昨年は島根の大田市立第二中学校が全国大会で優勝するなど、地域の野球熱は高い。投手、中軸で活躍した勝部友悠は今春立正大淞南に入学(画像は筆者提供)
昨年は島根の大田市立第二中学校が全国大会で優勝するなど、地域の野球熱は高い。投手、中軸で活躍した勝部友悠は今春立正大淞南に入学(画像は筆者提供)

 全国で勝つための戦術面に関して、末光監督はこう語る。

「大きなミスをしたら、当然勝ち切れない。一気にガバっと点を取ることが全国では難しいので、守りのミスをいかに減らしていくかが大切になります。(島根大会を強打で制した)昨夏も二遊間がしっかりしていて、外野陣も守備範囲が広いわけではないんですけど、捕れる範囲はきっちり守ってくれていた。投手を含めた守りの面の安定感で勝てたと感じています」

 太田監督が続ける。

甲子園ではバッテリーを中心に、対戦相手のディフェンスのレベルが一気に上がります。思い通りの攻撃をするのが難しい中、必要になってくるのが守りの固さ。県を勝ち抜く攻撃力と、甲子園で通用する投手力、守備力の両方を持ったチームに仕上げなければ、甲子園に出る、さらに勝ち進んでいく、といった形にできないと感じます」

 3人目は、2016年夏に出雲で甲子園に出場し、2020年春は母校である平田を21世紀枠での出場権獲得へと導いた植田悟監督。指揮官は「強化には“タテ”のつながりが必要」と説く。

「野球の普及活動をしていて感じるのが、競技人口の裾野を広げていくだけでなく、県全体のレベルアップのためにも県内の学童、中学、高校野球のタテのつながりが必要であるということ。色々な規定もあり、カテゴリーを越えた交流には障壁が多いんですが、地域の競技レベルを上げていくには連携が不可欠だと思います」

 昨年は島根の大田市立第二中学校が、全国中学校軟式野球大会(通称「全中」)で優勝。高校野球以外のカテゴリーの熱気の共有、指導者間の交流を深めていくことも、県高校球界の発展に貢献するのかもしれない。

 最後に、山陰勢唯一の甲子園ファイナリストである米子東を率いる紙本庸由監督に聞いた。紙本監督は前出の植田監督同様、「甲子園で勝っていない自分が言うのもなんですが……」と前置きした上で、意識面の重要性を語ってくれた。

「当たり前のことかもしれませんが、まず本気で目指さなければ日本一にはなれないと感じています。何かに本気で取り組むということは、時間などの相応の対価を支払うことでもあります。それが選手たちにはとっては『自分の高校3年間という時間を高校野球に捧げる』という覚悟。口だけではなく本気で目指さないことには絶対にたどり着けないものだと痛感しています」

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近年の野球は“合理化”しすぎか