タイトルこそ獲得できなかったものの、1年目から抑えに定着し、その後も長く活躍した最初の例と言えるのが永川勝浩(広島)だ。150キロに迫るストレートと落差の大きいフォークを武器にルーキーイヤーにいきなり25セーブをマーク。その後2年間は先発、中継ぎに回ったものの、4年目からは4年連続で25セーブ以上を記録するなど低迷期のチームを支える活躍を見せた。通算165セーブは現在も球団記録である。

 近年ルーキーから抑えとして長く活躍した投手と言えば山崎康晃(DeNA)になるだろう。開幕から抑えに定着すると、58試合に登板して37セーブ、防御率1.92という成績を残して新人王も受賞。翌年以降も多少の調子の波はあったものの、5年連続で25セーブ以上をマークし、2018年からは2年連続で最多セーブのタイトルも獲得している。また2019年オフに行われた第2回プレミア12では侍ジャパンのクローザーも任され、チームの優勝に大きく貢献した。2020年からは調子を落として中継ぎに転向したものの、昨年からは徐々に復調。今シーズンは開幕から再びクローザーに復帰し、防御率こそ3点台ながら早くも3年ぶりとなる二桁セーブ(現在11セーブ)をあげている。まだかつての安定感を完全には取り戻していないものの、ルーキーから抑えとなった投手の中では最も成功した投手と言える。

 こうして見てみると、成功例の永川と山崎も中継ぎに回った時期があり、ルーキーから抑えを続けることの難しさがよく分かる。90年代に球界を代表する抑えとして活躍した佐々木主浩(横浜)と高津臣吾(ヤクルト)も入団当初は先発を経験しており、NPB歴代最多となる407セーブをマークしている岩瀬仁紀(中日)は中継ぎから抑えに転向している。昨年大活躍した栗林、そして今年の大勢が果たしてどこまで抑えを続けることができるのかにぜひ注目してもらいたい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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