多くの出席者が「記憶にない」というなか、この議員ははっきりとそう話した。

 そして、こう続けた。

「『8割が隣の大陸から』というのは、政府の調査とかではなく、個人的な感想を述べているニュアンスでした。ただ、8割というのは大げさに話しているんだなと感じましたね。参加者へのリップサービスだったのでしょう」

 前述のように、高市氏は会見で「そのような発言はない」と述べており、市議の話と食い違う。高市氏の事務所に、発言内容などについて改めて確認しようと質問状を送ったが、期日までに回答はなかった。

 今回の騒動について、専門家はどう見るか。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、1986年に当時の藤尾正行文部相の「韓国併合は韓国にも責任がある」とした論考が『文藝春秋』に掲載された時のことを思い浮かべたという。

 これについては韓国から激しい反発が起こり、中曽根康弘首相(当時)が藤尾氏に辞任を求めたが、藤尾氏は自分の信念だとして辞任せず、中曽根首相が藤尾氏を罷免(ひめん)した。

 角谷氏は今回の高市氏の問題について、実際に「8割が隣の大陸から」と発言していたとしたら、と前置きした上で、

「非公開の場だったとしても、根拠もなく発言していたのなら総裁候補にもなる人物の発言としては軽すぎます。『隣の大陸』の受け止め次第では大問題になるような発言で、これについて首相も官房長官も外務大臣も、確認もしないという態度は疑問です。また、当日の講演を聞いて誤解している人が何人もいるのであれば、どういう発言をしたのか、高市氏本人がしっかりと説明するべきです」

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら