走行距離課税はいったいどうなるのか(写真/アフロ)
走行距離課税はいったいどうなるのか(写真/アフロ)

 走れば走るほど税金が課せられる自動車の「走行距離課税」案への批判の声が止まらない。背景にあるのは「これ以上、まだ税金をとるのか」という、自動車税制の理不尽さに対する不信感だ。同案が浮上した政府の税制調査会に財務省が提出した資料によると、課税の目的は年々増加する道路の老朽化対策である。ちょうど10年前に起こった痛ましい事故が老朽化の対策を見直すきっかけの一つとされているが、一方で、「ガソリン税」などの見直しを指摘する声も上がっている。

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 国土交通省の道路老朽化対策の資料をめくると、必ずと言っていいほど目にするのが、中央自動車道・笹子トンネル(山梨県大月市)の天井板崩落事故についての記述である。

 事故は2012年12月2日午前8時3分、笹子トンネル上り線、東京側坑口から約1.5キロ付近で発生した。突然、重さ1トンを超える天井板が138メートルにわたり多数崩落。車両3台が下敷きとなり、火災が発生した。9人が亡くなり、3人が負傷する大惨事となった。

 国交省はこの事故を契機に翌13年を「社会資本メンテナンス元年」と位置づけ、道路の老朽化対策を本格的に進めるようになった。

■「コンクリートから人へ」が

 かつて、道路のメンテナンス費用はガソリン税(燃料税)などの「道路特定財源」から捻出されていた。いわゆる受益者負担の原則である。

 車が走行すると道路は傷む。しかし、実際の走行距離に応じて課税するのは面倒なので、燃料に課税してきた。つまり、「ガソリンを多く購入する人=道路を多く走行する人」というわけである。道路に対して損傷度合いの大きな重い車ほど燃費が悪いので燃料費もかさむ。この点からも合理的なので、欧米を含む多くの国で燃料税は自動車関連諸税の根幹となってきた。

 ところが政府は、09年度からガソリン税を含む道路特定財源をすべて一般財源化した。さらにこの年、「コンクリートから人へ」のスローガンを掲げる民主党政権が誕生した。

 その結果、道路関連予算は大きく削られていく。08年度の同予算は約3兆4000億円だったが、12年度には約2兆3000億円まで減少した。

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老朽化を見過ごしていたわけではないが…