階段で傘を横に持って手を振ると、後ろの人の顔に傘の先端が当たる危険もある(撮影/張溢文)
階段で傘を横に持って手を振ると、後ろの人の顔に傘の先端が当たる危険もある(撮影/張溢文)

 本格的な梅雨入りをした今、また傘の持ち方が話題になっている。「人の目に傘が当たって視力を奪う前にやめてください。こんな歩き方をしてる人を街中で見かけます。(中略)今日からやめてください、お願い」。5月29日に投稿された、傘の「横持ち」に警鐘を鳴らす「眼科医ヨシユキ」さんのツイートがバズり、ニュースでも取り上げられた。過去にはAERA dot.も、<傘の「横持ち」をしている人に直撃してわかった その意外な「理由」と気づいていない「危険」>(2020年7月)という記事を配信し、大きな反響を呼んだ。眼科医ヨシユキさんにその危険性を取材するとともに、改めて、横持ちをする人の心理を分析した。

【画像】「視力を奪う前にやめてください」バズった眼科医のツイートはこちら

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 日々、目にまつまわる情報を発信している眼科医ヨシユキさんの正体は、岐阜県立多治見病院の眼科主任・宇佐美欽通(うさみ・よしゆき)医師。この投稿をした理由を聞くと、数年前から、街で傘を水平に持つ横持ちスタイルの人を見かけるたびに、問題意識を抱いていたそうだ。子どもや車いすの人の顔の高さで傘が振り回されている光景を見て、眼科医としてヒヤヒヤしていた。

 実際、宇佐美医師自身も身の危険を感じたことがあるという。階段を上っていたら、前を歩く中年男性の傘の先が、目の前に迫ってきた。思わず、「その持ち方は危ないので、傘は下に向けてください。今、僕に当たりそうになりました」と注意すると、男性は「あ、すみません」と謝ったそうだ。

 これからの梅雨シーズンに向け、危険な目に遭う人を少しでも減らしたい。そんな思いから、わざわざ傘を横持ちする人のイラストを発注し、切実さのにじむ文章とともにツイートした。すると、後日「傘の持ち方」というワードがTwitterでトレンド入りし、テレビ局5社ほどから取材依頼が来た。

「こんなに反響があるんだとびっくりしました……」

 そう振り返る宇佐美医師。注目を集めた背景には、人々の「怒り」があったと捉えている。

「コメント欄を見ていると、やっぱりいら立っている方が多かったです。『この持ち方してるやつ、いいかげんにしろよ!』みたいな。普段、本人に言いたくてもなかなか言えない鬱憤(うっぷん)もあって、みなさん拡散してくださったんでしょうね」

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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JR新橋駅前で傘を「横持ち」する理由を聞いた