米国シカゴ大学で中世史を学んだ女性が、サンフランシスコの葬儀社に就職し「火葬技師」として働いた1年間の体験記だ。
 土葬が基本の米国で、近年増加傾向にあるとはいえ火葬はマイノリティ。「なんでまた大学を出て。それも火葬場に」と同僚からも首を傾げられる。
「死」に強い関心をもった8歳の時の体験をはじめ、小説を読むようなタッチで日々の出来事が綴られる。一人きりの職場に慣れたある日、赤いワンピースで出勤するや「そこのあなた」と遺族から叱責される。火葬室に遺族が集うのが稀だったためだ。「遺灰の配送」も珍しくはなく、難癖をつけて料金を払うまいとする輩もいる。異文化の集積する多民族国家。逸話の一つ一つから、弔いの儀式や捉え方はこんなにも異なるものかと驚かされる。

週刊朝日 2016年11月25日号