■高いチケット代に交通費……。若者にはもはや“贅沢”イベント?

 もうひとつ、30代後半以降とおぼしき観客が多かったのも気になった。今年の3日通し券の値段は、49,000円。交通費、宿泊費、現地での食事代などを含めると10万円程度は必要になり、一人暮らしの大学生がポンと出せる金額とは言い難いし、若い会社員にとってもかなりの大金だ。現状のフジロックは“ちょっとお金に余裕がある音楽好きの大人”が集まるフェス――というと言葉が過ぎるだろうか。大人のフジロッカーが苗場に通い続けるのはもちろん素敵なことだが、若い人が少なくなっているとすれば、フェスの未来はない。出演アーティストやチケット代を含め、10代、20代前半の音楽ファンが「これなら行ってみたい」と思える施策は必要だろうが、コロナにより不況が長引けば、今以上に“贅沢なフェス”になってしまうだろう。

 と、あれこれと書いてきたが、今年のフジロックはどうだったか?といえば、これはもう文句なく楽しかった。ヘッドライナーのヴァンパイア・ウィークエンド、ジャック・ホワイト、ホールジーは期待以上の素晴らしいライブを見せ、音楽活動を再開させたコーネリアス、フジロック初出演の鈴木雅之なども話題に。山のなかで世界各国から集まった最高のミュージシャンたちの演奏を心ゆくまで堪能できるフジロックは来年も開催予定だという。もちろん筆者も必ず行きます。

(森 朋之)

最終日の入退場ゲート(写真:筆者提供)
最終日の入退場ゲート(写真:筆者提供)
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森朋之

森朋之

森朋之(もり・ともゆき)/音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動をはじめ、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、音楽ナタリー、リアルサウンド、オリコンなど。

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