トライアスロンでスポーツ写真の新しい表現を開拓したい 写真家・泉悟朗 (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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トライアスロンでスポーツ写真の新しい表現を開拓したい 写真家・泉悟朗


水は大きな抵抗となり、アスリートに重くのしかかる。水といかに融合するかで勝負の明暗が分かれてしまう■キヤノンEOS-1DX MarkII・EF100-400mm f4.5-5.6L IS II USM・ISO160・絞りf5.6・1/1250秒(撮影:泉悟朗)

水は大きな抵抗となり、アスリートに重くのしかかる。水といかに融合するかで勝負の明暗が分かれてしまう■キヤノンEOS-1DX MarkII・EF100-400mm f4.5-5.6L IS II USM・ISO160・絞りf5.6・1/1250秒(撮影:泉悟朗)

積極的に移動して、足でかせぐ

 当然のことながらロケハンは必須となる。試合前日、もしくは前々日に会場に到着したら、競技とほぼ同じ時間帯にコースを歩く。

「ゴール地点から逆方向に歩いて行くんです。そうすることによって、選手の背後の風景、光の差し方、影の出具合を想像できる。それを念入りに、確実にやります。それがかなり作品の完成度に影響しますから。『ここがつかみどころだな』という撮影ポイントを把握したら、当日はそこを重点的にまわる。「狭い面積なので歩きでも十分に3種目をカバーできます」。

 コースのレイアウトにもよるが、バリエーションが撮れそうな場合は「積極的に移動して、足でかせぐ」。

 そこで重要となるのが撮影機材の軽量化だ。ボディーは2台(ともにキヤノンEOS-1DX MarkII)。交換レンズは4本。その内訳は軽量な望遠ズームのEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM(常にボディーに装着)、広角ズームのEF8-15mm F4L フィッシュアイ USMと、EF16-35mm F2.8L III USM(常にどちらかを装着)。そして、標準ズームのEF24-105mm F4L IS II USM。競技は炎天下で行われるので、軽量化したぶん、水のペットボトルを増やす。

「ほとんどの作品は100~400ミリのレンズで写したものですけれど、よく使うのは長くても300ミリくらいまで。そのくらいの画角でうまく収まってくれる。ワイド系のレンズを使うこともけっこうあります。マーシャル(審判)の許可が出れば、かなり近い距離から選手が迫ってくる写真が撮れる」
アブダビの路面は砂が舞い、とても滑りやすい。アスリートたちは躊躇することなく全速力でコーナーを駆け抜けていく■キヤノンEOS-1DX MarkII・EF24-105mm f4L IS II USM・ISO200・絞りf4・1/1600秒(撮影:泉悟朗)

アブダビの路面は砂が舞い、とても滑りやすい。アスリートたちは躊躇することなく全速力でコーナーを駆け抜けていく■キヤノンEOS-1DX MarkII・EF24-105mm f4L IS II USM・ISO200・絞りf4・1/1600秒(撮影:泉悟朗)

目指すのは、今までにない魅力を持つスポーツ写真

 泉さんは「スポーツ写真、イコール、超望遠レンズというイメージがありますよね」と、言う。確かにそのとおりだ。「でも、400ミリや600ミリのレンズだから傑作を生むんじゃなくて、短いレンズでもこういう表現ができるというところを今回の写真展で見せていきたい」。

 目指しているのは「点の写真じゃなくて、面の写真なんですよ」。それはどういうことなのか?

「超望遠レンズで写したスポーツ写真の多くは、画面の1点にピントがきているだけで、他の部分は合っていないですよね。そんな写真が今の時代に合っているか、というと、私は合っていないと思うんです」

 かなり、踏み込んだ発言だと感じた。そして、「自分のセオリーとしては」と前置きしたうえで、泉さんはこう続けた。

「画面の1点ではなく、広範囲にピントが合っていれば、様々なディテールが見えてくる。それが私の見せたい『面の写真』。たくさんの情報が読み取れる。そのためには、超望遠レンズなんか使っていちゃダメなんです。これまで300ミリで撮影していたシーンだったら、近づくことで135ミリで撮れないか、という発想をする」

 焦点距離を切り詰めることでピントの幅が広がる。それによって選手の皮膚やウエア、給水の際の水しぶきなど、見る側に細かいディテールが伝わり、臨場感が高まる。

「それがフィルムよりも格段に高解像度で写すことが可能になったデジタルならではの世界だと思うんですよ。今までにない魅力を持つスポーツ写真。それをトライアスロンというスポーツを通して開拓していきたい」

 一方、「もっとスナップふうのショットでスポーツを見せたい」という願望もある。「よくあるスポーツフォトグラファーの撮り方とは違うやり方に挑戦してみたいんです」。まさに、PASSION、情熱だ。

                  (文・アサヒカメラ 米倉昭仁)

【MEMO】泉悟朗写真展「PASSION/情熱」
キヤノンギャラリー銀座 11月5日~11月11日、
キヤノンギャラリー大阪 12月10日~12月16日


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