スポーツが強いということは、大学の知名度向上につながる。ラグビーでは帝京大、ひと昔前は大東文化大と関東学院大。駅伝でも大東文化大、そして山梨学院大などだ。 少子化に伴う学生募集戦略として、スポーツを強化するのは間違いではない。だが、このなかから世界で通用するアスリートをどれだけ育てることができるか。各競技団体責任者からすれば、大学でアスリートを養成するのには限界があると見ている。施設が十分ではなくトレーニング方法も最先端とは言えないからだ。

 それでも大学には素晴らしいアスリートが集まる。大学の良いところは、競技者人口が少ないスポーツでも選手を育てており、国際大会に代表選手として送り出していることだ。

大学選手権入賞 優勝、準優勝、ベスト4(2021年度)(出典:『大学ランキング2023年版』)
大学選手権入賞 優勝、準優勝、ベスト4(2021年度)(出典:『大学ランキング2023年版』)

 ホッケー男子(全日本学生ホッケー選手権大会)は、山梨学院大が2018(平成30)年に4年連続6回目の優勝を果たした。ライバルの天理大は優勝29回を数え、1970年代には10連覇したことがある。両校ともにオリンピック代表が多く輩出した。

 トランポリン(全日本学生トランポリン競技選手権大会)は、金沢学院大が他を圧倒している。2013~2016年で男女いずれも優勝した。同校が強いのは、石川県がトランポリン発祥の地と言われていることと関係がある。1960年代半ば、一教員が県内の高校にトランポリン部を作ったことで、競技人口が増加した。この教員はやがて金沢女子大(現・金沢学院大)の監督を務め、オリンピック選手を育てた。

 レスリング女子は、競技者人口が少なく大学選手権が盛り上がっているとは言い難い。それでも国際大会での勝率は大変高い。その担い手となっているのが、至学館大(旧・中京女子大)であり、吉田沙保里、伊調馨などが学生時代から国際大会でメダルを獲得した。大学がアスリート養成機関としてもっとも成果をあげている例と言っていい。

教育ジャーナリスト・小林哲夫

※『日本の「学歴」 偏差値では見えない大学の姿』から抜粋