坪井教授によるシュミレーション
坪井教授によるシュミレーション

 坪井教授が解説する。

「毎秒35回転の投球は、打ったときの角度が少し低くなると一気に12メートルも短くなった。30回転では3メートルしか短くなっていません。つまり、投球の回転数が上がると、最適な角度で打たれると飛距離は伸びますが、角度が少しずれるとボールが一気に飛ばなくなるということです。28度と23度のこの5度の角度差はボールがバットに当たる位置にするとほんの2ミリほどの違いです。投手の技術力が向上していると仮定すると、回転数が増加したことで、ボールが飛ばなくなった可能性も考えられます」

 残念ながら、日本ではボールの回転数や抗力係数などのデータは公開されていない。複数の要因が絡み合っている可能性もある。「飛ばないボール問題」はしばらく議論が続きそうだ。(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら