※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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新型コロナウイルスの流行でよく耳にするようになった、「かかりつけ医」。国はかかりつけ医を持つことを推奨してきたが、普及しているとは言い難い。そもそもかかりつけ医とはどのような医師のことなのか、一度でもかかっていればかかりつけ医なのか、なぜ、このようにあいまいな存在になっているのか、私たちが期待するかかりつけ医は実際にいるのか、日本プライマリ・ケア連合学会理事長で、医療法人北海道家庭医療学センター理事長の草場鉄周医師に聞いた。前編・後編の2回に分けてお届けする。

【写真】教えてくれたのは、草場鉄周医師

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 厚生労働省はかかりつけ医を、「健康に関することをなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義している。「日本医師会・四病院団体協議会合同提言(2013年8月8日)」でも同様の内容が定められ、さらにかかりつけ医の役割について、「かかりつけ医機能」としてまとめられている。

 しかし、それを読んでも、年に1、2度程度しか通院しないクリニックの医師に、適切な病院への紹介をしてもらえるのか、患者側にはよくわからない。腰痛や膝痛の治療のために通っている整形外科やコンタクトレンズの処方で定期的に通院する眼科はかかりつけ医なのか。手術後に経過観察のために通院する大病院の医師はかかりつけ医ではないのか。疑問が次から次へと湧いてくる。

 日本医師会総合政策研究機構が22年3月に実施した調査でも、回答した1152人のうち、「かかりつけ医がいない」と答えた約44%(506人)に聞いたところ、約54%が「どういう医師がかかりつけ医なのかわからなかった」、約61%が「どういう医師がかかりつけ医になるのか情報が欲しい」と回答している。患者側の困惑が伝わってくる。

 草場医師は、かかりつけ医の役割を担うと期待される「家庭医」の養成に、長年力を入れてきた(詳しくは後述)。自らも複数のクリニックで家庭医として従事している。

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かかりつけ医は2種類ある