風光明媚な池田町の風景(2016年)。写真はイメージ。移住者が住む「集落」とは関係ありません
風光明媚な池田町の風景(2016年)。写真はイメージ。移住者が住む「集落」とは関係ありません

 福井県池田町の広報誌に掲載された「池田暮らしの七か条」に、移住者への提言として「都会風を吹かさないよう」「品定めされることは自然です」といった表現があり、一部で批判が出ていると報じられた。現在は町のホームページにも提言が掲載されているが、なぜこうした文言が掲載されることになったのか。町の担当者に真意を尋ねると、小さな田舎町に根付く慣習と、田舎暮らしを夢見てやってきた移住者とのギャップを解消したい、という意図を語った。

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 池田町は人口約2300人で、毎年20人ほどが移住してきている。

 同町の担当者によると、町には「集落」と呼ばれている33の地区があり、それぞれに区長がいる。

「七か条」は、その区長会が提言としてまとめたものだという。

 その中では、

▽「参加、出役を求められる地域行事の多さとともに、都市にはなかった面倒さの存在を自覚し協力してください。(中略)このことを『面倒だ』『うっとうしい』と思う方は、池田暮らしは難しいです」

▽「今までの自己価値観を押し付けないこと。また都会暮らしを地域に押し付けないよう心掛けてください。(中略)これまでの都市暮らしと違うからといって都会風を吹かさないよう心掛けてください」

▽「プライバシーが無いと感じるお節介があること、また多くの人々の注目と品定めがなされていることを自覚してください。どのような地域でも、共同体の中に初顔の方が入ってくれば不安に感じるものであり『どんな人か、何をする人か、どうして池田に』と品定めされることは自然です。干渉、お節介と思われるかも知れませんが、仲間入りへの愛情表現とご理解ください」

 などと記されている。

 町のホームページには区長会からのメッセージとして、《私達は、池田町の風土や人々に好感をもって移り住んでくれる方々を出迎えたいと思っています。(中略)移住者、地元民双方が『知らない、聞いてない』『こんなはずではなかった』などによる後悔や誤解からのトラブルを防ぎたいと思っています》と、提言を出した理由が書かれている。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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「移住者が共同作業に参加してくれない」