インタビュアーである著者は、自身の幼少期からの経験をもとに、他者を抑圧する「男性性」はどのように生まれ、どうすればそこから脱却することができるのかを考察する。

「男性性」はもともと存在するものではなく、社会による刷り込みから生まれるものだという。「男の子なら活発に」といった規範や、思春期にこうじる女性への思いやりを欠いた猥談、戦時中の軍隊に見られる「やればできる」といった精神主義などから次第に男性の中に醸成され、現在も性暴力や女性蔑視の温床になっていることが明らかにされていく。

「男性性」は女性の中にもあり、「女性性」も同様に男性の中にもある。誰もが抱えるものでありつつ、社会通念に依拠したものである必要はなく、自分との対話によって新しく得るべきものだと著者は主張する。本書の提言はすべての人に開かれている。(若林 良)

週刊朝日  2021年4月2日号