あらゆることを多数決で決めていいわけではない。個人に関することを中心に、多数決には向かない事柄だってある
あらゆることを多数決で決めていいわけではない。個人に関することを中心に、多数決には向かない事柄だってある

 子どもは、自分で学ぶ環境を整えることはできない。逆に言うと、教師や保護者に助けや協力を求めることは、子どもの大切な権利なのだ。

◆「多数決で決まったことは絶対なの?」

 クラス内で何かを決めなければならないとき、意見が分かれてしまったらどうするか。「多数決」を行うのが普通だろう。集団の中で納得する人が最も多い意見に決める「多数決」は、議員を選ぶ選挙や、法律を決める議会でも採用されていて、民主主義の社会では一般的だ。

 ただ、多くの票を集めて決まったからといって、絶対に正しいかというとそうではない。

 多数決だといつも少数者のほうに属してしまう「マイノリティー」の人の意見や希望は、聞かなくてもいいのか。いつも同じ人が負担を強いられるとしたら、決め方を見直す必要がありそうだ。

 そもそも、多数決で決めてはいけないことだってある。例えば、男子のほうが人数が多いクラスで「そうじ当番は女子だけにやってもらう」という案を多数決にかければ、女子が不利になることは確実。少数者に一方的な負担を課すことになる。

 明日、自分が学校に着ていく服の色をクラスの多数決で決める、と言われたらどうだろう。「みんなが似合う色を決めてくれるからいいんじゃない?」などと納得できる人は少ないはずだ。個人の自由に関することを決めるには、多数決は向かない方法だと言っていい。

 多数決を採る場合、重要なのは、事前によく話し合うこと。互いの意見をじっくり聞くことで、それぞれの意見のいい点と悪い点がはっきりする。結果、意見を変える人も出てくるかもしれない。最終的な結果が同じになったとしても、みんなの「納得感」は違うはず。多数決も「絶対」ではないということだ。

◆「大人の言うことはいつも正しいの?」

 自分がやりたい!と思うことを、ことごとく「ダメ」と言われることで、もやもやを抱えている子どもも少なくないだろう。実は、自分のことを自分で決める権利=「自己決定権」は、子どもも大人も、生まれながらにして持っている「権利」だ。

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他人に迷惑をかけるとき