※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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歯をかみ合わせたときに「一部分が高く感じる」「一部の歯がひっかかる感じ」などかみ合わせの違和感を訴え、歯科を受診する人が増えているという。さまざまな原因や歯科での対策について、解説する。

【図解】違和感はなぜ起こる? かみ合わせの仕組みはこちら

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 歯科医院で歯と歯の間に紙(咬合紙)を挟まれ、「かんでみてください。高くないですか?」と言われたことがあるだろう。

 これはかみ合わせのチェックと調整だ。むし歯や歯周病などで歯を失ったり、欠けてしまった部分を補う詰めもの(充填物)やかぶせもの、ブリッジなどの補綴治療後に欠かせない処置である。

 神奈川歯科大学病院総合診療科特任教授の玉置勝司歯科医師はこう話す。

「かみ合わせがよくないと、よくかめないほか、歯や顎関節、咀嚼筋に不快な症状が出たり、肩こりや頭痛、イライラするなど精神的な症状があらわれることがあります。補綴治療ではかみ合わせが高くなるので、調整は必ず必要です」

■わずかに高くても違和感が生じる

 上下の歯でかんだ状態がかみ合わせだ。上下の歯はそれぞれ上顎骨、下顎骨とつながっている。耳の前の側頭骨のくぼみに下顎骨がはまり込むように連結されている。この連結部分が顎関節だ。

 リラックスしているとき、下顎は顎関節を介して宙ぶらりんの状態で、上下の歯は接触しないのが自然。食事などで下顎を引き上げたときに、初めてかみ合わせが起こる。

 このかみ合わせに「高い」「何かひっかかる感じ」など痛みではない違和感が生じるものが「かみ合わせの違和感」だ。

「患者の正確な統計はありませんが、10年ほど前から補綴治療を専門とする歯科医師の間で話題にあがるようになりました」(玉置歯科医師)

 患者は周囲が想像する以上につらいという。「うまくかめない」「どこでかんだらいいかわからなくなり、顎の調子がおかしい」「首や頭部に痛みが出た」などの訴えのほか、精神的苦痛から家事や仕事ができなくなったり、うつ状態になる場合もある。2013年には日本補綴歯科学会において、こうした症状を「咬合違和感症候群」と呼ぶことになった。

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歯は小さな砂や髪の毛一本をかんでも、その異常を感知