日本では365日、どこかで祭りがあるという。カメラマンの著者は、北海道から沖縄まで全国各地をめぐり、およそ百の祭りを写真に収め、起源や撮影メモなど文章を添えた。紹介されるのは、伝承文化による民俗芸能ばかり。観光的な派手さはないが、勇壮で優美な祭りを足掛け9年、山村の集落まで訪ね歩いた。
 表紙カバーにあるのは、和歌山県日高郡日高川町・丹生神社の笑い祭だ。これは、神輿に担がれ、道化のような化粧をした氏子たちが「笑え、笑え」と参詣人に強要する奇祭である。むかし女性の神様が、出雲での神々の集いに寝過ごしてふさぎこんでしまったのを慰めようとして始まった。笑いで邪気を祓う意味合いもある。祭りの興奮が本書に渦巻く。
 青森県の下北の能舞や、岩手県花巻市の早池峰神楽、兵庫県姫路市の灘のけんか祭りから、長崎県五島市の、祭りの由来も語源も不明の奇祭中の奇祭「ヘトマト」まで。人々を共同体たらしめる祭りの多彩さに圧倒される。頁が180度開く、糸かがり製本もなつかしさを醸し出している。

週刊朝日 2014年4月18日号