中央道笹子トンネルで事故当時、白煙を上げる入り口/2012年12月
中央道笹子トンネルで事故当時、白煙を上げる入り口/2012年12月

 ところがその予算が13年度から増加に転じていく。そのきっかけとなったのが、12年に発生した笹子トンネル事故である。

 それまで道路予算といえば、道路整備ばかりに目が向けられてきた。笹子トンネル事故は、高度経済成長期に一斉に建設された道路の老朽化が本格的に到来したことを告げる衝撃的な出来事だった。

■虫がよすぎる財務省

 ただ、国が道路の老朽化を見過ごしていたわけではない。国交省道路局国道・技術課道路メンテナンス企画室の谷成二課長補佐は、こう語る。

「われわれ道路行政を預かるものとしては、笹子トンネル事故以前から道路の老朽化に対する課題認識を持っていました。そこで『社会資本メンテナンス戦略小委員会』を立ち上げ、12年8月から議論を行ってきました。事故の後は速やかに点検基準の法定化など道路法の改正(13年6月)を行い、5年に1回の近接目視による点検を義務づける省令(14年3月)も公布しています」

 さらに14年4月、国交省の社会資本整備審議会道路分科会が行った提言には次のように書かれている。

<笹子トンネル事故は、今が国土を維持し、国民の生活基盤を守るために行動を起こす最後の機会であると警鐘を鳴らしている。削減が続く予算と技術者の減少が限界点を超えたのちに、一斉に危機が表面化すればもはや対応は不可能となる>(「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」)

 このような危機感を背景に道路メンテナンスの予算は年々存在感を増し続けている。国が直轄する道路の維持修繕予算は12年度に2158億円だったが、22年度は4226億円と、この10年間で約2倍に増えた。

 地方公共団体(都道府県、政令指定都市、市区町村)への補助金「道路メンテナンス事業補助制度」の予算も3886億円(22年度)にのぼる。

 この補助金制度は道路橋とトンネルを対象とするものだが、今回、財務省が税制調査会に提出した資料によると、建設後50年以上経過する道路橋は18年には約25%だったが33年は約63%に、トンネルは約20%から約42%へと、2倍以上に増加すると予測している。

 つまり、財務省は今後増え続ける道路のメンテナンス費用を走行距離課税というかたちで自動車ユーザーに求めようとしているわけだ。

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「燃料税は廃止すべき」の指摘