データからは、今季は打者が苦戦している傾向が見て取れる
データからは、今季は打者が苦戦している傾向が見て取れる

 こうした影響があるのか、対照的に、投手は好成績が目立つ。

 今季は4月10日、ロッテ・佐々木朗希投手がNPBでは28年ぶりとなる完全試合を達成。その後、5月11日にソフトバンク・東浜巨投手がノーヒットノーランを達成したほか、6月7日にDeNA・今永昇太投手、6月18日にオリックス・山本由伸投手が続いた。完全試合を含めノーヒットノーランを1シーズンで4人も達成するのは79年ぶり。しかもそれを前半戦だけで達成してしまったのだから、まさに“異例”といえる事態になっている。

 では、「ボールが飛ばない」要因としては何が考えられるのか。

 野球ファンからはボールのはねかえりやすさを表す「反発係数」が変わったのではないか、という疑念が出ている。これに対して、20日、日本野球機構(NPB)はボールの反発係数は全て規定値(0.4134の目標値、0.4034~0.4234の上下限)内との報告があがっていると明言した。ボールを製造しているミズノも、AERA dot.の取材に「規定の範囲内でつくられたボールを納品しており、ボールに問題はない」と回答した。

 反発係数は変わっていないと仮定すると、他に考えられる要因は何か。今、注目を集めているのが、ボールの「抗力係数」だ。

 実は、米大リーグ(MLB)でも昨年から「飛ばないボール」が導入されており、注目を集めている。そのため、どのくらい飛ばないのか、要因は何かなど、さまざまな分析が進んでいる。それを調べる際、MLBでは反発係数だけでなく、「抗力係数」にも注目し、データを公表している。

 抗力係数とは何か。大リーグ機構の依頼でボールを調査したことのある物理学者のアラン・ネイサン米イリノイ大名誉教授は「抗力とは、別の呼び方をすれば空気抵抗のことです」と説明する。

 ボールは空気を押しのけて飛ぶが、空気もボールを押し返すことで、ボールは失速する。その抗力は大気の条件(例えば、より高い気温や標高だと抗力は小さい)や、ボールの大きさ、そして、ボールの特性に影響を受けるという。ネイサン名誉教授はこう続ける。

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投手の技術が上がったことも要因?