撮影:大西みつぐ
撮影:大西みつぐ

■草むらでセルフヌードも

 話を聞いて、おかしかったのは、そんな人々を写していた大西さん自身も、「そこに溶け込んで、遊びだしちゃった」こと。

「草むらに紛れて、セルフヌードを撮ってしまった」と、実に楽しそうに語る。

「夏なんか短パンとTシャツにビーチサンダルを履いて、パチパチ撮っていくわけですよ。暑いから上半身を脱いでみたら気持ちよかった。はだしで土の上に立ってみた。そんなことは下町のガキだったころはしなかったから、ちょっとした探検というか、遊びだった」

 人工的に作られた自然が少しずつ定着していくさまも面白かった。

「茂みにうずくまっていると、ハチがばっと飛んだりする。それをカメラ少年みたいな感じで撮っていくわけです」

撮影:大西みつぐ
撮影:大西みつぐ

 撮影にはちょっと変わったカメラも使った。それが段ボールの箱のような「ピンホールカメラ」で、箱の正面の真ん中にはとても小さな穴が開いている。このピンホールから差し込んだ光が外の風景をぼんやりと箱の中に映し出す。そこにポラロイドフィルムを仕込んで撮影する。たっぷりと露光しないと写らないので撮影には時間がかかった。

「スローライフじゃないけれど、誰にも邪魔されないでゆったりと、自分だけのフィールドを遊んでいたって感じです。そんなカメラで風景が出来上がっていく過程を撮るのが楽しかった」

 公園の一角で観覧車の建設が始まった。鉄骨が組まれ、そこに一つずつ座席が取り付けらていく。

「それがやがて、ぐるーっと回っていく様子を眺めながら、長時間露光で撮影した。ピンホールカメラで写しながら、自分もその風景の中に入っていく感じがした」

 東日本大震災が起きた2011年ごろを境に外国人の姿が増え、公園の風景が変化した。その多くが西葛西に移住してきたインド人だった。

「そのころ葛西臨海公園を含めた臨海部は東京を代表する景観になっていたんですけれど、外国人がすごく増えたことで世界とつながっている都市としての東京を感じました」

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撮るのが苦しい