「慰安婦は必要だった」発言がたたって、日本中、いや世界中を敵に回してしまった日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長。自民党にもそっぽを向かれ、選挙協力を約束したみんなの党にも引導を渡されて、もっか四面楚歌の状態である。
『どうして君は友だちがいないのか』はそんな橋下市長のタレント弁護士時代の本である。意味深なタイトルに見えるけれど、発行は大阪府知事選に出馬する前の2007年7月。「14歳の世渡り術」という中学生向けシリーズの一冊で、テーマは友情。ただしもちろん、並の「友情は大切だ」論ではない。
 なにせ冒頭から彼はいいきるのである。〈友だちなんて、そもそもが役に立たない存在です〉。友だちの本質とは〈・メリットなし/・面倒ばかり/・いっしょにいてもなにか与えてくれるわけではない〉。
 ただ、そうはいっても人間関係の中で人は生きなくてはならない。そのための世渡り術として、著者が推奨するのはジャイアンについていくスネ夫的な生き方だ。〈君を取り巻いている人間関係をしっかり、意識的に観察して、強い存在を見つける。影響力のあるグループなり人物を探す。これがまず第一歩です〉
 石原慎太郎共同代表と組んだのももしかしてそれだったのか。
 理想論をかざしても子どもは追いつめられるだけ。バーを低く設定しておけば気が楽になるという親心から出発した本ながら、提言の数々をいま読むと妙に納得させられる。
 トップはどうせ入れ替わる。〈リーダー格の人間が、三年間君臨し続けたという例はありません〉。どんなに仲良しの友だちでもいつかは「さようなら」のときがくる。そんなときは放っておきなさい。〈こじれた関係を元に戻そうとして、あれこれいじってもしょせんムダ〉
 これも建前を廃して本音で生きる橋下流? かけ引きこそが居場所をつくるというクールでドライな人間関係論。孤立してもへこたれないタフな精神を培うには有効かもね。

週刊朝日 2013年6月7日号