※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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年とともに肌が老化していくのは仕方がないこと。弾力がなくなり、シワやたるみに悩む人も多いでしょう。近年の研究では、抗老化の効果が期待される長寿遺伝子やそれを活性化する成分などが注目されています。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が、それらの要素が肌のアンチエイジングにどのように影響しているのかについて解説します。

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 近年、アンチエイジングの研究は目覚ましい進歩を遂げています。その中で特に注目されているのが、長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子やNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)という成分です。今回は、これらの要素が肌のアンチエイジングにどのように影響しているのか見ていきましょう。

 まず、サーチュイン遺伝子ですが、細胞のエネルギー代謝やストレス応答、DNA修復などを調整するたんぱく質で、抗老化の効果が期待されています。特に、サーチュイン1(SIRT1)は、細胞の老化を遅らせる働きがあると多くの基礎研究で報告されています。そのことから、サーチュイン遺伝子の働きを調整することで、肌のハリや弾力を保つ効果が期待されています。

 NMNは、サーチュイン遺伝子の活性化に関与し、細胞のエネルギー代謝を向上させることで、抗老化に効果があります。NMNはサプリメントや化粧品にも使用されており、アンチエイジングの強力なツールとして注目されています。

 サプリメントに含まれるNMNは、理論上、経口摂取することで体内でNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の生成を促進し、細胞のエネルギー代謝を向上させます。このNAD+は、サーチュイン遺伝子の活性化に必要な補酵素であり、その量が増えることでサーチュイン遺伝子が活性化し、アンチエイジング効果が高まります。

 また、NMNを配合した化粧品が市場に登場しています。NMNが肌に直接働きかけることで、サーチュイン遺伝子を活性化し、細胞の再生を促進する効果が期待されています。このため、NMNを含む化粧品は、肌のハリや弾力をアップさせ、シワやたるみの改善に役立つ可能性があります。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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