服なんかは、働いているうちに、しっかりしたもんを買こうといたらええんです。スーツでも着物でも、ひとつ、ええもん持ってたら、何年でも着られる。車なんか、もう15年乗ってますが、まだ5万キロしか走ってないしね。お金のあるうちに人生のインフラ整備しとくんです。
家は買わんほうがいいと思う。苦労して建てて固定資産税払うてたら、国に賃料払てるのと一緒です。しんどいローン組んで、銀行のもんで終わる人も多いし。
食べもんは、粗食ほど、うまいもんはないですよ。ご飯とみそ汁、干物に漬物。計算すると一日500円ですむ。現役のころから、ご飯さえ食べられたら、というのがベースにありましたんでね。
仕事に未練がないのは、幸せなことに、もう満喫させてもらったという気持ちがあるんです。
そら「漫画トリオ」はすごかったですよ。でも横山ノックさんがすごかった。僕とフックさんは全然たいしたことない。横山ノックという芸の塊みたいな極彩色の存在を、鵜飼いというか猿回しというか、うまく操縦して、しかも若い僕らが年長のノックさんをたたく。ノックさん、あのときの若さ、社会状況があって、あれだけの笑いが起きたのであって、もう無理です。
僕は最後まで素人なんです。ものすご芸人ぶってる、芸人の擬態をしている素人。それで森繁久彌さんや小泉今日子さんと対談し、立川談志師匠や桂米朝師匠に「オイッ」て言われながら酒も飲めた。中村勘九郎さんと先斗町走り回ったり、片岡仁左衛門さんと韓国キャバレー行ったりもできた。最高に幸せな素人なんです。
18歳で、この世界にポンと入ってね、周りはすごい人ばっかりやったですから。(秋田)Oスケさんの突っ込みなんか見てたら、声の出し方、言葉遣い、迫力、すごいと思いますよ。あんな豪速球は投げられへん、と。
恐ろしいような気持ちも、ある意味でねえ、ありました。夢若師匠(浮世亭夢若、松鶴家光晴と組む)が自殺されたときです。大好きな師匠でね。おんなじ出番やったんです。