「飛ばないボール問題」はメジャーリーグでも議論になっている。写真はイメージ(GettyImages)
「飛ばないボール問題」はメジャーリーグでも議論になっている。写真はイメージ(GettyImages)

 今季のプロ野球は、ロッテ・佐々木朗希投手の完全試合に始まり、ソフトバンク・東浜巨投手、DeNA・今永昇太投手、オリックス・山本由伸投手と、すでに4投手がノーヒットノーランを達成している。前半戦だけで、これだけノーノーが“量産”されるのは異例といえる。そんななか、改めて取り沙汰されているのが「飛ばないボール」問題だ。打者からは「昨年より飛ばない」という声が上がる。実際にデータを調べると、得点の入る割合やホームランの割合など各種打撃の指標が昨年より大きく減少していた。いったい何が起きているのか。

【図表】ボールが「飛ばない」要因を分析した「新データ」はこちら

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 球界屈指のホームランバッターである西武山川穂高選手は15日、今季のボールについて、取材陣に対してこう発言した。

「飛ばないです。間違いないです。確信は持っています」

 過去の同じ打球速度と比較しても、今年は飛距離が出ていないという。

 ただ、意見はさまざまで、日本ハム・新庄剛志監督は飛ばないボールについて「たぶん違うでしょ」(サンケイスポーツ)と否定的な見解を述べている。

 客観的なデータから「ボールが飛ばない」ことは証明できるのか。野球データ専門会社DELTAのアナリスト・宮下博志さんは「データを見ても、今年は打者が苦戦しているのは明らかです」という。

 例えば、9イニングあたりの失点の割合を表す「失点率」は、セ・リーグで21年は3.92だったのが、22年は3.68に、パ・リーグでも21年に3.79だったのが、今年は3.24になっている。昨年より点が明らかに入っていない。

 そのほかにも、9イニングあたりのホームランを打たれた割合を示す「被本塁打率」や、フライを打ったときの打撃成績を表す「フライOPS」(フライ打球の出塁率+フライ打球の長打率)、フライ打球に占めるホームランの割合を示す「HR/FB」を見ても、昨年よりも減少しているのがわかる(6月22日時点 表参照)。宮下さんはこう分析する。

「今季はフライの打球全般で成績が落ちています。ホームランでみると、シーズン全体で200本以上も減るペースです。失点率は2011年、12年の統一球のときほどではありませんが、それに近いくらいに減っています。データ上は、ボールによる影響があると感じる人がいてもおかしくはないほどの変化があります」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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