4月14日、ようやく国はカジノを含む統合型リゾート(IR)について、大阪府と大阪市の整備計画を認定した。2013年にIR推進法案が提出されたことを受け、大阪府・市が準備を始めてから10年にもなる。「むちゃくちゃ時間がかかりました」と、国際カジノ研究所の木曽崇(たかし)所長は言う。これで大阪カジノIRの建設が始まるわけだが、開業予定は29年と、かなり先である。はたして、シンガポールやマカオ、ラスベガスのように近代的な高級リゾートとしてのカジノ文化が日本に根づくのか、木曽所長に聞いた。
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一時は東京五輪2020の前にカジノIR開業という話があったなんて、信じられないほどだ。
「実務的に何かがあって、これだけ時間がかかったとは思いません。カジノIRは完全に政治マターというか、政局ネタになってしまった」
と、木曽所長は遅れの主因を指摘する。
そもそも16年のIR推進法の成立からして非常に時間がかかったが、カジノIRの政局化が決定的になったのはカジノ反対を訴えた山中竹春氏が勝利した21年の横浜市長選だという。
「カジノIRを争点として、反対を掲げると票をかせげるという大きな成功体験が反対派に根づいた。反対派はカジノIRをますます政局化していった一方、推進派はより慎重にならざるを得なかったわけです。カジノ産業側からすれば、この先も延々と政局に巻き込まれていくのだろうな、という半分あきらめの気持ちがあります」
今回の認定についてもそうで、整備計画が申請されたのは22年4月だった。
「丸1年、審査の結果がいつ発表されるかと思っていたのですが、4月9日に大阪府知事・大阪市長選が終わったとたんに認定が出た。つまり、これまで言われてきた建設予定地、夢洲(ゆめしま)の土壌汚染問題で認定が遅れたわけではなく、完全に政局を見て、ずっと黙っていたとしか思えません。もう露骨すぎるというか。正直、残念です」
反対派の言い分は正しいのか
これまでカジノIR反対派が強く懸念してきたのは、治安悪化とギャンブル依存症の増加である。これについて木曽所長は海外の例を挙げ、ケース・バイ・ケースだという。
「例えば、ラスベガスは代表的なカジノの街ですが、特に治安が悪いということはありません。どんな場所でもまったく安全とは言えませんが、アメリカの他の都市と比べてむしろ治安が良いくらいです」