「悪いことをしたら内申書に書く、ということは、まずあり得ないと思います。中学校がわざわざ生徒のネガティブなことを調査書に書くようなことはありません。そもそも、そんなことは書きようがありませんから」

 実は、文科省は次のような通知を各都道府県の教育委員会に出している。

「調査書(内申書)については(中略)生徒の優れている点や長所を積極的に評価し、これを活用していくこと」(「高等学校の入学者選抜について」1993年。かっこは筆者)

 つまり、内申書は生徒のよい点だけを書き、マイナスになるようなことは記入しないものなのだ。

 ちなみに、埼玉県のすべての中学校では内申書と同一の書類「成績及び諸活動等の記録通知書」を3年次の生徒と保護者に確認してもらい、納得してもらったうえで、志望校に内申書を送付する。

「中学校は受験生に対して、できるだけのことを書いてあげたい、それが何らかの点数になってくれればいいなという気持ちがあるんです。なので、『そろばん5級』とか、生徒から書いてください、と言われたものを、『うん、わかった。書くよ』という感じで、できるだけ調査書に記入する。ところが、それを受け取った高校からすると、『こんなことを書かれても、点数には結びつかないよ』というものも結構あるんです」

 そう説明する待谷さんの言葉に、教え子に対する愛情を感じた。

「成績評価」に基づく内申点の疑問については、後編で考える。

※後編「中学の5段階評定は本当に『平等』なのか? 現役教師と読み解く『内申書』のギモン」に続く

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)