先月21日、共同通信の記事「『聞いてるふり』は通じない? 集中しない生徒をリアルタイムで把握 教員からは期待、『管理強化』に懸念も」がネットに配信されると、大きな話題になった。埼玉県久喜市立鷲宮中学校では、生徒一人一人にリストバンド型のウェアラブル端末をつけさせ、脈拍データから生徒の授業への集中度を把握しているという内容だが、これに対して「管理教育」を危惧する1500近いコメントが書き込まれたのだ。同校に取材を申し込むと、青木真一校長から「このシステムについて校内研修を行うので、実際の授業を見に来ませんか」と誘われた。
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7月上旬、同校を訪ねた。都心から電車で約1時間。住宅と畑が点在する久喜市郊外にある生徒数約320人の学校である。
出迎えてくれた青木校長は、開口一番「いやー、記事が出たときは大変だったんですよ」と、口にした。
「ネット上に非難のコメントがたくさん書き込まれただけでなく、学校や教育委員会にもいっぱい電話がかかってきた。『管理教育はやめろ』『中国でも同じようなことをやっている学校がある。あなたは日本を中国や北朝鮮のような国にするつもりか!』とか」
極端な意見であるが、そう思いたくなる読者の気持ちも理解できる。
■勘と経験の世界に科学を
では実際、教員はどのような生徒のデータを目にするのか?
そう尋ねると、青木校長は筆者のノートに折れ線グラフを描き始めた。
「グラフの横軸は時間の移り変わりです。グラフが上に伸びると、リラックスの度合いが強まり、さらに上の状態が続くと、寝ている、ということになります。逆に、グラフが下に伸びるとイライラやストレスが強まり、それが継続すると、不安を感じている状態になる。高山先生の研究によると、両極端に陥らない状態、適度なリラックスと緊張を繰り返しているときに生徒は一番能力を発揮できることになります」
このシステムは元国立健康・栄養研究所協力研究員の高山光尚(みつなお)さんの知見をもとに、ヘルスケアIT企業のバイタルDX(東京)が開発したもので、同様のシステムはメンタルヘルスの分野ではすでに確立されている。