かみ合わせを作る部位
かみ合わせを作る部位

 もう一つの原因として、顎関節症によるものがある。顎関節症とは「顎関節と咀嚼筋の痛み」「開口障害(口が開かない)」「顎関節の雑音(顎が鳴る)」を主な症状とする病気だ。

「顎関節症になると顎が痛んだり、口が開かなくなることから、痛みのないほうの歯でかむ習慣がつき、かみ合わせが悪くなってしまったり、何らかの原因で顎の骨が変形することで、顎の位置が変わることが要因になるケースもあります」(松香歯科医師)

 補綴治療でかみ合わせが悪くなったことをきっかけに、顎関節症になることもあるという。

 このほか、かみ合わせの違和感の原因となる顎の病気には、細菌が顎の関節に感染し、炎症を起こす「感染性顎関節炎」や顎のがんなどの「腫瘍」。下顎の一部である下顎頭が減っていく「進行性下顎頭吸収」や「慢性関節リウマチ」(関節の症状が顎関節にあらわれた場合)、自分の意思とかかわりなく顎などが動く「ジストニア」によるものなどがある。

 また、詳しい検査をしても、かみ合わせの異常や原因となる病気が見つからない場合もある。

「歯ぎしりやくいしばりなど、上下の歯の接触が続くことにより、感覚神経が興奮していたり、ストレスなど心理的要因が影響している場合などが考えられます」(同)

 原因不明の違和感に対しては、患者から要望があっても歯を削ることはしない。まずは患者の訴えをよく聞くことから治療がスタートするという。

(文・狩生聖子)

※週刊朝日2023年5月5-12日号より