「義務教育」は「子どもが教育を受ける義務」ではない。「子どもたちに教育を受けさせる義務」を負うのはあくまで大人だ
「義務教育」は「子どもが教育を受ける義務」ではない。「子どもたちに教育を受けさせる義務」を負うのはあくまで大人だ

 子どもに「どうして学校に行かなきゃいけないの?」と聞かれたら、あなたはなんと答えるだろうか。

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 新学期が始まって、元気に登校する子どもたちの姿が見られるようになったが、一方で「学校がしんどい」という子どもたちもいる。考えてみれば、多くの大人も日々、生きづらさを抱えているのだから、子どもたちが言葉にできない「もやもや」を抱えていないはずがない。

 中央大学法学部の遠藤研一郎教授が監修した『12歳までに身につけたい 社会と法の超きほん』は、「いろいろな人が暮らす社会の調整役=法」という考え方に基づいて、子どもたちが抱えているであろう多くの「もやもや」に対する答えを提示している。

◆「どうして学校に行かなきゃいけないの?」

 例えば、冒頭に挙げた「どうして学校に行かなきゃいけないの?」という疑問。「義務教育だから」という答えは適切だろうか。実は、「義務」を負っているのは子どもではなく大人。保護者は「子どもたちに教育を受けさせる義務」を負い、子どもたちは「教育を受ける権利」を持っている。

 では、保護者に「義務」を負わせるくらい学校に行くのが大切なのはなぜか。知識を得るだけならインターネットでも足りるかもしれない。だが、友だちと会ったり、給食を食べたり、クラブ活動に参加したり、といった事柄は、「学校に行く」ことに含まれる重要な要素だ。自分とは違う意見があることを知ったり、興味のなかった分野に新しい発見をしたり。それをきっかけに、夢ややりたいことが見つかることもある。学歴は必須のものではないが、学校に行かないと、将来の選択肢が狭まってしまう可能性は否定できない。これが、社会問題となっている「格差」にもつながっていくのだ。

 誤解してほしくないのは、「子どもに教育を受けさせる義務」は「イヤがる子どもを無理やり学校に行かせる義務」ではないということだ。正しくは、「子どもが安心して学ぶ環境を整える義務」。学校内にいじめや人間関係のトラブルがあるなら、まずはそのトラブルを解決するために、教師や保護者など周囲の大人が働きかける必要がある。フリースクールのような、子どもが学ぶための別の場所を探すことも選択肢の一つだ。

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多数決には向かないこと