するか作るかしてみよう」「スマホからソーシャルメディアを削除しよう」「フィーチャーフォンに戻そう」など。簡単なものからハードルの高いものまでありますが、ここまでしないとスマホ依存はもはや容易には防げないのかもしれません。  ちょうど年も変わり、新しい試みを考えている人も多い時期。デジタル・ミニマリズムの考えに共感した方は、本書を読んで実践してみるのもよいかもしれません。魅力的なデバイスだらけの世の中だからこそ、自身で取捨選択して人生の質を高めていくことの必要性が実感できるのではないでしょうか。
ナイツ・塙が漫才を徹底分析!M-1の必勝法とは?なぜあのコンビは面白い?
ナイツ・塙が漫才を徹底分析!M-1の必勝法とは?なぜあのコンビは面白い? 2019年もおおいに盛り上がりを見せた『M-1グランプリ』。ほぼ無名であったミルクボーイが王者となりましたが、この結果を導き出したのが総勢7名から成る審査員です。  2018年に続き、その中のひとりを務めたのが、お笑いコンビ「ナイツ」の塙 宣之さん。ナイツ自体も過去に何度かM-1には出場していますが、実はその舞台では一度も「ウケた」という感触を得たことがないといいます。そんな塙さんが「青春時代、恋焦がれたM-1に振られた男が腹いせで本を書いている」というような気持ちで取り組んだのが本書。ここにはM-1に対する並々ならぬ熱い思いが詰まっており、トークバラエティ番組『アメトーーク!』などでも垣間見える塙さんの分析力や観察眼とも相まって、珠玉の一冊に仕上がっています。  全部で90の漫才に関する質問と、それに対する塙さんの回答から成り立っている本書。「M-1は『しゃべくり漫才』が強いという印象があります」「塙さんの中の審査基準を教えてください」といったM-1に関するものから、「漫才で人間味を出すという言い方をしますが、どう出せばいいのですか?」「下ネタもそうですが毒も扱いが難しいですよね」など漫才の技術的な部分に関するもの、「爆笑問題がM-1に出ていたら......」「ジャルジャル『ぴんぽんぱん』はどう評価しましたか?」といった他の芸人に関するもの、そして「ヤホー漫才誕生前夜。聞いているだけで、ワクワクします」といったナイツの漫才に関するものまで。お笑い好きな人であれば、これらの質問を見ているだけでも興味をそそられ、塙さんの回答を知りたくなるのではないでしょうか?  そして、塙さんの分析がまた論理的で的確。たとえば、2018年のM-1の舞台で自分の容姿を卑下する漫才をおこなった「ギャロップ」を審査員の上沼恵美子さんがこき下ろしましたが、同じく自虐ネタを披露した「ミキ」は絶賛したことから、当時「えこひいきではないか」と一部で議論を呼んだことがありました。本書で塙さんは「上沼さんは、(ギャロップの)発想が安易だと言いたかったのだと思います」とし、「15年ぐらいのキャリアを積んだ芸人が陥りがちな罠」と指摘。知名度もそこそこありファンもいるので、ふだんはそのアドバンテージで笑ってもらえるが、M-1の舞台はそれでは通用しないというのです。いっぽうの「ミキ」については、たしかにネタはベタではあるとしながらも、彼らのほれぼれするような天然のしゃべくり漫才は、ネタどうこうがむなしくなってくるほどモンスター級に「突き抜けている」と評します。そしてもうひと組、2015年のM-1王者「トレンディエンジェル」もハゲネタをウリにしているコンビ。ですが、彼らの人間性やスキルのおかげでハゲネタが不思議と自虐になっていないと分析。同じ「ハゲ」や「モテない」ネタでもどこに評価の違いが出てくるのか、わかりやすく論じられていることと思います。  現役のプロ漫才師による、明快で論理的な漫才読本。ありそうでなかなか類のない稀有な一冊として、本書は今後もお笑い好きや漫才師志望の人たちの間では読み継がれていくことになるかもしれません。
ドラマ化も!群馬県高崎市の「絶滅の危機にある絶品メシ」を集めた書籍第2弾
ドラマ化も!群馬県高崎市の「絶滅の危機にある絶品メシ」を集めた書籍第2弾 以前、BOOKSTANDでもご紹介した『絶やすな! 絶品町グルメ 高崎絶メシリスト』。その続編となる第2弾が発売されました! タイトルには「特盛版」という言葉が追加され、第1弾をしのぐほどの濃ゆ~い"絶メシ"がズラリと並んでおります。  ここでちょっとおさらいすると、"絶メシ"とは「絶滅してしまうかもしれない、町の絶品メシ」のこと。「出すメニューは安くて美味い」「地元民に愛され続ける名物店主がいる」「お店は歴史を刻んできたことがわかる古びたたたずまい」といった特徴を備えており、その聖地と知られているのが群馬県高崎市。そんな高崎の選りすぐりの絶メシ51店舗を紹介しているのが本書になります。  ページをめくると目に入るのは、ラーメンやレバニラ、餃子といった大衆料理。そして年季が入った壁やテーブルに、カタブツそうな店主、そこに集う地元の人々。インスタ映え全盛の現代に、もしかしたらキラキラ感は一切ナシかもしれません。けれど、その渋くて、実直で、それでいてゆるやかさただよう空気感が、本書の、そして絶メシの大きな魅力であることは間違いありません。  たとえば、「絶メシリストNO.1」として最初に登場する「大将」。こちらは見るからに「大将」然とした店主が腕をふるう店。ニラともやし、レバーがたっぷり入った「レバニラ」は600円、常連客の定番だという餃子は300円という安さ。白い半袖シャツに首からタオルを引っかけた店主・秋山さんは「全然儲からないんだよなぁ。儲かりたくて作ってるわけじゃないからいいんだけどさ」なんて言いますが、このぶっきらぼうにぼやく感じがまたたまりません。もう大衆食堂の王道ド真ん中ともいうべきこちらのお店なら、至高の絶メシ体験ができるはず!  ほかにも、創業半世紀、75歳を超えた店主が今も一枚一枚手作業で包む餃子が名物の「大洋軒」、タレと店主のおばちゃんのトークが超絶に濃厚な焼きまんじゅうのお店「オリタ」、昭和の風情を残すたたずまいやメニューで喫茶店マニアをもうならせる純喫茶「コンパル」、近所の高崎経済大学生が通いつめるというボリューム抜群の学生食堂「からさき食堂」など、個性豊かなお店が勢ぞろいしています。  なお、「絶メシリスト」は2020年1月24日より、『絶メシロード』というタイトルで連続ドラマとして放送予定(テレビ東京系列)。映画『カメラを止めるな』で一躍有名になった濱津隆之さんを主演に、平日にくたびれたサラリーマンが絶メシを求めて車中泊で日本全国を巡るグルメドラマになるとのこと。書籍を超えてさらなる高まりを見せる「絶メシ」に今後も目が離せません!

この人と一緒に考える

著者は高校教師にしてYouTuber!日本史を一つの物語として読み解く新感覚の教科書
著者は高校教師にしてYouTuber!日本史を一つの物語として読み解く新感覚の教科書 世の中に参考書の類は数多くありますが、本書『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書』の特筆すべき点は、著者の山崎圭一氏が現役の公立高校の教師であるということ。さらに山崎氏は、日本史や世界史の社会科目の授業動画をYouTubeに公開しているYouTuberでもあるんです! 現在、登録者数6万人強を誇る動画チャンネル「Historia Mundi」の動画は、大学受験生や社会人、教育関係者などから「神授業」として好評を得ているといいます。  そんな山崎氏が執筆したシリーズ第1弾『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』は19万部を突破。満を持して出版した第2弾が、日本史バージョンとなる本書です。  巷には日本史を題材にした書籍やドラマ、映画、ゲームがあふれています。にもかかわらず、「日本史の授業が苦手だった」「戦国時代や幕末など特定の時代は好きだけど、日本史全般には詳しくない」という皆さんも少なくないはず。これはなぜなのでしょうか? 山崎さんは、高校の日本史の教科書は「じつは時代区分ごとに『政治』『社会』『経済』『文化』のコーナーに分かれ、"行きつ戻りつ"記述されて」おり、わかりにくい構造があると指摘します。この問題点を解消すべく、本書は 1、一般的な教科書とは違い、すべてを数珠つなぎにして「1つのストーリー」にしている 2、ストーリーの主役は「政権担当者(天皇・将軍・内閣総理大臣など)」 3、年号や年代を使わない という3点に基づき書かれているのが大きな特徴です。  日本史の教科書に年号が出てこないだなんて画期的! 「そんなのアリ!?」と驚く方もいるかもしれません。山崎氏が言いたいのは年号を覚えるのが無意味だということではなく、あくまでも「まずは全体の流れ、ストーリーを頭に入れる」のが大切だということ。本書は「第1章 縄文時代・弥生時代・古墳時代」「第2章 飛鳥時代・奈良時代」と章ごとに時代で分けられているのですが、まるでひとつの壮大な物語を読んでいるかのように、一冊を通して歴史の流れがスラスラと頭に入ってくることに驚かされます。  たとえば、日本史の中でも特に苦手な人も多いであろう近代史の章を見てみましょう。江戸幕府解体後の日本について、本書は「新政府は二手に分かれ、一方は欧米の視察と条約改正交渉、一方は諸制度の整備、というように分担した」と記述。欧米視察組は政府のエース級をそろえた「岩倉使節団」、留守政府のほうはどちらかといえば「居残り組」の性質があったと説明します。とてもわかりやすい表現ですし、このあと二派による分裂が起きるのも自然の流れに感じられますよね。このように、歴史の内容自体に興味をかき立てられるような書き方がされているのも本書の優れた点ではないでしょうか。また図解も豊富で、難しい制度や複雑な人間関係も理解しやすい仕組みになっています。  現在受験生の皆さんは、サブ的な教材として一読してみてはいかがでしょうか。すでに社会に出ている人にとっても、自分の国の歴史を知っていて損なことはなし。教科書として堅苦しく考えず、一冊の歴史小説を読むような気軽な気持ちで手にとってみることをおすすめします。
読めば絶対行きたくなる!ファミレスやファストフードのカラクリや楽しみ方って?
読めば絶対行きたくなる!ファミレスやファストフードのカラクリや楽しみ方って? ファミレスにファストフード、牛丼屋に立ち食いそば......日本には数多くの飲食チェーンがありますが、皆さんの中にはチェーン店というものに対してネガティブなイメージを抱いている人も少なくないかもしれません。 「チェーン店なんておいしくない」 「安くて便利でどこにでもあるから仕方なく使うだけ」 「世間の勝ち組はこんなところには来ないだろう」 などなど......。けれど、その思い込みがどれほどもったいないかは、本書を読めばわかることと思います。『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』は、かれこれ20年以上も飲食業界に身を置き、数々の飲食店を立ち上げてきたという稲田俊輔さんが、日本の飲食チェーンの裏側や徹底的に楽しむ方法について明かす一冊。著者によると、「飲食チェーンは宝の山」だというのです。  本書にはガスト、デニーズ、バーミヤン、マクドナルド、吉野家、餃子の王将などさまざまな飲食チェーンが登場しますが、中でもいちばんページが割かれているのが「サイゼリヤ」。そもそも本書は、著者がブログに投稿したサイゼリヤに関する記事が反響を呼んだことがきっかけで出版されたといいます。飲食のプロの心をも動かす秘密がサイゼリヤにはあり、世の中の多くの人たちもまたサイゼリヤに大きな関心を持っているといえるかもしれません。  サイゼリヤの魅力をひとことでいうと、筆者は「おいしすぎないおいしさ」だといいます。たとえばサイゼリヤのグランドメニューのパスタのページには、次のようなことが書かれてあるそう。 「具やソースが主張しすぎないシンプルな味付け。ちょうどいいボリューム感。他の料理と組合せたり、みんなで取り分けたり。気分でお選びいただけます」。  つまり、ひと口食べて「おいしい!」となるようなインパクトはお店側も目指していないことが明確に宣言されているわけです。  しかし一方で、無料で用意されているオリーブオイルと粉チーズを見てみると......。オリーブオイルについてはイタリア・ナポリの老舗メーカーと提携して徹底した品質管理の下に直輸入されており、クオリティは確か。そして粉チーズのグランモラビアは熟成感のある硬質チーズならではの深い旨味とフレッシュな風味があり、よくある工業生産的なチーズとはまったく別物なのだそう。これらをかけ放題というのは、間違いなく私たちの自由度や満足感を底上げしてくれます。  さらに、チェーン店であるのに本場思考という挑戦に挑んでいるのもサイゼリヤの特徴だとか。プロシュートやサラミ、サルシッチャといったイタリアの本場の味を高品質低価格で提供したり、濃厚なバッファローモッツァレラや日本では先鋭的な店に使われることが多いペコリーノチーズなどの貴重な品をさらりと取り入れたり。「本格志向の硬派な一面と圧倒的な親しみやすさが混然一体となり、ワン・アンド・オンリーな魅力を紡ぎ出している」というのが筆者のサイゼリヤ評です。  このように、普通であればなかなか知りえない飲食チェーンの本当のスゴさに気づかせてくれる本書。ほかにもカレーマニアがデニーズで注文するべきメニューや、マクドナルドで狙うべき時間帯、吉野家の牛丼を最もおいしく味わう方法など気になる話題が満載です。そして読むとお店に行きたくなること請け合い。皆さんの飲食チェーンを見る目がこれまでとはガラリと変わるかもしれない、そんな一冊といえるでしょう。
ビジネスパーソンにサウナがおすすめの理由は? サウナ歴20年以上の著者が解説
ビジネスパーソンにサウナがおすすめの理由は? サウナ歴20年以上の著者が解説 テレビドラマ『サ動』が放送されたり、サウナとコラボしたイベントが開催されたりなど、ここ数年、空前のサウナブームが起きています。その魅力がどこにあるのかを紐解くとともに、ビジネスパーソンに効果的なサウナの活用法を教えてくれるのが本書『人生を変えるサウナ術』です。 本書の帯にはYahoo!株式会社代表取締役社長CEOの川邊健太郎氏による「仕事で実績だしたければ、サウナに入れ!」との言葉が添えられていますが、ビジネスとサウナ、いったいどのような関係性があるのでしょうか?  そもそも、サウナの最大の魅力とは「ととのう」こと。「ととのう」とはひと言で言うと、「心と身体がリフレッシュされた、調和のとれた理想的な状態」(本書より)です。私たちの日常生活では仕事や人間関係でストレスが溜まっても、なかなか「ととのう」環境が手に入らないことも多いもの。こうした現代社会の中でサウナは、「ビジネスパーソンの心の拠り所、ストレスの多い世の中から精神と肉体を一時避難させ立て直すための、瞑想空間となる力を持っている」と本書には書かれています。  では、「ビジネスに効く、サウナの効用」としてはどのようなものがあるかですが、まずは肉体面での効用(フィジカル的効用)、精神面での効用(メンタル的効用)が挙げられています。ただこれは、皆さんもすぐに思いつくところではないでしょうか。面白いのは「ソーシャル的効用」として「心と身体の距離がゼロになる」「サードプレイスとしてのサウナ」「サウナでつながるコミュニティの輪」が挙げられているところ。たしかに「裸で入る密室の空間」という特徴を持つサウナでは、親密なコミュニケーションが生まれやすく、そこから互いに親しくなったりビジネスへと発展したりといったこともありうるのかもしれません。  ちなみに著者の本田直之さんと松尾大さんは、かれこれ20年近くにおよぶサウナ歴の持ち主。年間200ほどのサウナに入るという本田さんは、現在は数々のサウナイベントをプロデュースしており、年間400ほどのサウナに入るという松尾さんは"ととのえ親方"との愛称で呼ばれ、サウナ室のディレクションを手がけたりしているそう。人生の半分以上をサウナに入りながら、その動向を見守り続けてきたふたりが語るからこそ、本書の説得力が増すというのはおおいにあるかと思います。  このほか、サウナの入り方や海外のサウナ事情、おすすめのサウナスポットなどについてもくわしく触れられており、サウナ入門書としてビジネスパーソン以外も楽しめる本書。気持ち新たに臨みたい一年の始めに読むにはふさわしい一冊といえるかもしれません。
名画を見る際はどこに注目すればよい? 構図や線、色などから徹底解説!
名画を見る際はどこに注目すればよい? 構図や線、色などから徹底解説! 「絵は自分の好きなように自由に見ていい」。これはよく言われる言葉ではありますが、「なぜこの絵に惹きつけられるのだろう?」「この絵の良さはどこにあるのだろう?」といった疑問を、感覚だけでなくロジックでも説明できれば、名画をより深く楽しむことができると思いませんか?  そんな"ビジュアル・リテラシー"ともいえる「名画の構造の読み解き方」を教えてくれるのが、本書『絵を見る技術』です。 「絵の見方を知っている」とは「線・形・色などの造形の見るべきポイントを押さえ、その配置や構造を見ていること」だというのは、美術史研究家で本書の著者でもある秋田麻早子さん。では、そもそも絵を見る技術を習っていない素人と、美術教育を受けた人では何が決定的に違うのでしょうか。  著者いわく、それは「目の動かし方」なのだそう。絵の見方を知っている人は、画面を上下左右、端までまんべんなく目を動かし、背景との「関係性」まで意識して見ているのだとか。本書にはそうしたスキルを習得するための秘訣がたくさん出てきます。   たとえば、絵の主役ともいえる「フォーカルポイント」(焦点)の見つけ方。レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』という有名な絵がありますが、これはフォーカルポイントを明確に提示している代表格なのだそう。主役となるのはもちろん、中央に座り広い面積を占めているキリスト。後ろが窓になっていて、明暗のコントラストも他より高くなっています。さらに、背景の線がフォーカルポイントに集中している、画面内の他の人物たちが腕や手、視線をキリストに向けていたりすることなどが、さらに拍車をかけています。  このフォーカルポイントの見つけ方を知っていると、まずは絵のどこを見たらいいのかわかるようになり便利ですね。  そして、視線や色、バランスなどに加えてもう一つ重要になってくるのが「構図」です。絵における特定の配置は、慣用句のように決まった意味を持つこともあるため、基本をおさえておくと構図が絵の意味を教えてくれるようになるのだそう。たとえば、配置においてのガイドラインともいえる「マスター・パターン」がわかると、一見何気なく見える絵の中にもすーっと秩序が浮かび上がってくるようになります。  どのように見つけるかというと、まずは絵に十字線と対角線を引いてみる。レオナルド・ダ・ヴィンチの名画『モナ・リザ』を例にとると、左眼が中心線に乗っていて肩が真ん中あたりに来ます。そして、二本の対角線が作り出す三角形の上部に顔、下部に手が収まっていて安定感を感じます。バストアップの肖像画ではこのように目が中心線か対角線の上に置いてあることが多いそうで、「画面の十字線と対角線を、名画は無視できない存在として扱っている」という一つの秩序がわかるというわけです。  これらは本書に登場する「絵を見る技術」のごく一部。ほかにもさまざまな「名画を読み解くカギ」が紹介され、読むだけで絵に対するひととおりの観察眼を養うことができます。あとはより詳しく知りたい部分を自身で調べたり、実際に名画の数々を見て経験を増やしたりすることで、「自分だけの絵の見方」がさらに身についていくことでしょう。本書は、皆さんが名画を見る際のコンパスとなる一冊といえるかもしれません。
AIが苦手な読解力を身につけるためには? 体験版テストを収録した実践本
AIが苦手な読解力を身につけるためには? 体験版テストを収録した実践本 今年、「ビジネス書大賞2019」の大賞を受賞した『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』。日本の中高生は教科書の文章を正確に理解できないという問題に光を当て、28万部を超えるベストセラーとなりましたが、『AIに負けない子どもを育てる』はその続編となる一冊。では、子どもたちの読解力向上のためには何をすべきなのか、その対策や取り組みなどの実践法を公開したものとなっています。  著者は、国立情報学研究所教授で数学者の新井紀子さん。彼女は2011年から「ロボットは東大に入れるか」(通称:東ロボ)という人工知能のプロジェクトを率いているのですが、AIにとって苦手な読解力の分野が多くの中高生にとっても難しいという点に着目し、「意味を理解して読むことができない」という現象が想定外に広がっているという事実に大きな危機感を抱きます。そこで彼女の研究グループが2016年に考案したのが「RST」というリーディングスキルテスト。本書では、このRSTを体験版として紙上公開し、読解力を身につける方法を明らかにしていきます。  RSTは「答えが書いてあるのに解くのが難しい不思議なテスト」だそうですが、どんなテストなのか、実際にやってみないとわかりませんよね? たとえば、次の問題。 ・幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。 ・1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。  以上の2文は同じ意味でしょうか? 答えは「異なる」ですが、中学生の正答率は57%に留まったといいます。もしかしたら、大人の皆さんの中にも間違ってしまった人もけっこういるかもしれません。  「子どもの読解力を身につける」とひと口に言っても、こうしたスキルは一日ですぐに体得できるものではなく、「もはや親の自覚を促すことだけでは、この状況の改善を見込めないところまで来ている」というのが新井さんの持論。「すべての子どもに、ゼロ歳から十分に母語のシャワーを浴びる機会、インターネットから切り離されてリアルな外部の世界と接触する十分な機会、そして歩いたり、走ったり、同年代の子どもと喧嘩をしたり仲直りをしたりする機会が保証されるべき」だとし、こうした機会を持つことが「意味がわかって読める」子どもを育てる鍵になると書いています。  将来、AIに取って代わられないような仕事に就くためには、子どもに基礎的・汎用的読解力を身につけさせることがいかに大事であるか、皆さんも本書を読めばきっと腑に落ちるのではないでしょうか。 そして、読解力は大人にとっても必要不可欠なもの。仕事上のメール、マンションや保険の契約、商品説明書やマニュアルなど、日常生活のあらゆる場面でそのスキルが求められます。子どもだけでなく、大人も一緒に本書のRSTに挑戦し、自分にどのぐらいの読解力が備わっているか把握することをおすすめします!
ゆべし&すあまの兄妹とともに、おにぎりのルートをたどる大冒険へ!
ゆべし&すあまの兄妹とともに、おにぎりのルートをたどる大冒険へ! 私たちにとってなじみの深い食べ物である「おにぎり」。でも、もし子どもから「おにぎりはどこからきた?」と聞かれたならば、皆さんはどこまで答えられるでしょうか?  大人と子どもが一緒に読み進めながら考え、知識を深めていく"ビジネス絵本" というコンセプトで作られたのが、今回ご紹介する『おにぎりはどこからきた?』です。著者は作家だけでなく演出家やデザイナーとしても活動中のマルチクリエイター・小沼敏郎さん。親子間のコミュニケーションを増やすきっかけを作りたいとの想いから、この絵本の制作にいたったといいます。  本書の主人公となるのは「ゆべし」と「すあま」の兄妹。ある夜、すあまが「ねぇ、ママがにぎってくれるおにぎりのさぁ、おこめ、しゃけ、のり、しお、みんなどこからきたのかな?」とゆべしに尋ねたところ、おにぎりの妖精「ニギニギ」が突然ボンッと登場し、ふたりを大冒険の旅へといざないます。ふたりは「X たんけんたい」の「ゆべックス」と「すあックス」に変身し、おにぎりのルートをたどる探検へと出かけることに......!  こうして私たちもゆべし、すあまとともに、お米やおにぎりの具がどのようにして生産されているのか、そこにはどういった人々が携わっているのかなどをカラフルなイラストとともにダイジェストで見ていくこととなります。ふたりと同じように好奇心旺盛な子どもたちは、きっと興味津々に見入ってしまうことでしょう。  ユニークなのは、それぞれのシーンに詳しい説明がないところ。たとえば「こめどころ」というページには、それぞれの絵に「コンバイン」「いねかり」「せいまい」「トラックではこぶ」という文字があるだけ。読み手が子どもに解説したり、子どもと会話を交わしたりすることで、楽しみ方がさまざまに広がっていきそうです。  世の中のどんなモノも、コトも、いきなり目の前に現れるわけじゃない。それはおにぎりひとつをとってもそうで、世界は複雑に関係し合いながら繋がっている。本書からは、そうしたことが子どもにもわかりやすく伝わるのではないでしょうか。実際に私も6歳の息子と読んでみたところ、おにぎり好きの息子は単純に絵やストーリーに惹かれたようですが、私はというと「次はもっと細部までイラストに注目してみよう」とか「自分でも調べて子どもにもっと詳しく教えてあげよう」なんて気づきがありました。  なお、本書は「Where X from?」(Xはどこからきた?)というシンプルで深い質問を、読み進めながら親子で一緒に考え知識を深めていく「Xシリーズ」の第1弾となるそう。同様の絵本を今後も順次発売していくとのことですので、どうぞお楽しみに!

特集special feature

    古い労働観から抜け出せないミドル世代、必読! 真の働き方改革のヒントとは?
    古い労働観から抜け出せないミドル世代、必読! 真の働き方改革のヒントとは? 現在、我が国の重要政策の一つとして国を挙げての取組みがなされている「働き方改革」。月の時間外労働に上限が設けられるなど、今後はより生産性の高い働き方にシフトチェンジしていくことは明白です。  そんな中、経営コンサルタントであり本書の著者でもある新井健一氏が、これからの時代に必要だと提唱するのが「働かない技術」。これは業務削減・効率化のための考え方であり、「企業人」として生き抜いていくための心構えでもあるといいます。  この「働かない技術」が特に必要とされるのは、働き方改革のキーマンとなる30代後半~40代のミドル世代だそう。たとえば、おつきあい残業をなくせなかったり、長いだけの会議をダラダラと続けたり、目的よりも「長時間がんばること」に重きを置いていたり。こうしたムダな仕事をしているガラパゴス人材は、今後生き残っていくことは難しいと著者は言います。古い労働観を切り替えて、働き方改革の本質を見極めることが重要になってくるというわけです。  では、これまで染みついた労働観から脱却するためにはどうすればよいのでしょうか? たとえば、その改善努力の一つとして紹介されているのが「職場のムリ、ムダはどこにある? 業務効率改善機会」という図。この図では「多すぎる承認・決議」「多すぎる電話対応」「不明確な責任と権限の流れ」といった職場のムリ、ムダが挙げられているのですが、こうした問題には業務改善のフレームワーク「ECRS」に当てはめて考えてみることが薦められます。「ECRS」とは「Eliminate(排除):既存業務の何かを取り除くことはできないか?」「Combine(結合と分離):類似の業務を一つにまとめるか、異なる業務を分けられないか?」などといった手法のことだそう。  ほかにも財務の視点で職場を変えるための「バランス・スコア・カード」というツールや部下の管理・育成のために必要なスキルなど、具体的な方策も提案されています。  また、信条的な部分では、これからの時代に必要な労働観として、著者は「徳」を挙げています。「『徳』とは、今後ますます多様なメンバーが集う職場において、安易にマジョリティーに迎合することなく、かといって自分の考え方に固執することなく、全体にとっての『公正さ』を考えられたり、あの人にだったらついて行きたいと思わせる品性を養うこと」とのこと。効率性や生産性を重視する欧米的な考えとともに、日本人ならではの「徳」という価値観を持つことも大切であると考えさせられます。  これまでのキャリアの再点検をする意味でも、働き盛りのミドル世代は読んでみて損はないであろう本書。これからの時代に必須となる「働かない技術」をどう身に付ければよいか、そのヒントを皆さんも見つけてみてください。
    坂本弁護士一家殺害事件から30年 "Z世代"がカルトから身を守るために知っておきたいこと
    坂本弁護士一家殺害事件から30年 "Z世代"がカルトから身を守るために知っておきたいこと 1995(平成7)年に発生し、当時の日本社会を戦慄させた地下鉄サリン事件。死者13人、6000人以上の被害者を出し、今もなお後遺症に苦しむ人が存在します。その一方で、平成生まれの若い世代の中には、事件の詳細を知らない方も多いのではないでしょうか?  そんな若い世代に向けて、ジャーナリスト・江川紹子さんが、岩波ジュニア新書より刊行した近著が『「カルト」はすぐ隣に オウムに引き寄せられた若者たち』。本書では、オウム真理教による一連の事件を振り返るとともに、ごく普通の若者たちが、カルトに傾倒していった経緯を丹念に辿っています。  事件当時は、優秀な医師や科学者、有名大学の理系出身者など"エリート層"の若者が数多く入信していたことも世間の注目を集めました。教団側でも、広告塔に利用できそうな医師など高学歴な人材をターゲットに勧誘していましたが、20代で入信した実行犯の多くは、もともと反社会的な思想を持った人々ではなく、むしろ真面目で誠実な若者たちだったと言います。  例えば、地下鉄サリン事件や、その6年前の1989(平成元)年に起きた坂本弁護士一家殺害事件実行犯の1人である中川智正元死刑囚は以下のように述べ、法廷で号泣しました。 「私たちは、サリンを作ったりとか、サリンをばらまいたりとか、人の首を絞めて殺したりとか、そういうことのために出家したんじゃないんです」(本書より)  本書では、端本悟元死刑囚の「あの時、自分の感性を信じるべきだった」(本書より)という証言や、元信者の「自分のアタマで考えることを放棄してしまった」(本書より)という手記の言葉を踏まえ、信者自身も教団への疑念や違和感を持っていたにも関わらず、そこで踏み止まることができずに凶悪犯罪にまで突き進んでしまった状況を、以下のように述べています。 「人間の心は、特異な環境に置かれれば、残酷な行為もしてしまう弱さを持っているのでしょう。誠実で真面目な人柄や、頭のよさや知識の量、社会経験の豊富さで、その弱さを補えるとは限りません。自分にもそういう心の弱さがあると自覚して、このような特異な環境に陥らないように努めるしかないのかもしれません」(本書より)  また、近年はオウム真理教後継団体以外でも、自己啓発セミナーやスピリチュアル団体などカルト性が高い団体が存在することに言及。大学のサークル活動や、災害地域への募金活動・署名活動などのボランティア団体を装って近づいてくる事例もあると警鐘を鳴らしています。カルトに取り込まれてしまうことは、決して対岸の火事ではなく、誰しも可能性があることなのかもしれません。  いわゆる"Z世代"と呼ばれる若い世代はもとより、それより上の世代が読んでも充分に読み応えがある本書は、地下鉄サリン事件から24年が経過し、当時の記憶も薄れつつある今こそ手に取りたい1冊と言えるでしょう。
    葬儀業界の最先端を行く人々をインタビュー お葬式事情の"今"とは?
    葬儀業界の最先端を行く人々をインタビュー お葬式事情の"今"とは? お葬式というと、斎場や寺などで故人の親戚や友人、知人を集めて執り行うのが一般的。ですが、中にはこうした決まり切った形式から離れ、独特なスタイルで弔いの儀式をする人もいるようです。  たとえば、母親が生前に使っていたベッドで「仏壇」を手作りした人、ゆうパックで遺骨を引き取るお寺の住職、葬儀会館に「ドライブスルー」を導入した社長など......。本書に登場するのはそんなインディーズ精神にあふれた、葬儀業界の最先端を行く人や会社。著者の朝山実さんの取材、インタビューを通し、変わりゆくお葬式事情とその周辺の"今"が見えてくるノンフィクションとなっています。  本書からいくつかの事例を紹介すると、母のベッドで仏壇を作ったというのは、アート・ユニット"明和電機"で知られる土佐信道さん。お母様は2017年の大晦日に亡くなったそうですが、それまで寝ていたベッドは廃棄するというのを聞き、「あ。このベッドで仏壇つくれるかも」とピーンとひらめいたことから、葬儀の合間にアトリエで制作したといいます。前々から木工が好きな土佐さんにとっては、ベッドの木目を活かしてアーバンな家具調仏壇に作り変えるというのは造作なかったよう。仏壇内の天井部分にはIKEAで調達した小さなライトも取り付けたといいます。  ゆうパックで遺骨を引き取るという「送骨サービス」をおこなっているのは、埼玉県熊谷市にある曹洞宗・見性院です。希望者はインターネットなどから申し込み、お寺から送付されたダンボールの郵送キットに遺骨を収めてゆうパックで返送すると、永代供養をしてもらえるという仕組み。寺院の敷地内にある「永代供養墓」へ納骨された後は、管理料金などの類は一切ナシだそうです。これで3万円ポッキリというのは破格では......。このサービスは、収めるお墓がないと思案に暮れる人たちの文字通り"駆け込み寺"になっているようです。  そして著者の朝山さん自身もある種、葬儀業界の最先端に携わっているといえます。5年前に父親の葬儀の際に出会った霊柩車の運転手が葬儀会社を起業したのですが、朝山さんは父親の残した一軒家を葬儀会館として貸し出しているのです。昔ながらの屋敷のような純和風建築は一見すると葬儀会館には見えないそうですが、利用した人たちからは「落ち着く」と好評だといいます。  ほかにもさまざまな弔いの現場・現状が描かれている本書。最先端というのは何であれ、異端児でありパイオニアであるもので、中には本書に登場するような人たちに対しても、驚いたり眉をひそめたりといった反応を示す人もいるようです。けれど、形式通りの葬儀よりもむしろ強い思い入れをもって「弔い」というものに臨んでいるように感じられて、読んでいてとても興味を惹かれます。  そして、葬儀事情の今を垣間見ることで、これから先どうなっていくのかについても自然と思いが広がるはず。本書は自身の終活について考えるきっかけにもなる一冊と言えるかもしれません。
    発想支援クラウドサービス「AIブレストパーク」で創造力を強化せよ
    発想支援クラウドサービス「AIブレストパーク」で創造力を強化せよ 「いい企画を出せ」と言うのは簡単だけれど、実際に良いアイデアを次々と生み出すというのは至難の業。仕事の場において、「振り絞っても振り絞っても何も出てこない......」という"思いつかない地獄"に陥ったことがある人は少なくないはず。  そんな皆さんにおすすめしたいのが、人間の創造力を強化するために開発された発想支援クラウドサービス「AIブレストスパーク」。誰もが簡単にプロの発想法を再現できるというもので、これには放送作家の鈴木おさむさんも「企画力60点の人が、確実に90点以上になるAIマシン」と絶賛するほど。そして、この「AIブレストパーク」のフル活用法を解説した一冊が、本書『AIで楽しく発想強化する本 AIブレストスパーク フル活用のための55のコツ』となります。  とはいえ、「発想支援クラウドサービス」と聞いても、具体的にどのようなものなのかピンと来ない人も多いことでしょう。これは総合ITサービス企業であるTIS株式会社が広告会社・博報堂と共同開発したシステムで、これまで博報堂のクリエイターたちが長年の経験から磨き上げてきたブレスト技術や発想ノウハウをきめ細かく機能化したAIマシンなんです。  ここで本書から使い方を見てみましょう。まずネットで「AIブレストスパーク」にログイン。たとえば「ビール」についてのアイデアが欲しい場合は、検索バーに「ビール」と入力すると、「ブレスト画面」が出てきます。画面左半分を占める「ひらめきマップ」では、ビールを中心とした関連語を大量に表示。「メニュー」「グラスの選び方」「クラフトビール」といったように、ビールを取り巻く市場や生活者に関する情報、ヒントを俯瞰できます。最初に脳内を気になるコトバや関連したコトバで充満させる......これはひらめきの大きな土台となりそうです。  また、画面右半分の「ブレストアイデア」では意外なコトバ同士を接着。「ワード生成」では「活性化ビール」「会いに行けるビール」「携帯ビール」「定額ビール」など、「フレーズ生成」では「ビールは、アーティストです」「彼氏はビールだ」「ビールにぶっちゃけトーク?」など、新しいワードとフレーズを組み合わせて100個ずつ表示してくれるなどの機能となっています。  そして、自分の頭だけで考えるのに限界を感じたら......「他人アタマで考える」なんて機能も! これは「作詞家アタマ」や「ビジネスアタマ」「主婦アタマ」といった"他人の頭"の中にある情報やボキャブラリーからひらめきマップを描いてくれるのだとか。たとえば「作詞家アタマ」を選んでみると、J-POPやアニソン、演歌などの膨大な歌詞から関連語を表示してくれるため、マップに出てくるコトバやフレーズも「ビール―飲む―底―ごめん」「ビール―飲む―美味しさ―あわの向こう」といった具合に。これは今後さらに進化していく予定の機能だそうで、学者や芸人、こども、オタク......など、どんなジャンルの"他人アタマ"が増えていくか乞うご期待といったところです。  「これからは、AIのブーストつきで考える時代」というのは本書の帯にある言葉。AIマシンの助けを借りてみたら、これまでの自分の常識や限界をサクッと飛び越えられる......なんてこともありえるかも!? 「AIブレストスパーク」の利用には月々の料金がかかりますが、無料体験版も用意されているので、興味を持った方はまずこちらで試してみてはいかがでしょうか。その際には、ぜひ本書をガイドブックとしてそばに置いてくださいね。
    あの「絶メシ」がドラマ化! 主演は「カメ止め」濱津隆之 全国の"絶品メシ"が続々登場
    あの「絶メシ」がドラマ化! 主演は「カメ止め」濱津隆之 全国の"絶品メシ"が続々登場 以前、BOOKSTANDでも書籍化の紹介をした、群馬県高崎市の地域再生プロジェクト「絶メシリスト」が、テレビ東京にて地上波ドラマ化されることが決定しました。ドラマタイトルは『絶メシロード』。2020年1月24日(金)より、毎週金曜日深夜0時52分から、テレビ東京ほか(ドラマ25枠)で放送されます。

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