「島耕作は隠居しません。僕も最期はペンを持ったまま原稿の前で迎えたいです」と語る弘兼憲史さん。75歳(撮影/写真映像部・高野楓菜)
「島耕作は隠居しません。僕も最期はペンを持ったまま原稿の前で迎えたいです」と語る弘兼憲史さん。75歳(撮影/写真映像部・高野楓菜)

漫画史に残る大ヒット長期連載「島耕作」シリーズをはじめ、数々の人気作品を生み出した漫画家の弘兼憲史さん。最近は自分の経験を踏まえたシニア向けエッセーが話題となっています。今回は、弘兼さんならではの、一生の仕事と年の取り方について伺いました。

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■今でも1日12時間仕事をしています

「島耕作」シリーズが始まったのが1983年、今年で連載40周年を迎えました。島耕作も僕も同じく、もう75歳。世間的には後期高齢者と呼ばれる年齢になりました。

 昨年“初芝電器産業”の相談役を退任し、島耕作ファンやさまざまな方からは、「次は隠居するだろうか?」とか「ボランティア活動をするのでは?」、あるいは「ユーチューバーになれば面白い」など、ユニークなご意見もいただいていたようです。でも、その予想を裏切って『社外取締役 島耕作』として、僕と同じく現役で働き続けてもらっています。頭も体もクリアで元気な島耕作を引退させるのは早すぎると感じたからです。

 僕自身は、20代半ばで家電メーカーを退職して漫画家になり約50年が経ちました。今でも月に70ページ以上のペースで漫画を描き続けています。50代のころまでは、月に170ページほど描いていましたから当時と比べればかなりペースダウンはしていますが、それでも今も週に3回の締め切りがあって、1日12時間くらいは仕事をしているという、相変わらず漫画だけでいっぱいの人生を送っています。

 1日のスケジュールは、朝9時に起きてシャワーを浴びてから、ファミレスや喫茶店に行って漫画のアイデアを練ります。これは若いころからの習慣なんですが、誰にも邪魔されずアイデア出しに集中するためです。アイデアを考えている時間というのは、僕にとっては楽しくもあり、苦しくもある“たの苦しい”とても大切な時間なんです。

 午後1時くらいに食べるものを買って仕事場に入り、だいたい深夜2時くらいまで仕事をしています。仕事を終えたらワインやビールなどお酒を飲みながらテレビや映画を見て4時くらいには寝る。そんな生活をずっと続けています。

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