一方の投手で厳しい環境になりそうなのが古川侑利(日本ハムソフトバンク)だ。2018年には楽天で先発として4勝をマークしたものの、トレードで移籍した巨人では結果を残せずに2021年限りで自由契約となり退団。そこから12球団合同トライアウトを経て日本ハムに入団し、昨年は中継ぎとして34試合に登板するなど貴重な戦力となっていた。

 昨年の成績だけを見ると、今回の現役ドラフト対象となった中で最も一軍で活躍した選手と評価でき、獲得を希望する球団は多かったと見られているが、移籍先として決まったのは力のある投手が揃うソフトバンクだったのだ。特に古川と同じ中継ぎの右投手は今年大ブレイクした藤井皓哉を筆頭に津森宥紀、松本裕樹、甲斐野央、泉圭輔など同年代に実績のある選手が揃い、このオフにはロッテからオスナも獲得している。

 また一軍経験の少ない若手にも右の本格派は多く、二軍での登板機会を得るのも簡単ではないチーム事情となっているのだ。リリーフ投手は故障が多く、前述した藤井のような例もあるだけに古川にも当然ある程度の機会は与えられると思われるが、昨年プレーしていた日本ハムに比べると一軍定着への道は険しいことは間違いないだろう。

 今回の現役ドラフトの対象となった12人を見ると、比較的移籍先でチャンスが増える選手も多そうだが、導入当初の懸念としてあったその球団が見切りをつけた選手同士の交換となるケースが今後出てくることも十分に考えられる。

 本当の意味で“飼い殺し”を防ぐためには、対象となる選手を球団が選ぶのではなく、一定の基準で自動的に選出される仕組みを導入した方が選手にとってはプラス面も大きいのではないだろうか。新たな試みとしてまず実施したことは素晴らしいことだが、本来の目的を果たすためにも、今後継続してルールを見直すことも検討してもらいたい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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