東大・安田講堂
東大・安田講堂

 東大のコロナ対応を巡り、学生から悲痛な声が上がっている。大学側は「コロナ感染の虚偽申請」があることを理由に、感染して試験を欠席した学生のための追試を廃止した。その結果、その後の進路に大きく影響しそうな学生が出ているという。日本のトップの大学で何が起きているのか。

【学生自治会が作った、「コロナ欠席」の代替措置を訴えるビラはこちら】

「進路に影響が出てしまう。本当にショックです」

 こう話すのは、東京大学教養学部(文科3類)の女子学生Aさんだ。Aさんは7月の定期試験の期間中に、コロナに感染した。39度以上の高熱が続き、ひどい倦怠(けんたい)感もあったという。自宅療養の期間中に予定されていた試験は四つ。すべて欠席することになった。

 教養学部ではこれまで、コロナの感染者、濃厚接触者、疑似症がある学生たちについて、定期試験が受験できない場合、全ての科目で100点満点の代替措置(追試)を行ってきた。

 しかし、6月6日、教養学部はコロナ感染に関する追試を一部の科目以外は廃止、追試がある科目でも75点を上限とすることになった。

 これは定期試験を受けられなかった1、2年生にとっては、その後の進路にかかわるのだ。大半の東大生は1・2年次は教養学部に所属し、3年次に法学部、経済学部、理工学部など各学部に進学する。希望の学部・学科に行くためには、1・2年次の成績が重要になってくるのだ。

 Aさんは欠席した4科目のうち、2科目は追試があったが、もう2科目については追試がなかった。なんとか1科目については特別に受けられたが、もう1科目については「学部から認められていない」として断られたという。Aさんはこう語る。

「追試が受けられた2科目についてはどんなに頑張っても通常の75%しか点数が取れない。もう一つの科目は、追試がないので0点。目指していた進路は厳しいかなと思い始めました。コロナの高熱でうなされているときも『進路はどうしよう』『一生懸命勉強してきたのに』ってずっと考えていました。今後の計画が狂ってきている」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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東大「学生間の成績の公平性を厳密に担保する必要がある」