勢いのある企業がオーナー会社となることで資金が豊富になった球団も増えた。革新的な方法を採用したことが結果につながったチームもある。その中で巨人は従来の戦い方から脱却するのが出遅れた感はあった。

「今季を迎えるにあたり(若手育成については)本気度が違うように見える。編成面の権限も任されている原辰徳監督が腹を括ったようです。これまでは勝利と育成の両方を追い求めていたようにも見えたが、育成に特化したように感じる。将来を担う中軸選手育成が最大ミッションなのだろう」(在京球団編成担当)

 オフの補強も広島から復帰したベテランの長野久義や、ソフトバンクを退団となった松田宣浩など目立ったものはなかった。助っ人は新たに5人の選手を獲得してはいるが、これまでのようにフリーエージェント(FA)の補強はなく、新シーズンを迎えることとなった。

「『必ず優勝』と原監督は事あるごとにコメントしてはいます。もちろん勝つに越したことはない。しかし実際は常に勝利を求めるOB、関係者、ファンに対するアピールもあるのではないか。今季の戦いぶりについて語るより、若手の名前を挙げる時の方が楽しそうに見える」(巨人関係者)

 原監督は2月10日にスポーツ報知の取材で、元投手コーチで野球解説者の宮本和知氏と対談。野手では秋広優人、萩尾匡也、門脇誠、増田陸、投手では井上温大、船迫大雅らの名前を挙げ、若手に期待を寄せた。

「(対談の中で)『89年の中で一番強かったと、そういうチームになるべく戦っていく』と語ったのは、未来を考えてだろう。現在の主力の多くは30代に入っており、仮に今のままで勝てても先は見えている。今後に続くチームを作るためにも、若手に大きな期待をしている」(巨人担当記者)

 伝統球団だけに勝利が常に重要視されてきた。それゆえに、FA選手などに頼り若手の育成が滞ったことも多かった。昨年も若手育成を掲げながら中途半端な結果になってしまった感も否めない。

「変な圧力をかけるようなことをせず、多少、勝てなくても見守ることが重要になるのではないか。周囲からの雑音は必ず耳に入る。これまでのように目先の勝利を求めて騒げば、原監督も方向転換せざるを得なくなる。もちろん原監督にも断固たる意思を貫いて欲しい」(巨人OB)

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ファンにも“我慢”が必要?