※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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骨粗鬆症が進むと、わずかな外力で骨折しやすくなる。60代後半から増えるのが背骨の前方にある椎体の骨折だ。その治療は発症年代によって異なるという。原因となる骨粗鬆症の治療も必要だ。治療法について専門医に聞いた。

【データ】骨粗鬆症性椎体骨折かかりやすい年代は?主な症状は?

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 骨粗鬆症が進むと、手首や背骨、足の付け根などを骨折しやすくなる。60代後半以降に多いのは背骨の前方にある円柱状の椎体の骨折だ。

 椎体骨折は青・壮年期(19~64歳ごろ)は転落や交通事故などの激しい外傷でしか起こらない。ところが、骨粗鬆症で骨が脆弱化すると、段差もない床での転倒、くしゃみ、高いところに手を伸ばした程度で骨折してしまう。椎体は外側が硬く、内部は網目状の構造のため、押し潰されるように骨折する。近畿大学奈良病院整形外科の戸川大輔医師はこう話す。

「骨粗鬆症性椎体骨折は、からだを動かしたときに腰や背中が痛む『動作時痛』が主な症状です。座ってじっとしていると痛みが出にくく、脇腹やお尻など、痛む場所が骨折部位と離れていることもあります。椎体の内部組織だけ壊れ、外観の変形が少ないこともあるため、X線やCTではわかりにくく、MRIを撮ってようやく骨折がわかるケースもある。診断が遅れることも多いです」

■年代で治療異なり高齢ほど手術に

 骨粗鬆症は加齢だけでなく、遺伝性や甲状腺の病気、糖尿病、ステロイド剤の長期服用などでも発症する。早いと40代後半から椎体骨折は起こる。発症年代により、最適な治療法が分かれるという。

「60代前半までは、積極的に保存治療をおこない、なるべく自分の骨で治してもらいます。入院して骨折部位にコルセットをつけ、できる限り上を向いた安静状態で約2週間過ごします」(戸川医師)

 60代までは長期間ベッドで寝ていても認知障害は出にくい。また、背骨をよい形で残すことで将来、脊柱管狭窄症などの加齢性の背骨疾患が生じたときにも最善の治療が可能になるという。

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70~80代も多くはまず保存治療