大東隆行前社長が銃撃された現場には、花束が置かれていた
大東隆行前社長が銃撃された現場には、花束が置かれていた

 だが、まだ逮捕されたのは田中容疑者のみ。捜査関係者はこんな見方をする。

「当然、逃走や拳銃の準備など、協力者がいるはず。また、田中容疑者に誰かが指示をして事件に及んだことは間違いない」

 田中容疑者の背後関係や動機などは、まだわかっていない。また、田中容疑者が使用した拳銃など、直接、犯行につながる証拠も発見されていない。田中容疑者の自供がないと、捜査は厳しいという見方もある。

 京都府警から京都地検に、王将事件についての「すべての捜査記録を送って検討をはじめた」という捜査情報を筆者が知ったのが1年ほど前。捜査幹部はこの情報を認め、

「検察の意見を聞き、立件をしたい」

 と当時、語っていた。

 元東京地検特捜部検事の落合洋司弁護士は、こう語る。

「これまで逮捕に慎重だった検察がゴーサインを出した。おそらく追加捜査で起訴できる証拠が見つかったのではないか。周辺の人物から『田中から犯行を聞いた』などの証言が得られたとも考えられる。もしくは捜査を尽くしたので、逮捕して自供を迫るという狙いかもしれない。自供を得られなくとも、工藤会の犯行と印象づけはできる。稀にそういう逮捕もある」

 田中容疑者の逮捕が、事件の真相解明につながるのか。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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