書評『上海、かたつむりの家』六六(リュウリュウ)著/青樹明子訳 |AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

上海、かたつむりの家 六六(リュウリュウ)著/青樹明子訳

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トミヤマユキコ#中国#話題の新刊

上海、かたつむりの家

六六(リュウリュウ)著/青樹明子訳

978-4833420211
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 上海市は、中国の総面積の1%にも満たない小さな行政区だが、この街にうごめく約2500万人が、国の経済発展を強力に牽引している。
 本書の登場人物たちもまた、上海の経済発展、経済格差と無縁ではいられない。10平米の超狭小アパートに夫と暮らす海萍(ハイピン)は、田舎の母に預けている我が子に他人と認識される一歩手前のところまで来て、慌てて不動産購入を決意する。親子愛を取り戻すためには「かたつむりの家」を出なくてはならないが、上昇し続ける不動産価格のせいで、頭金を貯めることさえ出来そうにない……。
 妹への借金申し込みをきっかけに動き始めた物語が、国家レベルの汚職にまで繋がってゆく構成は、見事と言うほかなく、息もつかせぬクライマックスは、上質のエンターテインメント。金に殺される者と生かされる者、両者の分かれ目は、まさに紙一重だ。庶民だろうと官僚だろうと、堕ちる時は堕ちるという真理の中に、リアルな中国の「今」が匂い立ち、背筋に冷たいものが走る。

週刊朝日 2012年11月9日号


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