石見智翠館の末光章朗監督(画像は筆者提供)
石見智翠館の末光章朗監督(画像は筆者提供)

「投手の球速、打者のスイングスピードなどの個人の能力を始め、年々高校野球のレベルは上がっていると感じます。その中で自分たちを含め山陰から全国で勝ちにいこうと思うと、個人の能力だけでは勝負するのは難しい。もちろん個の能力だったり、伸ばすものは伸ばしていかないといけないと思うんですけど、元来野球はチームスポーツなので、チーム力を磨いていけるのかが大事かなと感じています」

 昨今の高校野球界では、勝つためのスカウティングの比重が非常に大きくなっている。関東、関西圏の強豪校には、「中学日本代表」など、華やかな肩書を持つ好選手が複数名集まることも珍しくない。選手獲得の重要性が以前よりも高まっている印象があるが、末光監督はどう考えるのか。

「140キロ超えの投手を何人も揃えて、といった圧倒的な選手層を持つチームを作るのは地域柄中々難しい。それでも、打ちづらさだったり、球速以外の強みを持つ投手を育成していくことは可能だとも思います。グラウンドの9人だけでなく、ベンチも含めてそれぞれの強みを生かしたチーム作りをする。相手に関わらず、自分たちのスタイル、強みを生かした野球をしていけば、全国でも勝負できるのかなと思っています」

 2003年の4強進出時は、軟投派左腕の木野下優が好投。昨夏も現チームで背番号1の変則左腕・山本由吾がリリーフ投手として活躍。球速以外の強みを持つ投手がブルペンにいたことが躍進の一助となっていただけに、説得力がある。

 2人目は、2009年夏に初出場ながら8強まで進出した立正大淞南の太田充監督。指揮官も末光監督のコメントに通ずる言葉を残した。

「現代の高校野球で勝ち上がろうと思うと、球数制限などのルール、夏であれば気候の面もあるので、複数の投手が絶対に必要になります。でも、勝てる投手は球速のある投手とは限らなくて、例えばアンダースローなどの変則投手でもいい。人材が決して多くない地域の中で、特徴のある選手を見出していかないといけないのは間違いありません」

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