工藤会の本拠地は福岡県北九州市で、A氏も福岡。A氏と反社会的勢力の「近さ」が浮かび上がった。福岡県警が王将事件とは別で、A氏や経営する会社の家宅捜索に乗り出したこともあった。

 そんな中、2018年6月、田中容疑者は逮捕される。

 2008年に大手ゼネコン「大林組」の社員が乗った車が銃撃され、その容疑者としてだった。

 田中容疑者は銃刀法違反などで起訴され、懲役10年の実刑判決が確定。今回の逮捕時は、福岡刑務所で受刑中だった。

 京都府警が逮捕に踏み切ったのは、たばこの吸い殻の銘柄が田中容疑者が愛用しているものと一致したことに加えて、事件現場近くから立ち去った実行犯のバイクに関する情報があったためだ。

 事件から半年ほどして、防犯映像に映っていた実行犯が逃走に使ったバイクが発見された。ハンドルからは拳銃を撃ったときに残る硝煙反応が検出された。

 またバイクは盗まれたものであることも判明。

「京都でバイクが盗まれた経緯を捜査すると、ある反社会的勢力の存在が浮上、その幹部と田中容疑者につながりがあることもわかった」(捜査関係者)

 反社会的勢力の関係者に話を聞くと、王将事件で、

「(警察に)うちのもんが聞かれとりますわ。(事件に)かかわってないかと。田中容疑者と同じ九州の出身やからと疑われているそうです」

 と京都府警から事情聴取があったことを認めていた。

 たばこの吸い殻、防犯カメラ映像、逃走用バイクなどの間接的な証拠を積み重ねた結果、京都府警は田中容疑者の逮捕にこぎつけたのだ。

 今回の逮捕で、

「もう解決できないのかと思っていた。逮捕がその一歩となってほしい」

 と安堵の表情で話すのは、王将の元社長だった望月邦彦さん。

 王将の創業者、加藤朝雄氏に請われて副社長として入社。その後、社長となり、大東さんとも汗を流した仲だ。

「大東さんは私が入社したときは、王将の現場で頑張っていた。それが認められ、本社で幹部へと階段をのぼってきた。まじめで、しっかりとした仕事をされる方で王将を着実に成長させてきました。私が王将から身を引いてからも年に2度ほどは会って話をしていました。狙われるような理由はまったく思い当たりません」(望月さん)

次のページ