この夏ぐらいから何度かテレビで見かけた、男前なゴリラたち。灰褐色の体毛におおわれた筋肉は岩のように盛りあがり、口もとは決して緩まず、眼窩の底からじっとこちらを見つめる黒目は澄んでいる……屈強さを抑えて静かにたたずむその顔は、たしかに観る者をひきつける。
 そんなゴリラたちをさとうあきらが撮り下ろした写真集『イケメンゴリラ』。日本の動物園にいるオスゴリラの中でカバーを飾るのは、名古屋市東山動植物園のシャバーニだ。黒目の脇にちらっとのぞく白目の効果か、どんと構えながらも何かを語りかけてくるような表情をしている。世代をこえた多くの女性たちがこの眼力に魅了され、休日となれば、シャバーニの柵の前にはいつも人だかりができるらしい。
 このあたりの事情は発行元もよくわかっていて、全国のゴリラ好きの女子によって構成されるという「男前ゴリラ愛好会」が編集を担当。女性の視座に立ったこだわりは細部にわたり、それぞれの写真には、誰もがときめきそうな古今東西の名言が添えられている。何より、女性が片手で持っても負担のない大きさで編まれている点が、この写真集の特長だろう。これならば動物園に持参でき、実物のゴリラの前でプロフィールを確認できる。
 他にも、後半にあるゴリラに関する基礎知識が役にたつ。女性研究者による野生オスゴリラの実態紹介があり、そこを読めば、日本にいるゴリラはすべてニシローランドゴリラという意外な事実や、ゴリラならではのシルバーバックやドラミングの意味を理解できる。つまり、この写真集は、小粒ながら実によくできた「オスゴリラ入門書」でもあるのだ。
 そして巻末に掲載された、霊長類学者で京都大学総長でもある山極寿一の「動物園は野生の窓」を読んだ私は、どうしてもイケメンゴリラに会いたくなり、先日、ひさしぶりに上野動物園へ行ってしまったのだった。

週刊朝日 2015年11月6日号